第五話 「霧の中で」


「こ・・・これは、一体!?」
シャドウが絶句する。
敵基地は破棄されていたのだ。
「くそっ!また、敵に騙された!!」
そう言って、シャドウはモロキ達の元へと向かう。

「来た!」
モロキは敵MSのモノアイの光を確認すると、ライフルを放つ。
ガスが掛かっているせいで、敵MSの姿をハッキリとは確認は出来ない。
スパイルのビームは外れた。
その瞬間、敵MSの姿が消えた。
レーダーにも反応も無い。
「何!?消えた!」
モロキはとっさに周りを見る。
次の瞬間、レイルのフォートムの頭部が破壊された。
「うぅッ!!」
レイルのフォートムはバランスを崩す。
「レイル!」
モロキが叫ぶ。
レイル機は下へと落ちていってしまう。
応答が無い。
頭部を破壊されただけで、死ぬことはまず無い。
モロキはサブディスプレイでレイルの姿を確認する。
「気を失ったか!!」
モロキはバーニアを吹かし、レイル機に接近しようとする。
が、敵がライフルを放ってきた。
「ちぃ!こいつ!!」
モロキは回避し、敵に向かってライフルを撃つ。
「なっ・・・!?」
先ほどまで居た敵MSの姿が無い。
また消えたのだ。
今度は、後ろからの発砲だ。
モロキはとっさにビームシールドで防御するが、左脚が破壊されてしまう。
「くそっ!何処だ!!・・・んっ!あれは?」
モロキが敵が居た場所を見てみる。
「光?光の線・・・、光の・・・帯?まさか!?」
スパイルは90度反転する。
「そこか!!」
モロキはライフルを連射する。
モロキが撃った場所には敵の姿があった。敵はとっさにビームシールドを展開する。
だが、1発はシールドで防御され、後の弾は回避されてしまう。
今度は、敵の姿がハッキリ見える。
「あの機体!・・・似ている、同型機?まさかな・・・。そうだ、レイルは!?」
モロキはレイルの事を思い出す。
だが、急速でモロキ達に接近する機体がある。
「なっ!シャドウ!!」
向かってきたのはディストレスだ。その腕には、レイルのフォートムがある。
「隊長、敵の基地は破棄されていました。騙されましたよ!」
スパイルのコックピットのサブディスプレイにシャドウが映し出される。
「何だと!?また、無駄足か・・・。」
「隊長は、レイルを連れて帰艦して下さい。その損傷では無理だ。」
ディストレスは、レイル機をスパイルに渡し、敵に向かってライフルを連射する。
「無理をするな!シャドウ!!」
モロキが叫ぶ。
「あの機体・・・、ステルス!?」
シャドウが不気味な笑みを浮かべながら言う。
モロキの言葉など、まるで聞いていない。
「おもしろい!!」
ディストレスはステルスモードに入る。
相手も消える。
「・・・シャドウによれば、敵基地は破棄されていたか。どうも、最近敵の動きが読めんな・・・。」
モロキは呟く。

「見つけたぁ!!」
シャドウが叫び、ビームブレイカーを構え敵に接近して行く。
ディストレスがビームブレイカーを振りかざす。
敵も、ビームサーベルで防御する。
「サーベルで、ブレイカーを受け止められるかよ!!」
シャドウが更に振りかざす。
敵は、後退し、バックパックのツインビームランチャーを両肩にセットし、連射する。
「うわぁ!」
シャドウが叫ぶ。
右脚を破壊された。
「このぉ!!」
シャドウは肩に設置されている、ビームキャノンを乱射する。
敵は軽々と避け、ディストレスの頭部をサーベルで破壊する。
「・・・ッ!!」
シャドウは衝撃で声にならない声を上げる。
「シャドウ!!」
モロキのスパイルが駆け寄る。
「大丈夫か?シャドウ?」
シャドウはスロトッルを握り締めている。
「く・・・くそぉぉ!!」
シャドウを目を見開く。
すると、敵MSは撤退して行く。
「まだ終わってない!!」
シャドウは叫ぶと、スラスターで強引に体制を整える。
「まて、シャドウ!」
スパイルの右手がディストレスの進路を防ぐ。
「深追いはするな。敵の基地が破棄されているとなると、俺達は撤退するしかない。」
シャドウは渋々撤退した。

〜30分後〜

〜ブリッジ〜
「・・・以上が、セツルメント内部の情報です。」
モロキが言う。
「そうか、敵基地は破棄されていたか・・・。では、とりあえず、もう一旦、月基地に帰りましょう、整備と補給もしなければなりませんし。」
フォーランがキャプテンシートに座る。
「大佐達を押していた敵・・・どうやら、ステルスを使うようですねぇ。」
フォーランが言う。
「えぇ。そのようでした。」
モロキが答える。
「その機体、見覚えがありませんでしたか?」
フォーランが訊く。
「えっ!?・・・いえ、見覚えは無いですが・・・。」
モロキは嘘をついた。
「・・・そうですか。」
フォーランは言う。
モロキはフォーランに底知れぬ疑惑を感じていた。だからこそ、嘘をついたのだ。
(あのMSのパイロット、もしかしたら・・・。)
モロキはそんな事をを考えながらブリッジを後にした。

〜モロキの部屋〜
モロキは自分の部屋に入る。
すると、重力発生ボタンを押す。
そして、マグカップにコーヒーを注ぐ。
無重力だと、コーヒーが液状になってしまい口に入れるしかなく、飲めないからだ。
「・・・どうして、あいつ等がフェダールに・・・。」
モロキが天井を見上げる。
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