第一話 「惨劇の後に残ったもの」


「以前はすまなかったな。我々も全力で宇宙への出発準備を進めていたのだが、間に合わなかった。」
「いえ、小惑星落下は我々の作戦失敗の責任があります。」
グローバーは、太平洋艦隊のビギンズ少将と通信をしていた。
「まぁ、本部が守られただけでも、良かったな。そのおかげで、君達の作戦失敗は無にされたしな。」
「では!!・・アメリカはどうでも良いと!?」
グローバーは怒りを抑えながらも問いだした。
「たしかに、アメリカの被害は大きい。だが、アメリカも復旧の目戸は経っている。議会軍本部の復旧は、そう易々と出来るものではない。最低限の被害で抑えた君達は、本部の将校達からの信頼はより厚くなったのだ。それでも、まだ文句を言うのかね?」
グローバーは怒りを抑えていたが、手の力は入るばかりだった。
「いえ・・・。これより、我々はサッズへ補給に入ります。通信はこれで・・・。」

〜サッズ〜
「あっ!・・・ミニンさん・・・・。」
セイルはグローバーと話していた、ミニンを発見した。
「おっ!セイル君、よく頑張ったわね。」
ミニンがセイルに駆け寄ってくる。
「ミニンさん・・・これ・・・・。」
「そ・・・それは!!」
セイルが差し出したのは、壊れたペンダントだった。
「・・ばれちゃったか・・・。」
ミニンの一言にセイルは一気に我慢していた、涙が溢れた。それはミニンも同じだった。
「・・母さん・・・。」
「隠すつもりじゃ、無かったんだけど・・ごめんね・・・。セイル・・・!!」
ミニンはセイルを抱きしめた。セイルの軍服はミニンの涙を吸い取っていく。


U,C,0259  5月

補給をしてから、すぐの事である。ブレイジング隊は小惑星落下地点のアメリカに訪れていた。その被害は予想以上であり、人口の4分の3は死んでしまい、現在、議会軍による国の復旧作業及び、負傷者の治療が開始されていた。

負傷し、両親を亡くした幼き少女が泣いている。議会軍兵の怒声、救急車のサイレンがあちこちで聞こえる。議会軍兵に泣きながら怒鳴りつくす一般市民も、そう多くは無かった・・・。

セイルは私服に着替え、道を歩いていた。周りでは、まだ燃えている火、既に死亡していて、まだ議会軍に発見されていない一般市民、つい先ほど前まで活気で満ち溢れていた都心の町は壊滅。

セイルは、ただ真っ直ぐ、何も無い道を遠い眼で見ながら歩いているだけだった・・・。
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