第四話 「信じる心」


〜キャルセツルメント〜
「例の部隊がこちらに向かっているのですね?」
「あぁ。これで、陽道作戦の第1段階は成功だ。それと、戦艦テレスがようやく、ロールアウトした。」
キャルセツルメント内部の通信室で、ランドはセイルと通信をしていた。
ロールアウトした。と聞くと、ランドは笑みを浮かべる。
「そうですか。女艦長の方はどうです?」
「今、必死に勉強してるよ。・・・お前、必ず生きて帰って来いよ。女艦長が悲しむ。」
「・・・彼女に伝えておいて下さい。かならず帰る、と。」

〜MB−FR 司令室〜
「分かった。」
そう言って、通信を終わらせるセイル。
体の向きを変え、シートに座っていたルフェスの方を向く。
「と、言うわけだ。テレスを見てくる。」
「セイル。」
ルフェスがセイルを呼び止めた。
「月での戦い・・レボリューションの調子はどうだった?」
「あぁ、問題はなかった。イーヴィル・ストライクも俺の言う事を聞くし、出力の問題もない。」
「そうか。」
セイルは司令室を後にした。

〜MB−FR 第5格納庫〜
セイルは第5格納庫の扉を開けた。
目の前には、白い戦艦があった。
セイルは艦内に入り、ブリッジを目指す。

〜テレス ブリッジ〜
「どうだ?大体の事は覚えたか?女艦長。」
「あっ、はい。大体の事は。それから、女艦長って言うの止めてくれます?」
女性艦長は笑いながら言った。
「分かった分かった。先ほど、ランドから通信があった。・・・かならず帰ってくる、と言っていた。」
女性は黙ってしまう。
しかし、直ぐ口を開いた。
「私は信じてます。ランドは、かならず帰ってくるって・・・だから、私は大丈夫。」
セイルは笑みを浮かべる。
「その、心の強さがあれば、艦長としてやっていけそうだな。・・アルミー・グン。」
アルミーは笑って見せた。

〜キャルセツルメント〜
「本当に、一人で大丈夫か?」
ドスの艦長、ズエン・フォンがMSのチェックをしていたランドに訊く。
「大丈夫。僕がドスに帰艦したら、後は事前に知らせておいた通りしてもらえば、良いですから。」
「分かった。死ぬんじゃないぞ。情報によれば、例の部隊・・・エースパイロットの集まりなんだからな。」
「それは、お互い様さ。」
ランドはバイザーを下げる。機体の足をカタパルトに接続する。
「ランド・セブ!エボリューション!出る!」
エボリューションは中へと通じるハッチを開ける。
しばらく進んでから、地上へと降りる。
ランドは目を瞑る。
「システム、何か感じる?」
『うん。段々と近づいてくる・・・その中に、極一部だけど、憎悪、欲望、悲しみ・・・感じられる』
ランドはシステムとのシンクロを始めたのだ。
「憎悪、欲望、悲しみか。」
『でも、何か・・・懐かしい感じもする。』
「懐かしい?」
次の瞬間、外で大きな音がしたのが分かった。
戦闘が始まったのだ。
だが、ランドはその事に動じはせず、システムとのシンクロを続けていた。
『今、こっちに向かってくる相手の1人から・・・懐かしい感じ・・・』

それから、10分後ランドは目を開いた。
「来た。」
呟くランド。
レーダーに反応が出た。3機が接近している。
セツルメント内はシステム系統の異常から、ガスが掛かっていた。当然、視界は失われ、MSの発見はレーダーだけが頼りだ。
「敵の位置・・そこか!」
ランドは直感を頼りにバックパックに備えられたミサイルランチャーと、ビームライフルを放った。
敵が居る方角はレーダーで分かるが、位置までは特定できない。だから、当たる確立が高い広範囲に広がるミサイルを発射したのだ。ライフルはおまけ感覚である。
「・・・・当たらなかった・・・。」
レーダーを見ても、敵が負傷したとは思えない。
『ランド!敵の1機が、基地の方に向かった。・・・速い。ステルス?』
「敵は罠に掛かった。・・よし、前方の敵に集中する。」
ランドは目を瞑る。
「システム!ステルス発動!!」
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