最終話 「今やるべき事=それは未来の為に」


セイルは1人、自室の椅子に座り、考え事をしている。
(もしも・・・本当にあのMSのパイロット手がブレイヴなら・・・今度は、確かめねばならんな・・・!!)
セイルは立ち上がり、自室を後にした。

「俺も、読んだよ。人類進化論を・・・な。」
モロキが口を開き、ランド向けて話した言葉はそれだった。
ランドとモロキはセイルの自室を後にし、通路を流れていた。
「あぁ。ありがとうごさいます。良ければ、感想を聞きたいですね。」
モロキは前方を見る。
「・・・未来を見る目を失ってはいけない。と、同時にその未来を信じることが大事である。その為にも、戦争は不必要である。人類の進化を急がせるような行為は、逆に憎しみを生み、只、人類を退化させているだけに過ぎない・・・。さすがの俺でも分かる気がするよ。ランドやセイルみたいなニュータイプでない俺でもな。」
その答えにランドは笑みを浮かべる。
「私は、ニュータイプだとは思ってませんよ。それに、人にニュータイプって肩書きを付けるのも、その人を縛る様な感じがして、嫌なんですよ。・・・かつて、セイルさんは私にこう言いました。」

『君には、ニュータイプの素質がある』
『君は、新たなる人類の1人かもしれない』

「そもそも、こういう考えがいけないんだと思います。・・・勿論、今のセイルさんだって、私と同じ考えですよ。自分をニュータイプだとは思っていませんし、次の世代を導くのは、人1人1人なんだって言う事が。」
ランドの言い分を黙って聞いていたモロキが口を開く。
「・・・だが、それはジング・シグマの考えに反対するって事だよな?」
「・・えぇ。でも、ジング・シグマを拒絶している訳ではないです。只、今は、あの戦争を過去と捉えることが出来るでしょう?過去は過去の考え。今は今の考えですよ。いつまでも、変わらぬ考えでは、人類は次の段階に進めはしませんよ。」
ランドは立ち止まった。モロキ用の自室の前に来たのだ。モロキも立ち止まる。
ランドは、カードキーでモロキの自室の鍵を開けた。
「ランド。俺は思う。今のお前の行動と、人類進化論の言い分、矛盾があるぞ。」
ランドがモロキの方を向く。
「確かに、矛盾しているのは、自分が一番良く分かっています。戦争は不必要。でも、私は現に戦争をしている。かつての、ジング・シグマ等が達成しようとした、議会軍の壊滅を私は実行しようとしている。それが、人類の進化の妨げになっているのは分かっています。」
「なら、何故!?お前は、フェダールに!?」
「この戦いは、人類の進化の為ではないんですよ。・・・未来を見ることも大事です。けど、現時点で、やれることをしようと思ったんですよ。未来と、皆の明日の為に。」

〜MB−FR内 司令室〜
「・・・そうか。遂に見つかってしまったか。」
ルフェスは何者かと通信をしている。
「半年バレなかっただけでも、奇跡としか言いようがないわね。」
声から通信をしている相手は女性として受け取れる。
「これで、君もフェダールへの協力者として、セツルメント統合軍から追われる立場になってしまったな。」
「・・・何れ、この日が来るのは、最初から分かっていたわ。半年の間、ここの工場で働いてる人たちは全員、フェダールの支持者に変えちゃったし。・・・それと、さっき入った情報によると議会軍の全艦隊が小惑星のエンデバルに集合している事が分かったわ。どうやら、セツルメント統合軍の方は、月基地での、フェダールの力に恐れ、そんなに艦隊を出してはいないようだけど。・・・どうするの?」
女性は深刻な顔で訊いた。
「全艦隊?議会軍め・・・、やってくれるな。・・・と言う事は、議会軍の本部、ハワイ諸島の警備はどうなっている?」
「まぁ、全艦隊だから、ハワイ諸島の警備は無に等しいでしょうねぇ。」
ルフェスが黙り、しばらく考え込む。
(・・・ならば、敵の本部を攻撃するチャンスだな。全艦隊を突破できないと思っているな、議会軍は。)
「ルフェス?」
女性が訊く。
「これは、見方を変えれば、チャンスだ。敵の本部を直接叩く・・・な。」
女性は笑みを浮かべる。
「そう言うと思って、例の武器、完成させといたわ。後は、ランドさん次第ね。」
「ありがとう。キュア・アベーン。君としても、工場長としての役割も最後だろうがな。」
「現在のセツルメント統合軍や議会軍が生き続ければの話よ。近いうちに、ここの工場もセツルメント統合軍からの反逆者としての攻撃がくるだろうし。」
ルフェスが顔を下げる。
「・・・すまない。私が無理を言ってしまって、君や君の部下を反逆者にしてしまった・・・。」
「私と貴方の中じゃない。とりあえず、必要な物資をMB-FRに積み込んだ後、現在位置から移動した方が良いんじゃない?」
「いや、MB-FRは現状維持する。ここで移動しても議会軍からの攻撃は止む終えない。それに今後の作戦にも影響が出る。結果的にはナンセンスだ。それと、君たちもMB-FRに移動してくれ。そこの工場は破棄しよう。」
「分かったわ。急ピッチでそちらへの移動を開始させるわ。ありがとうルフェス。」
「フッ・・・。ではまた。」
ルフェスは通信を終わらせた。
すると、司令室にセイルとランドが入ってきた。その後ろには、モロキの姿をある。
「ルフェス、話はドアの向こうで聞かせてもらった。」
セイルが言う。
「そうか。・・・議会軍は、全戦力を用いて、小惑星エンデバルに集合している。」
モロキが眉を細める。
「セツルメント統合軍の艦隊は、月基地での、我々の力に恐れ、全戦力の半数しか、導入されてないらしい。・・・セイル、ランド、そしてモロキ。最後の戦い・・・力を貸してくれるな?」
セイルとランドは頷く。
「・・・この戦力で、勝ち目はないぞ?物量の差が激しすぎる!!」
モロキは反論した。
「我々の、目的は議会軍の壊滅だ。直接、本部を叩けば、この戦いを終わらせる事ができるさ。その為の作戦も準備してある。」
モロキの問いに冷静に言うルフェス。
その言葉からルフェスの自信が感じ取られた。
「・・・作戦?」
モロキが訊く。
「あぁ。人1人、欠けてはならない作戦だ。頼む、モロキ。君の力を貸してくれ。」
ルフェスが頭を下げる。
「・・・現在の、地球議会軍の状態と思惑は大体、理解はできた。俺は、それを許すような人間じゃない。」
セイルとランドが笑みを浮かべる。
「協力させてもらう。ルフェス。」
モロキは、笑みを浮かべながら言った。
「ありがとう。モロキ・グレン。」
ルフェスとモロキは握手を交わす。
セイルは笑みを浮かべ司令室を後にする。
「セイル・・・?」
ランドはモロキの表情を伺い笑みを浮かべ、
「きっと、嬉しいんですよ。セイルさんは。また、モロキさんと共に戦えて。」
「どうだか・・・。」
モロキは冗談で言った。

議会軍との最終決戦の日は、すぐそばまで来ていた。
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