第十四話 「明日への希望」


小惑星基地は快調に前進していた。すべてはジング・シグマの予定どうりに・・。ただ、ブレイジング隊の出現を除いては・・・。

「艦隊は小惑星と同じ速度で進み、ブレイジング隊の排除を。」
ジングが新型戦艦スラルのMSデッキでMSコックピットに座り込みながら指示を出していた。どうやら、機体の調整をしているようだ。
「亡霊を復活させたか・・・、議会軍よ・・・。グローバー・・お前なら議会軍のやり方に疑問を感じていたと思っていたのだが・・・。」
ジングが手を動かすのを止め、書類に目をとうしながら呟いた。
「・・お前が立ちはだかる以上、私が殺すしかない・・・!!」

〜バラスート ブリッジ〜
「小惑星はまだ止められないのか!?」
グローバーが怒りながらロムに問いかけた。
「駄目です!敵の攻撃が激しく、小惑星に接近できません!!」
「くっ・・・!セイル!応答しろ!」
グローバーはセイルに回線を繋いだ。セイルはこれから出撃しようとしていた時だったのだ。
「セイル!お前は、敵艦の排除を頼む。敵MSはマックス少佐達に任せるんだ。いいな!?」
「・・・了解。」
セイルは集中していた。グローバーの声は聞こえたが、頭の中はジングの事でいっぱいだったのだ。
「R2・・・セイル・ギア出ます!!」
最後の決戦を舞台に、R2は出撃した。

〜スラル MSデッキ〜
「新型のレゾンの調整は完璧だ。あぁ、武器は最小限で頼む。武器の重みによって、機動性が落ちるからな。」
ジングは作業員に通信をしていた。
(んっ!?この感じは・・・。亡霊が出撃したか・・・。パイロットは誰だ?グローバーの意思を感じるが、グローバーでは無い・・・。)

一方、セイルはコックピットのトリガーを引き、敵MSに対して打っていた。
「ジング・・出て来い!俺は、お前を!」
「セイル!!」
突然、マックスの怒声がコックピット内に響いた。
R2の後ろで爆発が起きた。どうやら、敵MSが後ろにいて、R2をサーベルで攻撃しようとしていたらしい。そこをマックスが的確なライフルの射撃により、敵MSを破壊しセイルを救ったのだ。
「セイル少尉!そのままでは死ぬぞ!」
「す・・すみません・・!少佐・・・。」
セイルは、今はっきりとした。マックスが助けてくれなければ、自分は今頃死んでいたと・・・。ジングとの対決ができないまま死んでいたのだと・・・。その恐怖からセイルの声は小さくなっていた。
「少尉!怯えるな!戦場では常に強気でいなければ、己に敗北し絶望の道へと落ちてしまうぞ!」
マックスの言う、絶望の道とは"あの世"のことだろう。
「少佐・・・。」
「死に急ぐな!!お前は私を乗り越え、次の世代にシグマの言う人類の進化ではなく、もう1つの進化の道を引き継ぐ責任がある!」
ピー!ピー!
マックスのコックピット内を警告音が鳴った。前方に敵MSが接近していた。
「ここは、私に任せろ!セイル少尉は敵艦を!!」
「し・・しかし!!」
マックスがライフルを乱射する。敵MS1機を落とした。
「急げ!!」
マックスの熱意が伝わったのだろうか。セイルはブーストを加速させ、敵艦のポイントまで向かった。

「あとローリンは1隻!!」
セイルが叫ぶ。
既に、セイルは4隻ある中の3隻を落とし、もう1隻のローリンに向かっていた。
前方からセイルを拒むように敵MSがライフルを乱射する。
「ちっ!!」
舌打ちをするセイル。
そして、セイルはガトリングビットを射出した。
「邪魔をするなぁぁぁ!!」
セイルは感情を込めてビットの攻撃を行った。
敵MSは全てビットの攻撃により大破し、辺り一面は爆発。それによりセイルはローリンを一瞬見失った。
「!!何処だ!レーダー・・・。あっちか!?」
レーダーにポイント0901に反応があった。セイルはそこを目指しブースターで一気にフルスピードでポイントまで向かった。

「武器の作業は終わりました。」
新型のレゾンのコックピットに作業員からの通信が入ってきた。
「わかった。現在の状況は分るか?」
シグマはその作業員に問いかけた。
「はい・・・。現在、ローリンは3隻撃沈。残り1隻はR2と交戦中。小惑星は被弾ダメージはありますが、落下コースに問題は出ていません。」
「ブレイジング隊・・・さすがだな・・・。レゾンのエンジン調整を急がせろ。ブレイジング隊に好き勝手やらされたくはないのでな。」

一方、セイルは残り1席のローリンに集中攻撃を行っていた。
「くっ!!いい加減落ちろよ!!」
セイルは一気に片付けるため全弾発射攻撃をした。
その結果、ローリンは撃沈した。
ピー!!ピー!!
突然、警告音が鳴った。
「弾数ゼロ・・・EN残量も危険区域に到達・・・。くっ!!当然の結果か・・。」
そして、セイルは補給のためバラスートに帰艦を余儀なくされた。

小惑星は以前、ハワイ諸島落下コースを順調に通っていた。
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