第四話 「感じる事、見える事」 〜月基地〜 ライグランズのブリッジでは、フォーランが月基地の司令官、ストロ・マイヤー大将から通信を受けていた。 「では、我々ディスターブ隊の今後の進路は、キャルセツルメントで良いのですね?」 フォーランがストロ大将から送られてきたデータを元に訊く。 「そうだ。そこのセツルメントも既にフェダールに制圧されているが、現在そのセツルメントから大規模のフェダールの艦隊がメガドライブエンジン・・・、ワープによって、大半の艦隊は居なくなっている。そこで、君たちディスターブ隊にはキャルセツルメントの残った部隊の排除、並びにセツルメントの奪還を頼む。」 フォーランが敬礼をする。 「では、セツルメント近辺に到着しだい、折り入って連絡致します。」 通信が終わる。 通信が終わると同時に、インターフォンマイクを外し、ブリッジを出てゆくカナン。 エレベーターのドアを開け、2ブロック行きのボタンを押す。 〜モロキの部屋〜 「はぁ・・・・。」 モロキはため息をつき、コーヒーの入ったマグカップを手に取り、1口飲む。 ソファーに座り、コーヒーを机に置くと、再びため息をつく。 モロキの頭に以前の戦闘が思い出される。 敵MS・・・ガンダムタイプのMSが射出した、ビットのような武器、8つほど飛ばされたビットのような物によって、頭部と右腕が破壊された・・・。 「・・・くそっ!!」 モロキは机を叩く。 敵MSにやられた、敗北、負けたのだ。 傷1つつけられないまま、一瞬でやられた。 それは、今までのモロキのプライドをズタズタにしたのだ。 過去の戦跡、自分に対する絶対なる自信。 それが、たった1人の相手により、モロキのプライドは崩壊寸前であった。 ピッ! 通信の音が沈黙していたた室内に響いた。 そして、画面が映し出される。 「モロキ大佐・・・。入っても宜しいでしょうか?」 モロキは目を横に滑らせ画面に映し出された人物を確認しようとした。 カナンだった。モロキは首を縦に振る。 すると、ドアが開きカナンが入りづらそうに入ってきた。 「どうした?」 モロキは前かがみになる。 「あの・・、何だか帰艦されてから元気が無かったみたいなので・・・心配になって。」 「そりゃぁ、戦ってんだ。元気が無いぐらいであまり心配するな。」 モロキは軽い口調で言う。 カナンに今の自分の心情を悟られたくなかったからだ。 「いえ・・そういうんじゃ無く・・・その、言いにくいんですけど、大佐のMS負傷していましたよね・・・。」 それを聞いたモロキは黙り込んでしまう。 カナンは立ったまま喋り続ける。 「だから・・・、心配になっちゃって・・・。」 モロキは気づいた。カナンは最初から、自分の心情に自分の部屋に入ってくる前から気づいていたのだ。 「すまない・・・。余計な心配掛けたな。」 モロキは立ち上がる。 「でも、俺は忘れていたのかもしれない・・・。」 モロキはコーヒーを飲む。 カナンは不思議そうな表情をしている。 「上には上が居る・・・って事。自分は過去の戦跡に酔っていたのかもしれない。俺の周りには、不思議な連中ばっかが居た。」 モロキが頭を上げる。 「ニュータイプですか?」 カナンが訊く。 モロキが目線を横に滑らせカナンを見る。 「あぁ。俺には、あいつ等が感じるものは感じないし。見えるものも見えない。」 モロキが言う、あいつ等とは以前、ブレイジング隊に居た連中の事だ。 勿論、カナンはブレイジング隊の事は資料で読んだことしかない。 「でも、モロキ大佐にしか出来ない、感じる事、見える事・・あるじゃないですか。人それぞれ感じ方は違います。それが人として生きてる証拠だと思います。」 カナンが微笑む。 「・・・・さて!俺は格納庫へ行って、スパイルのメンテでもしてくる。カナン、ありがとう。」 そう言って、モロキはカナンの肩を軽く叩く。 〜MS格納庫〜 モロキはスパイルの前に立つ。 「よう、スパイルどうだ?」 モロキが作業をしている整備員に訊いた。 「あっ、はい。頭部も右腕も既に修復完了しました。後は、大佐の調整次第です。」 スパイルを見ると、右腕も頭部も完璧に修復されている。 「すまないな。余計な仕事、増やしちまって。」 モロキが整備員に言う。 「いえ、それが我々のする事ですから。」 整備員は嬉しそうに言う。 「お疲れさん、後は俺がやるよ。」 そう言って、モロキは壁を蹴りコックピットに入る。 「感じることは、人それぞれ・・・か。」 モロキは呟き、コンソール画面を見つめる。 〜10時間後〜 「艦長、キャルセツルメントを確認しました。敵艦隊の反応、ありません。」 カナンがセツルメント付近のレーダーを見ながらフォーランに知らせる。 「よし、カナンは月基地に連絡を。MS部隊発進!」 フォーランが指示を出す。 〜MS格納庫〜 「俺と、レイル、シャドウ以外の者はセツルメント正面から突撃だ。おそらく、敵艦隊はセツルメントの港に居ると思われる。十分に警戒していけ!」 モロキがコンソール画面のボタンを押しながら言う。 「隊長、我々は?」 モニターにシャドウが映し出される。 「あぁ、俺たちは味方が敵艦隊と戦闘している間にセツルメント内部に侵入し、制圧する。」 モロキがバイザーを下ろしながら答える。 「確かに、特殊任務ですねぇ。」 シャドウもバイザーを下ろす。 10分後、モロキ達3人は内部に侵入した。 「皆、気をつけろ。最新の情報によると、セツルメント内部はガスが掛かっているようだ。回線は常に開いておけ。視界には十分注意しろよ。」 モロキが言う。 「隊長?敵部隊は港に居るのでは?」 シャドウが訊く。 確かに、敵艦隊は自分たちの隊と戦闘をしている。 内部に敵が居る可能性は極めて低い。 「念の為・・・と言っては、信頼性が無いがな。」 モロキが言った直後である。 「隊長!前方から、ミサイルを多数確認!!」 レイルが叫んだ。 「何!?」 モロキは慌てて、ビームシールドを展開し、バルカンとライフルを放ち、ガスを振り払おうとする。 ガスのせいでミサイルの場所が分からないからだ。 「何処から、来る!?」 モロキは集中した。 爆発音は無い。ミサイルは迎撃出来なかったのだ。 「んっ!レイル!ライトは使うな!!敵に位置がバレるぞ!!」 モロキが叫ぶ。 レイルは慌てて、モノアイのライトを消した。 「モロキ隊長、自分は行きます。」 シャドウが通信をして来た。 「何?そうか、お前の機体、ステルス機能があったな。」 モロキの発言に眉を細めるシャドウ。 「何故、ステルスだとお分かりで?」 シャドウが呟きながら訊く。 「まぁ、昔に見たことあるんでね。ステルスを。んっ!?」 モロキが前方を見る。 熱源が接近して来た。 ビームである。 「ビーム!?撃ってきている。やはり、敵が居たか!!シャドウ、お前は先行して、敵の基地を叩け。ステルスなら出来るだろ!?」 モロキはそう言って、バーニアを吹かし、レイル機と共に上昇した。 その直後、モロキ達の下をミサイルのビームが横切っていった。 「まったく、勝手なことを。まぁ、簡単ですけどね!」 シャドウはスロットルを前に倒す。 すると、ディストレスは高速で進んでゆく。 バーニアからは、激しい量の粒子と炎熱が放射されている。 「隊長!前方にMS接近してます!・・・1機だけ!?」 レイルがレーダーを見ながら言う。 レーダーには本当に1つの反応しかない。 「1機か・・・。手ごわいぞ、レイル!!」 モロキはスロットルを握り、ライフルを構える。 レイルもライフルを構える。 「先ほどのミサイルとビーム砲、撃ってきたのもあいつだ。敵の位置が分かるのか敵は?」 モロキは呟くと、ガスの中に光るモノアイが見えた。 |
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