第二部 プロローグ


 人間が、増えすぎた人口を宇宙に建造された巨大な人口宇宙島、スペースコロニーに移住させるようになった宇宙時代。時は流れ、宇宙移民者達と地球に住む者達は戦争を繰り返してきた。その結果、多くの命が失われ、人々は疲弊し、人類の生存そのものが危ぶまれるようになった。
 宇宙移民者達の一部は、スペースコロニーを恒星間航行用宇宙船へと改造し、地球圏を離れ、他の恒星を目指して旅立っていった。
 そして、地球圏望別と呼ばれたそれは、約半世紀の間に人類に示されたひとつの道として、多くの宇宙移民者達が地球を後にした。
 その間にも大小様々な戦争が勃発し、その構図は地球中心主義者と、その支配から宇宙移民者を解放しようとするコロニー側との対立という図式へと集約していった。
 そして連邦軍と、宇宙移民者達が再結成したコロニー軍は、かつてない大きな戦争を起こした。
 この戦いは決定的に地球を荒廃させた。文化、技術・工業。文明は衰退していった。
 連邦軍は宇宙へと昇る手段のほとんどを失った。
 多くのスペースコロニーが巨大な廃墟と化していた。残った宇宙移民者達は月の裏側に集結し、連邦軍に対抗した。
 連邦軍とコロニー軍の最後の戦いから二十年余り、二つの陣営は休戦という形を取り、表面上は静かな時間が過ぎていた。
 しかし、疲弊した二つの軍は、互いを牽制しながらも、やがてくる新たな戦いに向けて、軍備を拡大しようとしていた。
 休戦から後、戦いが全く無かったわけではなかった。
 地球では新たな勢力が台頭し始めていた。反地球連邦組織ラスティアース、そして彼方よりやって来ると噂される者達の影。
 地球圏は今、大きな戦いの渦中へと向かっていた。

 オーストラリア南東部、辺境に一人で暮らすミリスは、知り合った連邦軍の軍人メスリー、クリエ、エディ、そして民間人で彼らを手伝うアリアと行動を共にする。
 彼らはモビルスーツと呼ばれる十八メートルの人型兵器を駆って、連邦軍を脱走したヴィルヘルム・カーゾン少佐と彼の乗る一体のモビルスーツを追っていた。そのモビルスーツの名はザク・ジェニューイン。二十年前に製造され行方不明になっていたモビルスーツだった。
 メスリー達の操るモビルスーツ、ガンダムと呼ばれる白い巨人を見たミリスは、自分がそれに精通していることに驚く。有るはずの無い知識を持っていることに不信感を持ったミリスは、彼らに同行する。それは自ら戦いに身を投ずることだった。
 ラスティアースと交戦し、捕らえられたミリス達の前に現れたのは、メスリーの所属する連邦軍基地の司令官、ブレナン大佐だった。ラスティアースの指導者、イレーネ・ネリスとブレナンは協力し、強大なエネルギー兵器、サテライト・キャノンを作動させようとしていた。
 処刑を言い渡されたミリス達は辛くもそこから脱出する。だが、ジェニューインの奇襲により、再び危機に陥った。ミリスを助けるため、アリアは敵に身を晒し死ぬ。その悲しみを胸にミリスは宇宙へと向かった。
 宇宙ステーション、ヴァルハラで待っていたイルジニフは、ミリスが遺伝子操作によってガンダムに関する知識を埋め込まれたニュータイプであることを告げる。そして、そこにあるオリジナル・ガンダム、ダス・ゼルプストをミリスに託した。
 ミリスとメスリーの二人はガンダムを駆って再び地上へと降り立ち、連邦軍、ラスティアースと戦う。そしてサテライト・キャノンを破壊し、ザク・ジェニューインを何とか倒した。
 そしてミリスは一人、ガンダム、ダス・ゼルプストと共に地上に残った。
 それから三カ月。
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