第一話 「出撃」 1人の男が、廊下を流れている。 そして、BRIEFINGROOMと書かれた部屋の前に立つ。 ドアが開く。部屋内には、ディスターブ隊の人員が全員居る。 その男は、正面のディスプレイの前に立つ。 「自分は、モロキ・グレン。階級は大佐である。本日よりこのディスターブ隊のMS部隊の隊長に任命された。これから、宜しく頼む。」 モロキは敬礼をしながら、自分の視界180度を見る。 それと同時に、人員全員が敬礼をする。 〜ブリッジ〜 ディスターブ隊の旗艦である、バラスート級8番艦のライグランズのブリッジにモロキは居た。 「いや〜、合流が遅くなると聞いて、驚いていたのだが、無事に着いて何よりだ。私は、この艦の艦長のフォーラン・アーズである。階級は中将だ。これから、君の戦いに期待させてもらうよ。」 メガネを掛けた一見気のよさそうな人間だが、戦闘となると人が変わったように卑劣な人間になると、モロキは聞いている。 (アーズ?・・・どこかで聞いた気がする・・・が。) 「どうした?モロキ大佐?」 「・・・はっ!では、私はMSを見てきます。」 その場を後にするモロキ。 〜MS格納庫〜 モロキは、格納庫に入り、周りを見渡す。量産型MSの、フォートムが全機メンテ中であった。 中には、モロキの乗るMSスパイルがある。ガンダムタイプのMSである。 運動性は高く、その為パイロットの反応速度が遅ければ機体の性能をフルに使うことができない。 スパイルの前に立つモロキ。 「さて、出撃前の調整でも、するか。」 モロキは、コックピットに座り、念の為体をベルトで固定する。 「まずは、何から手をつけるかな・・・?んっ!?MSの輸送コンテナか?」 モロキがディスプレイに目を通すと、コンテナが格納庫に下ろされた。そこには、フォーラン艦長と、黒い髪の色をした14,5歳の少年が立っていた。軍服を着ているため、軍人だと言う事は分かった。だが、モロキからして見れば珍しい事では無い。 15年前の戦争で、15歳の少年が同じ部隊で共に戦ったからである。 中からMSが出てくる。 「新型のMS?俺は何も聞いてはいないが・・・。」 全面が黒い。とにかく黒い。真っ黒のMSだ。スラスター部分は、黄色で塗装されてはいる。 モロキは話を聞くつもりはなかったが、興味本位で盗聴ボタンを押した。 「これだな。ガンダムタイプのMSと言うのは。」 フォーラン艦長がコンテナを運んできた整備班に訊く。 「はい。コードナンバー、X001−DT858−Gで宜しいですね?」 整備班が答え、MSのコードが合っているかをフォーランに確認するため、訊き返す。 「あぁ。どうだ?これがお前の・・・シャドウが乗るMS・・・ディストレスだ。」 シャドウという名前の少年は、黙ったままである。 (シャドウ・・・影だと?) モロキはシャドウという名前に疑問を感じながらも、どこか底知れぬ力を持つ人間と感じていた。 〜2時間後〜 「前方L6ポイントに、フェダールの部隊を確認!熱源も接近中!!」 オペレーターが言う。 「ちっ!敵に先手を打たれたか・・・。ライグランズは回避コースへ移動。MSは各機発進!!モロキ大佐!何としても、敵部隊を排除するんだ!歴戦の勇者、その実力見せてもらうぞ・・・。」 フォーラン艦長がモロキのスパイルに通信を繋ぐ。 モロキは初めて見るフォーランの異変振りに聞いてはいたが只驚くばかりである。 「了解!」 モロキは、答える。すると、オペレーターから通信が入ってきた。 「モロキ大佐。私は、オペレーターのカナン・ツムギ少尉です。以後、よろしくおねがいします。では、早速本題に移ります。これから、モロキ大佐率いるMS隊は、前方に居るフェダールのMS部隊と戦ってもらいます。部隊と言っても、艦隊に近い規模です。慎重に。尚、こちらのシャドウ・ネィム少尉は、新型MSの調整の為、出撃が少し遅れます。」 サブディスプレイに、シャドウ・ネィムのデータが出る。先ほどの何処と無く近寄りがたい少年である。 「新型?さきほど、送られてきたガンダムタイプのMSか。あれに、この少年を!?」 モロキがデータを見ながらオペレーターに訊く。 シャドウのデータは顔写真と年齢など、ほとんどのデータが無かったのだ。 「はい。驚くことは無いと思いますが・・・。15年前にも、居ましたよね?15歳の少年がガンダムに・・・」 「分かった、分かった!とにかく、出撃する!!」 モロキは、カナンが言おうとした言葉を自分で止めた。今更、それを訊くのもめんどくさかったからだ。 モロキは、バイザーを下ろしスパイルの両足をカタパルトに接続する。 「モロキ・グレン!スパイル、出るぞ!!」 一方、フェダールの艦からもMSが出撃していた。 「あと、少し・・・か。」 モロキ率いるMS隊が敵との接触まで、およそ20秒たらず。 (フェダール・・・、あの宣戦布告の会見の時、青い髪の色をした男と・・・もう1人金髪の人物。俺の目に間違いがなければ・・・あいつは!!) ビー! 警告音が鳴る。 敵との交戦エリアに入った。 「MS隊は各機撃破せよ!!」 モロキが叫ぶ。と同時にスパイルはライフルを乱射する。 それで3機は撃墜するが、敵は進行を止めない。 「この程度で、撤退するなら、最初から攻撃はしてこないか・・・。来る!!」 モロキはライフルを連射し、1機を撃墜する。 「このまま、艦隊コースか・・・それとも、MS撃破コースか・・・。まずは、艦隊だな!!」 スパイルは艦隊への攻撃を開始する。 当然、敵艦はスパイルに対し迎撃を行う。 「浅い!」 モロキは弾幕を薄い事が分かると、敵艦の左側に回りライフルを乱射し、砲台を破壊する。 すると、その艦からMSが数機出てきた。 「まだ居るのか!!」 モロキはサーベルを抜くと、フルスピードで接近し、内1機を切り裂いた。残りのMSはスパイルに向けてライフルを乱射してくる。 「なっちゃいないな・・・。よくも、それで俺に挑むとはな・・・!」 モロキは当然とばかりにビームを回避して行く。 そして、両肩のビームガトリング砲を発射する。そして、2機を破壊する。 「あと1機!!」 残りの1機は、他のMSとは色が異なっている。 「赤の機体!?できるか・・・!?」 モロキはライフルを乱射する。と、赤い敵機は回避し、接近。サーベルを振りかざす。 スパイルはサーベルを相手のサーベルにぶつける。火花が当たりに散らばる。 「やるな!んっ!?敵艦が撤退するだと!」 敵艦は3隻。その3隻ともが撤退しようとしていた。 「ちっ!せめて、1隻でも沈める!」 赤い敵機が接近する。モロキがサーベルを突き出した。 モロキは、相手のサーベルによる攻撃を防ぐつもりは無かった。 「くそっ!外れたか・・・。」 スパイルのサーベルは赤い機体の左肩を切断していた。 相手のサーベルはスパイルの顔の横にある。紙一重の差である。 突然、通信が入ってきた。 オペレーターのカナンである。 「モロキ大佐!その艦から、大量のミノフスキー粒子を確認しました。おそらく、あの艦はメガドライブエンジンを使うつもりです!粒子に汚染されます!急いで離れて!!」 メガドライブエンジンとは、フェダールが独自に開発した難易ワープエンジンで、それには大量のミノフスキー粒子を使うことになる。その際、粒子が飛び散り、それに使うエンジンの熱と粒子によりMSの装甲など、一瞬で溶かしてしまう効果がある。 「あのワープシステムか!?くそっ!!」 赤い機体が、艦に戻るのを確認すると、スパイルも、その場から離れた。 そして、2隻がメガドライブエンジンを使用し、MSを回収しながら撤退して行く。 残りの1隻も、あと少しでエンジンを機動させてしまいそうだ。 その艦の周りに自軍機は無い。ここから、ハイメガビームバスターを放っても、ENチャージが間に合わない。 だが、次の瞬間、敵艦のメガドライブエンジン部分が根元から、切り裂かれた。 瞬き1つの間の出来事であった。 「何が起こった!レーダーに反応がある・・・。まさか!?」 「こちら、ディストレス。シャドウ・ネィム、これより戦線に復帰する!!」 すると、ディストレスは敵艦のブリッジに一瞬で接近し、ビームブレイカーでブリッジを切り裂いた。 「ライグランズ!今だ!!」 シャドウが叫ぶ。 すると、ライグランズの砲身が光る。 主砲が発射されたのだ。 ディストレスは、後退し、敵艦はライグランズの主砲によって撃沈された。 「・・・こちら、モロキ・グレン。任務完了だ。」 オペレーターの通信が入る。 「こちら、カナン・ツムギ。任務完了です。全機帰艦してください。」 モロキはスパイルを反転させると、ライグランズに向かってバーニアを吹かす。 (あの、ディストレスの呼ばれる機体・・・。あの動き、速すぎる、ステルスか?・・・・まさかな。) モロキは15年前の記憶を思いながら、着艦コースに入る。 |
|
BACK 目次 NEXT |