第九話 「明かされる真実」


月基地での戦闘が終了し、フェダールの艦隊はMB−FRに帰艦した。
モロキはパイロットスーツを着たまま、セイルとモロキに誘導されながら、MB−FRの司令室へと入る。
目の前には、ルフェスが立っていた。
「紹介する。こちらが、フェダールを創り上げ、最高責任者である、ルフェス・リグだ。」
セイルがルフェスを紹介する。
「ようこそ、モロキ・グレン。君の話は、セイルから聞いていた。」
モロキは少し頭を下げただけで黙っていた。
「セイル、ランド。モロキ・グレンにMB−FR内の事を紹介させろ。彼には、知ってもらわなければならない事が、山ほどあるからな。」

セイル、ランド、モロキの3人はMB−FR内をモロキに教える形で巡回していた。
「まず、このフェダールというグループ名の由来を教えておこう。FW・R・・・Final Winner Revolutions、その頭文字をとって、F(エフ)W(ダブリュー)R(アール)、フェダールだ。」
セイルが淡々と喋る。
「最後の勝者は、革命の者たち・・・か。」
モロキが口を開いた言葉はそれだった。
続いてセイルと、ランドが入ったのは、MS格納庫だ。
そこには、作業員や、MSパイロット達が、慌しく、機体を整備したり、システムチェックをしていた。
「あれが、フェダールの量産型MSのエクス・・・」
「おい。」
セイルがMSの事を紹介していると、モロキが口を開いた。
「率直に言わせて貰う。真実を教えろ。その為に、俺はここに来た。」
セイルが目を瞑る。
「・・・良いだろう、お前にも、真実を話してやる。」


セイルは自分の部屋にランド、モロキを入れた。
「まず、フェダールが生まれる要因となったのは、チャリンズセツルメントの崩壊事件だ。その後、議会軍は、テロリストによる犯行として処理、一般人に対し会見した。これが、表向きの出来事だ。」
セイルが椅子に座り、モロキ、ランドも座る。
「だが、お前は、さっきの戦闘で、セツルメントを崩壊させたのは、フェダールではないと言ったな?」
モロキが訊く。
「あぁ。違う。1つ、ヒントをやろう。・・・チャリンズの核5個分の爆発、爆破元を調べてみると、チャリンズに設けられた、議会軍の新兵器開発工場だった。だが、新兵器とは核を使った開発。つまり、その工場は核実験施設だ。さぁ、お前なりの答えは?」
「・・・・・」
モロキは腕を組み、考える。
2,3分経つと、モロキが口を開いた。
「・・・議会軍の核実験の・・・失敗。」
モロキが言いにくそうに言う。
「正解だ。」
セイルの正解という言葉がモロキに冷たく聞こえた。
セイルが言うのは、こうだ。

議会軍は、チャリンズセツルメントに新兵器開発工場を設けた。尚、新兵器とは大量の核を使った、核実験の事だ。核実験と聞きつけ、今後現れるかもしれない、議会軍に反発する組織に嗅ぎ付けられない為、わざわざ観光名所のセツルメントに設ける必要があったのだ。だが、議会軍の核実験は失敗、核は暴発・・・・あとは、知られている事件内容と同じである。
そして、議会軍は、一般人の怒りを軍に向けされる事を恐れ、架空のテロリスト達を会見で上げた。議会軍の思惑どうり、一般人は、テロリスト達が居ると認識し始めた。だが、それから4年間、何も起こらなかったのは、初めからテロリスト達など居なかったからだ。先程も言ったが、議会軍の言う、テロリスト達などは、議会軍が勝ってに作り出した架空のグループで、最初から居なかったのである。
その4年間の間、ルフェスは同士を集め、フェダールを極秘に創りあげていたのだ。そして、フェダールは議会軍反発への意思を込めて、あえてテロリストの汚名を被る必要があったのだ。当然、一般人はテロリストに反発していたが、序所にフェダールに集まっていく一般人、真実を知るものが増えてきたのだ。そこに、真実を知ったセイル、ランド、アルミーの3人が参加しているのだ。ちなみに、フェダールの大半のMSパイロットは一般人だ。フェダールが存在できるのは、ほとんど、民間の資金と、ルフェスの莫大な資金から成り立っている。
議会軍や、セツルメント統合軍から抜け出した兵は極僅かしか居ない。それも当然だ。一般の兵士が真実を知る術はなく、上からの命令で戦っているだけなのだから。

「以上だ。」
セイルが喋るのを止めた。
「・・・・・そうだったのか。」
モロキの目線が下へと下がる。
「だが、どうしてお前が?・・いくら、チャリンズセツルメントが崩壊したからと言って、フェダールに参加する理由が無いだろ?」
モロキはセイルに訊いた。それもそうだ。セイルには、議会軍を許せないのは分かるが、家庭もあり、自らの幸せをワザと無駄にする行為がモロキには分からなかった。
すると、セイルは黙り込んでしまう。
しばらく、沈黙が流れる。ランドも静かに2人の姿を見ているしかなかった。それは、セイルがフェダールに参加して理由を知ってるからこそである。
「・・・俺の息子は・・ジュニアスクールの旅行でチャリンズセツルメントに居た。」
セイルが遂に口を開いた。
「何!?まさか、お前の子供は・・・」
モロキが目を見開く。
「そう。チャリンズの爆発に巻き込まれ、死んだ。」
モロキは月での戦いで、セイルの言葉を思い出した。


「馬鹿を言うな!!俺の息子・・・ブレイヴ・ギアは死んだ!!貴様ら、議会軍に殺された!!」


「だから・・・か。」
モロキが呟き、また沈黙が続く。
モロキがある事を思い出した。
「おい!フォーラン艦長が言っていた、シャドウがお前の息子だって!」
そう、月での戦いで、セイルとフォーランは意味深な言葉を交わし、セイルとフォーランは因縁な関係にあるようだった。
「シャドウ?それが、黒いガンダムのパイロットの名か。フルネームと歳は?」
セイルが訊き返す。
「シャドウ・ネィム、15歳だ。」
モロキが言う。
(影の名前?15歳か・・・。息子が生きていたのならば、15歳になっている・・・。もしかしたら・・・いや!そんな馬鹿な話が・・・。)
セイルは考え込むが、中々結論に達しない。
「それと、お前、フォーラン艦長と何か因縁でもあるのかよ?」
モロキが更に訊く。
「・・・あぁ、フォーラン・アーズ。奴は、息子の通う学校の校長だった。だが、セツルメント崩壊後、奴だけが生き延びていた。怪我も無しにな。そこで、俺は、フォーランの事を徹底的に調べた結果、爆発元の研究所を取り持っていたのは、有名なアーズ研究所で、フォーランが所長を務める、研究所だった。爆発前にも、フォーランは生徒達の前から姿を消していた。と言う事は、奴は、研究員から脱出しろと言われたのだろうな。研究員は一般人には通報をせず、自分達だけが逃げ出した・・・。それから5年、フォーランは、お前が居た部隊の艦の艦長になっているとはな・・・。」
セイルが冷静に言う。
(そうか・・・だから、俺は、フォーラン艦長と初めて会ったとき・・・・アーズと、何処かで聞いたことがあったが・・・まさか、あの有名なアーズ研究所の所長か・・・。)
モロキは自分が何故気づかなかったのかに、苛立っていた。
「・・・あと、ルフェスって人・・なんで、フェダールを創り上げたんだ?彼の戦う理由は?」
モロキが再び訊く。
「その事については、後に教える。1つ言える事は、彼にも議会軍を恨む理由がある・・・それだけだ。」
セイルの言葉から、ルフェスは勿論、フェダールに参加している人達は、それ相当の議会軍を恨む理由があるのだと、モロキは改めて認識した。
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