第六話 「戦いの理由」 〜ユニバーセツルメント〜 1機の民間シャトルがセツルメントの港に止まった。 そのシャトルから1組の家族が出てきた。 「地図持って来たよね?」 夫らしき人物が言う。 「このとおりよ。あ〜よしよし。」 妻の方は地図を夫に渡すと、赤ちゃんをあやし始めた。 〜10分後〜 その家族はとあるレストランの目の前に立っていた。 ドアの前には、人の行列が出来ていて、当分は入れそうも無い状態だ。 その家族はため息1つもつくことなく、行列の最後尾に並んだ。 待ち続け、およそ40分ぐらい経った頃だった。 レストランの店員から呼ばれ、店内に入ることが出来た。 中に入ると熱気と美味しそうな匂いが食欲をそそらせた。 その家族はテーブルに座る。 「ご注文はお決まり次第、そちらのブザーを押し、お知らせください。」 店員が水を出し、手前に置いてあるブザーを指す。 「・・・メイスさん。お元気?」 妻はその店員に言った。 「えっ!・・ハーニアさん?」 メイスと呼ばれた店員は驚きを隠せないでいる。 となりの夫も口を開いた。 「お久しぶりです。メイスさん。」 「おなたは・・・アレンさん。・・・お久しぶりです。」 メイスは笑顔で接した。 店のドアには「本日の営業は終了しました」という言葉が電光掲示板に映っていた。 辺りはすでに真っ暗だった。セツルメントの気温温度装置が5℃を指していた。 レストランの裏にメイスが住んでいる家が建っていた。 メイスと2人は応接室に入る。 メイスはコーヒーを入れたマグカップをアレンとハーニアに差し出した。 赤ちゃんは熟睡状態だ。 「婚約していたなんて・・・知らなかったわ。教えてくれれば、式場に行ったのに。」 メイスがソファーに座る。 アレンの話では、婚約してから2年が経ち、アレンは建設工業を営んでいると言う。 そこに、2人の人物が部屋に入ってきた。 「グ・・グローバーさん!」 アレンが驚いた用に言う。 目の前に居るのは、かつてのブレイジング隊の艦長を務めたグローバー・ギアとそのグローバーと再婚したミニン・ギア(旧姓 トール)だ。 「よく来たな。アレン。それと艦長と言うのは、止めてくれ。」 「はっ・・はい!」 アレンはグローバーが微笑み言うのにも関わらず、肩身を狭くしていた。 「そんなに硬くなるな。何か用でも?」 グローバーが訊くと、アレンとハーニアは目の色を変えた。 「メイスさん・・・セイルさんは?」 ハーニアがメイスに訊く。 それ以降、グローバー、ミニン、メイスの表情が薄暗くなる。 「フェダールの宣戦布告の会見の時・・・居たのは、セイルさんですよね?」 未だに、メイス達は口を開く様はない。 「俺たちは、それを確かめに来ました。」 その後、点いていたテレビから緊急速報の番組が始まった。 全員がそちらに目を通す。 アナウンサーが文を読み上げる。 「緊急速報です。今現在、RTS(リアルタイムステーション)からの情報によりますと、地球議会軍の宇宙前線基地の月基地が再びフェダールからの攻撃がされている模様です。フェダールの戦力は以前の戦いの時の戦力の倍以上はあると見えます。これにより、この番組は予定していた内容を変更して特別番組として放送致します。」 アナウンサーの声が部屋に響いた。 「また・・月基地が攻撃されている・・」 ハーニアが目を見開き呟く。驚きを隠せないようだ。 「そうだ。」 グローバーが突然口を開いた。 アレン達はグローバーの方を向く。 「セイルはフェダールに参加している。会見の時に金髪の男が居たが、あれもセイルだ。」 「どうして、フェダールに?」 アレンは訊いた。 「こちらに来なさい。」 グローバーの誘導の元、アレン達は応接室を後にした。 アレン達が入ったのは子供部屋だった。目の前には、誰かが写った写真があった。隣には、花の入った花瓶が置いてある。 写真の人物は男の子のようだ。 「この子は・・・孫のブレイヴ・ギアだ。」 グローバーが呟いた。 「お亡くなりに?」 ハーニアが言うと、メイスが口を開いた。 「・・・5年前の、チャリンズセツルメント崩壊事件・・・知ってるわよね?」 「ま・・まさか!!」 アレンが呟く。 メイス達が言うには、ブレイヴ・ギアはチャリンズの崩壊に巻き込まれて死んだという。 当時、ブレイヴはスクールの宿泊学習でチャリンズを訪れていたのだった。 「じゃあ、どうしてセイルさんはチャリンズを崩壊させたフェダールに!?」 ハーニアが目を見開いて訊く。 ハーニアが訊くのも無理はない。 議会軍はセツルメント崩壊後の会見でテロリストが崩壊させたと言い、その4年後、当時の議会軍前線基地アースセツルメントを壊滅させ、そのグループはFW・R(フェダール)と名乗り、戦争が始まったのだ。 議会軍の会見の言葉を信じている人間は多い。 それまで黙っていたミニンが口を開いた。 「チャリンズの崩壊事件・・・一般的には、フェダールが崩壊させたって事になっている。でもね、問題が1つあるのよ。」 ミニンが眼鏡を光らせる。 「崩壊の原因となった、核5つ分の爆発の元は・・・議会軍の新兵器開発工場なのよ。これは、一般的には公開されてはいない事実よ。」 ミニンの発言で、アレンとハーニアは驚きを隠せないでいる。 「それで・・・」 ミニンはメイスに目をやる。 メイスは外を見て、胸の前で両手を握り祈った。 メイスの頭の中はある出来事を思い返していた。 4年前、セイルがユニバーセツルメントを出て行くときの事である。 「本当に行くの?」 「・・・あぁ。」 メイスが息子の顔写真を棚に置く。 「かならず、帰ってきてね。」 メイスは笑顔でセイルを見送った。 メイスは目を開ける。 (本当は・・行かないでほしかった。自ら、辛い状況まで追い込んでも、議会軍を許せないの?セイル) 〜月基地〜 フェダールが月基地を攻撃してから、30分が経過しようとしていた。 「セイルさん、補給完了しました。」 整備員がセイルに言う。 セイルはヘルメットを被り、手を挙げ返事をする。 シートに座り、コンソール画面を起動させる。 「・・・さて、行くか。」 セイルはMSの両足をカタパルトに接続しようとしていた。 |
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