最終話 「生き残った者・そして未来」


「R2ガンダムと、ラゾ・ケィム帰艦しました。」
ロムが言う。
「・・R2スナイパーが弾切れとはな・・・。」
グローバーが呟いた。

〜MSデッキ〜
「あ〜あ・・これじゃ、スナイパーも使い物にならないか・・・。」
ラゾ・ケィムから出てきたモロキがパーツを脱着しているR2スナイパーを見て、呆れた口調で言った。
モロキは隣に居たセイルの方を向く。
「おい、セイル。お前、もう少し考え・・・」
モロキはセイルを見て、言おうとした言葉を途中で区切った。
セイルはかなりの汗を出していたからだ。かなり疲労が貯まっていると見えた。
「おい・・モロキ。」
セイルはモロキを呼んだ。
「何だ!?」
「そこの・・飲物取ってくれ・・・。」
セイルは震える手で隣にあった棚の上に乗っていた飲物を指差した。
「あ・・・あぁ。」
そう言って、モロキは飲物をセイルに渡した。
セイルは、あっというまに飲み干してしまった。
「ふぅ・・・行って来る。」
そして、セイルはR2に向かって歩き出した。
「セイル!死に急ぐなよ!!」
モロキが叫ぶ。
「マックス少佐にも言われた。分ってるよ。」
パーツ脱着に時間は掛からなかった。ブースターと大型リアウィングにもプロペラトタンクを装着し予備のビームライフルを持たせた。
コックピットに座ったセイルは呟いた。
「さて・・・どこまで単体のR2は戦えるか・・・。」
セイルはメインスイッチを押し、R2のモノアイが光る。
「ジング・・・待っていろ!!」

「!!このプレッシャー・・・。亡霊のパイロットからか!?何・・・私を呼んでいるのか?・・いいだろう。レゾンを発進させる。作業員は直ちに作業を中止しろ。」
作業員は戸惑いを見せながらも、作業を止めた。
「レゾンカスタム・・・出るぞ!!」

そのころ、セイルは敵MSと戦闘をしていた。
ヴィルーグが両脇部分にある小型レーザーキャノンを乱射する。
セイルは軽々と避ける。
(パーツが無い分、機動性が上がっている・・!!)
セイルはビームシールド付きのビームサーベルを顔の前に寄せビームを回避しながら接近していった。
「コックピットを殺れば!!」
ビームサーベルはヴィルーグのコックピットを貫いた。
そのヴィルーグはMSの残骸しかない宇宙をさ迷うことになる。
「!!この感じは!ジング・シグマ!!!」
セイルの感じは当たっていた。前方からレゾンカスタムが接近してきた。
「落ちろぉぉぉ!!!!」
セイルはサーベルを収納しライフルを乱射する。それと同時に今までの感情が全て表に出た。
だが、ジングは軽々と避けた。
「!!速い。レゾンがパワーアップしているのか!?」
セイルはレゾンがパワーアップしているのを機動性を見ただけで分った。
「亡霊のパイロット・・。聞こえるか?」
ジングから直接通信が入ってきた。
セイルはR2の腕を下げ、回線を開いた。

「ジング・シグマ・・・・。」
「こうして、話すのは久しぶりだな・・・。亡霊のパイロット。いや・・セイル・ギア君。」
セイルは仰天した。ジングが自分の名前を知っているからだ。
「!!何故、俺の名前を・・・!」
「シグマの情報網を並では無いと言ったはずだが。・・・」
そう言って、ジングは黙ってしまった。
(グローバーの息子だったか・・・。なら亡霊を操れるのも納得がいく・・・。)
「グローバーの意思を継ぐ、セイル・ギアよ。ここは、早急に落とさせてもらうぞ。私はグローバーと戦わなければ成らないのでな・・・。」
その言葉にセイルは怒りを感じた。
「ふざけるな!この俺がここから先は通さない!以前の俺だと思うなよ!」
セイルはライフルを乱射した。
それに対しジングはなんとか回避した。
「ふっ!少しは的確な射撃が出来るようになったか・・・。だが!それでは、私は落とせんよ!」
ジングが叫ぶ。それと同時に、ジングもライフルで対抗する。
「くっ・・・!さすがは、ジングか・・・。R2、頼むぜ!最後まで付き合ってくれよ!!」

〜バラスート ブリッジ〜
「R2ガンダムとレゾンと思われる機体の戦闘を確認。」
ロムがレーダーと戦艦カメラで撮影した画像を元に答えた。
「セイルと・・・ジングが・・・。戦っているのか・・・。」
グローバーが呟く。だが、グローバーは目の色を変えた。
「!!小惑星への攻撃開始!!手の開いてるMSは小惑星の核パルスエンジンを破壊しろ!!」

一方、セイルとジングは激戦を強いられていた。
「ちっ!!シツコイ!!」
ジングがなかなか落ちないR2に怒りから焦りが出てしまい、叫んだ。そして、ライフルを発射した。
「ぐわっ!!」
R2の左腕がやられた。その衝撃でセイルは思わず悲鳴を上げた。
レゾンカスタムの武器はビームライフルと、ビームサーベルの2つのみだった。固定式武器は頭部バルカンだけだ。
「武器は最小限・・・って訳か・・・。」
その武装を見ただけでもセイルはレゾンの長所の機動性を落とさせないため武器を最小限だけ持っていると判断できた。
「くそっ!!こうなったらビットだ!!」
セイルは両脇に付いている、ビーム・ビット改を発射した。
ビーム・ビット改はスナイパーのガトリングビット同様、ビットモードと狙撃モードの2つに使い分けが可能の武器である。
ビッ!ビッ!ビッ!
激しくビットは動いた。
「なっ・・・!?動きがすばやい!?」
ジングの言うとおりだった。たしかに、以前のセイルのビットの動きとは格段に、スピード、移動コースがまるで違う。
ジングがライフルを乱射する。しかし、かすり傷も付かなかった。
セイルはそのチャンスを見逃さなかった。ビットはレゾンの右腕を直撃しビームライフルごと破壊した。
「・・!!やるな・・セイル・ギア!!!!!」
そして、レゾンはビームサーベルを手にした。

「ならば、接近戦を!!」
ジングがスロットルを前に倒した。
「!!早すぎる!」
レゾンカスタムの機動性はフルスピードでR2の倍以上のスピードが出る。しかし、EN消費は激しいと言う欠点がある。
セイルが悲鳴を上げるのも当然だった。
レゾンカスタムがサーベルを振りかざす。
そして、セイルは避ける事も出来ないまま、右手に持っていたライフルを破壊された。
「ちっ!!」
セイルが舌打ちをする。とっさに右腕の装着されていたビームサーベルを手にしようとした。
「もらった!!」
レゾンカスタムは高速で次の攻撃をしてきた。
勿論、R2の防御は間に合わない。
(ここで、終わりか・・・!!)
しかし、R2とレゾンカスタムの間をビームが割り込んできた。
後退するレゾンカスタム。
「セイル!!」
R2のコックピットに聞き覚えのある怒声が聞こえた。
「マックス少佐!?生きていたんですか!?」
機体の色からもマックスだと、セイルは断定できた。
しかし、マックスの機体はボロボロだった。
「ジング・シグマ!!この俺が落としてやる!!」
「・・ブレイジング隊のMS隊、隊長。マックス・ボーン少佐か・・。邪魔だな・・・。」
マックスがライフルを乱射した。
ジングは軽々と避けて見せた。
「ふん!!こんなものか?セイルの方がいい腕をしているが・・・。そんなボロボロの機体でまだ戦場に居るなど!邪魔なだけだ!!」
レゾンカスタムが高速で接近してきた。
マックス自身はそれに反応はしたが、機体がボロボロで反応しきれなかった。
そして、レゾンカスタムのビームサーベルはマックスのラ・ムジィックの横から真っ二つに切り裂いた。
「うぉぉぉぉ!!」
マックスの最後の悲鳴をR2は感知し、セイルに聞こえた。

〜バラスート ブリッジ〜
「・・・マックス機の・・・大破確認・・・。」
ロムがマックス機の反応が消えたので、艦長に報告した。
「!!マックス少佐が・・・!!・・ムーン大尉!聞こえるか!?」
グローバーは通信回線を開き、ブレイジング隊MS部隊、副隊長のムーン・アダモ大尉に繋いだ。女性といえど、腕はかなりのものである。
「艦長?どうしました?」
ムーンは即答した、彼女の役割はメイスやラ・ムジィックDタイプと共に戦艦の護衛の指揮だ。
「マックス少佐が殺られた・・・。これからは君が指揮を取るんだ!!」
「マックス少佐が・・!?戦死だなんて・・!!・・・りょ・・了解!MS部隊!早く、核パルスを破壊しろ!!」

マックス機の残骸がR2の目の前を横切っていた。
「ジング!!・・・許さん!!」
R2はフルスピードでレゾンカスタムに接近した。
R2はサーベルを振りかざした。
ジングもサーベルでR2のサーベルを受け止めた。
「くっ!!このパワーは何だ!?」
ジングが今までのパワー以上を出しているR2に仰天した。
R2とレゾンカスタムはサーベルをぶつけ合ったまま、小惑星の入り口付近に落ちていった。別の言い方をすれば、R2のブースターの加速でレゾンカスタムが押されていたのだ。

「人類の進化は絶対に必要なのか!?答えろ!!」
セイルがジングに通信を繋いでいたままだったので、ジングに問いかけた。
「・・なら、ここで真実を教えてやろう。」

「20年前の話は、グローバーから聞いてると思うが・・・?」
「あぁ、知ってるよ、あんたがグライス・カロニア大尉だった頃の話だろ?」
「なら、話は早い。・・・あの後、私は攻撃を仕掛けてきたMSの後を追った。だが、見失ってしまってな・・・。そのまま、シグマセツルメントへ帰還しようとした。勿論、まだRと名づけられる前の・・"ガンダム"を持ってな!」
セイルは疑問を感じた。
(Rと名づけられる前・・?)
ジングの話は進む。
「だが、突然、ガンダムのOSにウィルスが乱入してきた・・・。"Rプロジェクト"と名乗るウィルスにな!そして何も対処出来ないまま・・ガンダムのOSは書き換えられた。そこで、私はそのウィルスの発信源を調べた。そして、判明したのが・・・議会軍だった。」
「そ・・・そんな!?Rプロジェクト?たしか、機動させると何時もディスプレイに出てくる文字だ。一体、Rプロジェクトってなん何だ・・・?」
セイルは更に仰天した。
「おそらく、議会軍の上層部は我々がしつこく拒むので勝手にOSを変えて、手に入れようとしたのだろう・・。ふっ!あの時、私は出ていて正解だった。そして、私は議会軍に見つからぬよう、廃棄工場に隠した。しかし、シグマの上層部はガンダムの再利用を決断した。私は、君がガンダムを見つける前に再度回収しようとした。だが・・・。」
「そこを・・・俺が発見した・・・。」
セイルにガンダムを発見したときの映像が頭を過ぎった。
「そして、議会軍はRの後継機のR2を生み出し、Rプロジェクトは密かに、そして順調に動いていた。だが、その議会軍は民間人の人権を無視同然の扱いを行い、人種差別も行っている!私の言う、人類進化計画は、議会軍を壊滅させ地球人類全体の自由を勝ち取り、次の世代を光り輝く時代にする計画!!・・これが真実だよ・・・。セイル・ギア。」

R2とレゾンカスタムは互いのサーベルをぶつけ合いながらも入り口付近に突入した。
その床にぶつかった衝撃で、互いのMSは機能を停止してしまった。
「くそっ!予備電源は・・・?んっ!?」
セイルがレゾンの方を向く。
レゾンのコックピットハッチが開いているのだ。
「脱出したのか?・・・。」

セイルは内部に単独で潜入し、エンジンをオフにしようと考えた。
R2のコックピットハッチが開いた。
セイルが外に出る。
「!?」
セイルはジングの反応を感じた。
バキュン!!
銃声が鳴った。ジングがレゾンの裏に隠れ、セイルに向かって発砲とたのだ。
その銃弾はセイルの胸を直撃した。セイルはその場に倒れた。

ジングがセイルに近寄る。
「死んだか・・・。!!血が出ていない・・・!?」
たしかに、打たれた所はパイロットスーツに穴が開いているが、血が出ていなかった。
次の瞬間、セイルは意識を回復し、立ち上がった。
「・・ジング・・・!うっ・・!!」
「!!今度こそ!!」
ジングが銃口をセイルに向ける。
だが、セイルの姿がまた、グローバーに見えた。
「!!」
ジングは撃てなかった。
「最後に・・・言わせてくれよ・・・。人類は進化の過程にあるんだ・・・。今、あんた達がこの小惑星を落とせば、被害が出ることは確実だ・・・。それで親族が死んで・・・悲しむ人間が出る!・・それで、人はシグマを恨み、また戦争や殺し合いが始まる・・・。そんな事が続けば、人類は進化しない!!逆に退化し、戦争だらけの時代が来るだけだ・・・!!」
ジングは銃を床に捨てた。
「ジング!?」
「・・・君は・・・新たな人類なのかもしれない・・・。次の世代は君が引っ張ってゆく事になるだろう・・・。生きたまえ・・。君はここで死んではいけない・・。シグマは、過ちを犯した・・。」
ジングはパイロットスーツの肩にある通信ボタンのスイッチを押した。
「こちら、ジング・シグマだ。グレートシグマは議会軍に投降する。いいな!!」
「ジング・・・。お前・・・。」
突然、セイル達の周りで爆発が起きた。ブレイジング隊の攻撃がセイル達の場所まで届いてきたのだ。
「早く、R2に!!君は死んでは行けない!!」
「ジング・・・お前は!!」
セイルが少し爆発の影響で後ろに飛んだ。
「私はここで死ぬ・・・。人類への償いだ・・・。」
そして、ジングを爆発が包んだ。
その衝撃でセイルもR2のコックピットに入り込まされた。
「くそっ!!予備電源が回復しない・・・。」
セイルはふと、思った。ジングに撃たれたのに何故、自分は生きているのだろう?・・・と。パイロットスーツのチャックを下げ、打たれた胸部分を見た。
それは、ミニンから貰った、ペンダントだった。以前、グローバーから渡されたもの。しかし、そのペンダントは開くようになっていたのだが、きつく密着していたので、開けられなかったのだが銃弾がその、ペンダントに当たりペンダントの鉄を曲げ開くようになっていた。
「ペンダント・・・開く。」
セイルは呟き、ゆっくり開けた。
「!!」
セイルは仰天した。中には小さく切られた写真が貼ってあった。
それには、生まれたばかりのセイルを抱いているミニンの姿があった。横でグローバーが微笑んでいた。
これで、セイルは全てが分った。ミニン・トールはセイルの母親だったのだ。
セイルの眼からは涙が溢れていた。
「・・ミニンさんが・・・母さん・・・。生きたい・・・生きて帰って・・母さんに・・会いたい・・・。動け!R2!動けよぉぉぉぉぉ!!!!」
セイルは生きたいの一心で、叫んだ。
それに答えるかのように、R2の予備電源が入った。

〜バラスート ブリッジ〜
「駄目です!!小惑星の核パルスエンジンは破壊しましたが、地球の引力に捕まり・・・。このままでは地球に落ちます!!」
ロムが叫んだ。
「コースは!?コースは、ハワイ諸島か!?ロム!?」
グローバーが更にロムに問いだす。
「核パルスエンジンが破壊されたおかげで、コースはアメリカにずれますが・・・。」
「!!アメリカに!?うわっ!!」
突然、小惑星が光った。爆発したのだ。しかし、激しい閃光が発生しクルー全員、眼を開けられなかった。
やがて、閃光が止む頃、ロムによる現状報告が言い渡された。
「・・・小惑星は爆発はしたものの、その一部がアメリカに墜落、民間人の被害は予想以に・・・・。」
ロムは言い切れなかった。言うだけで辛かったのだ。その真実を述べたくなかったからだ。
「ブレイジング隊・・・任務失敗だ。」
グローバーが小さく呟いた。

この後、グレート・シグマの投降し、戦争は議会軍の勝利に終わった。しかし、ブレイジング隊は敗北した。アメリカに壊滅的ダメージを与えてしまったからだ・・・。

「R2・・・俺、生きてるよ・・・。」
セイルのR2は宇宙を漂っていた。セイルの額からは血が出ていた。スコープが割れていたのだ。おそらく脱出する際に衝撃で割れたのだろう。

R2が発見されるのは、この宙域の復旧作業が終わった頃だ。もう少し、時間は掛かりそうだ。
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