第一話 「迫り来る時」


〜小惑星 エンデバル〜
「ようやく、地球から全艦隊が出発しましたな。まぁ、セツルメント統合軍の方は、怖気づいたようですが・・・。」
フォーランが報告書を見ながら男に話している。
「先程、セツルメント統合軍の方から話が来た。月基地が制圧された事を期にセツルメント統合軍による軍事的な議会軍への協力はしない・・・との事だ。」
それを聞いたフォーランは眉を細める。
「それはどういった理由で?」
男がため息をつく。
「あくまで、フェダールが敵対視しているのは議会軍だけだ。フェダールは議会軍、及び議会軍に協力する全ての組織を破壊する。セツルメント統合軍は議会軍に協力している。だから、フェダールもセツルメント統合軍に敵対の意思を示してしている。」
「これ以上、セツルメント側に犠牲は払えない・・・と言う事ですか。だから先程エンデバルに到着した小規模のセツルメント統合軍の艦隊は呼び戻されたと。」
「ふん!セツルメント側が居なくとも、地球の全艦隊に掛かれば、テロリスト共などすぐに鎮圧できるだろうよ。」
フォーランが口を開く。
「しかし、フェダールも無茶な事をしますな。フェダールの少ない物量で議会軍を壊滅させると言うのですから・・・」
「あぁ、戦争の勝敗は物量の差で決まるのがほとんどだ。かつてのシグマ同様にな。所詮はフェダールもシグマと同じだよ。自分たちは進化を唱えながらも、負けていった。フェダールは世直しがしたいだけだがな。」
ピピピ!
フォーランが腕に着けている呼び出し音が鳴った。
「申し訳ないのですが、私はこれで。」
「分かった。シャドウの件だな?」
「はい。また強化をせねばなりません。今度のMSに乗るには、今まで以上の肉体と精神の強化が必要ですからな。」
部屋を後にしようとするフォーラン。
「フォーラン。ムーヴの方はどうなんだ?」
「順調に進んでますよ。ご心配なく。」
そう言ってフォーランは微笑みながら部屋を後にした。
すると同時に、男に対しての通信が入った。
「ドルバック大将、地球のイースター将軍から通信です。」
通信から分かるように、今までフォーランに指示をしていたのは、地球議会軍宇宙艦隊司令官のドルバック・アンド大将なのだ。
「分かった、回せ。」
大型の画面に地球議会軍の総司令官及び将軍のイースター将軍が映し出された。
「久しぶりだな。ドルバック大将。・・・私は本当にフェダールを倒すのに、全艦隊は必要なのか、疑問なのだが?」
「地球に居座っている貴方方には理解に苦しむかと思いますが、宇宙での戦いはほぼフェダールに負けています。そして、月基地が落ちた。このまま宇宙艦隊が戦っても全滅しかねません。そこで議会軍の総力を決すけばフェダールは倒せます。」
ドルバックの発言からイースター将軍は侮辱されている事に気づいた。
「・・・そうか。では早急にエンデバルに向かうとしよう。敗戦の連続でフェダールに対する対応策もあるんだろうからな。」
そう言ってイースターは通信を切った。
「・・・クズが!!」
ドルバックは机を叩く。

〜エンデバル 第7格納庫〜
ここにはディスターブ隊の旗艦ライグランズが収容されていた。

ライグランズ内の通路を流れていたカナン。
(本当に私はこれで良かったのかな?あの時、モロキ大佐に笑顔で答えたけれども。でも、このまま増長した議会軍に居させるのなら、フェダールに行って真実を知って欲しかった。)
カナンが足を止める。
(兄さんなら、何とかしてくれる。この世を。議会軍を。ルフェス兄さんなら。きっと・・・)
「カナンさん!」
カナンを呼ぶ声が聞こえた。
レイルだった。
「レイルさん・・・」
「シャドウ少尉・・・見ませんでした?」
「シャドウ少尉?見てないけれど。どうかしたの?」
「いえ、さっきから姿を見ないもので・・・」
カナンは微笑む。
「きっと、エンデバルの中を見てるんでしょう。ここ広いから。」
「そうだと良いですけどね・・・。」
レイルも笑って見せた。
「カナンさん・・・私も!今度の議会軍の作戦には賛成しかねます。」
「そう。でも私達は議会軍の為に戦わなくてはならない。上からの命令なら従うしかないわ。」
「でも!今度の作戦にはおかしい部分がありすぎます!幾ら月基地があの戦力で陥落したとは言え、地球から全戦力を率いる事もないのに・・・・」
カナンが下に俯く。
「そこまでして・・・フェダールを倒したい理由があるとか?」
レイルの言葉を聞いてカナンは目を見開く。
(やはり、レイルさんにも真実を知ってもらった方が良さそうね・・・。)
「レイルさん・・・話があるの。」


〜研究室〜
「フォーランさん、これでディストラクションのGに対応できます。」
研究員がフォーランに言う。
「よくやった。あとはこちらでディストラクションに慣れさせる。」
「分かりました。しかし今は昏睡状態にあります。あと半日もすれば目をさますかと。」
シャドウはベットで大量の汗を流しながら昏睡状態で居た。
「よし、これで完全に記憶の混乱が起きる事はないな。」
「そのつもりです。」
「そのつもりでは困るのだよ。フフ、まぁ良い。目を覚ましたら直ぐに私を呼べ。」
「はい。」
フォーランはその後、研究室を出た後、エンデバルの第19格納庫の目の前に立っていた。
ドアの横にはカードーキーらしき機械がある。
フォーランは胸元のポケットからカードを出し、縦に滑らせた。
機械のシグナルが赤から青に変わりドアが開く。
目の前には大型のMAらしき影があった。
それを見たフォーランは不敵な笑みを浮かべている。
「宇宙を動かすのは、ドルバックでもなければフェダールでもない・・・私が動かすのだ・・・フフフ、ハハハハハハハ!!」
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