第二話 「進む時間」


─小惑星MB−FR 司令室
司令室にはルフェス・セイル・モロキ・ランドの姿がある。
「─議会軍の艦隊に動きがあった事は以前にも知らせたとおりだ。…それと知らせがもう1つある。」
ルフェスがモニターを見ながら後ろに居る3人に話している。
既にセイル達は議会軍が総力を決して挑んでくるという事実を知らされていた。
「もう1つ?」
モロキが呟く。
「セツルメント統合軍による議会軍への軍事的協力が辞められた事だな。」
セイルが言う。
ルフェスが頷く。
「どういう事だ!?セツルメント統合軍が軍事的協力を辞めれば議会軍の完全復旧が…」
「議会軍の復旧など、とうの昔に終わっている。やるべき被害地の復旧そっちのけでお偉いさん達はバカンスを送る日々さ。」
セイルがそう言い放つ。
「俺は…そんな事聞いてないぞ。」
「言われるはずが無い。例え歴戦の勇者と呼ばれても、一兵士でしかない。」
セイルは更に言い放ち、モロキは唇を噛む。
「と、とにかく!これで私達の敵は議会軍のみと言う事になりましたね。」
慌ててランドが場の空気を変えようとした。
ルフェスが振り向く。
「だが、議会軍の全戦力と戦わなければならない事には変わりは無い。」
するとセイルが口を開く。
「先程得た情報だが、エンデバルが移動を開始したらしい。おそらく、議会軍の艦隊との合流ポイントA741に来ると予測される。」
「A741…?議会軍の艦隊が大気圏を離脱したら直ぐのポイントじゃないか。」
モロキが言う。
「…我々はそこを打つ。」
ルフェスが言う。
「…と言う事は、地球に向いて戦うわけですね。」
ランドが言うとルフェスが頷く。
「そしてMB−FRを月の正面に配置。占拠した月基地も拠点として使う。今度の戦いは本格的な物量戦に入る。」
「前にも言ったが、物量では敵わないぞルフェス。いくら俺たちが戦っても、物量の差を跳ね除けられる訳がない。」
モロキが口を挟んだ。
「…今回の作戦では、敵から無数の蜂が出てくることだろう。だが、今度の戦いでは女王蜂を潰す。」
「─何!?女王蜂……。まさかっ!!」
モロキが息を呑む。
「そうだ。議会軍本部を直接叩き、敵の指揮系統を完全に破壊する。」
「できるのか?そんな事が?」
モロキが訊く。
「あぁ、可能だ。その事については後のブリーフィングで明らかになる。それとセイル、この後は第7格納庫へ行ってくれ。例のテストを始める。」
「…了解だ。」
そう言ってセイルは司令室を後にする。そしてそれを追うようにモロキも司令室を出た。
「ルフェスさん。さっきの作戦の事ですが、その作戦を可能にする武器は開発できたんですか?」
その場に残っていたランドが訊く。
「あぁ。実験データを見る限りでは、ほぼ完成した。あとは君の腕次第だ。」

─5分後
セイルとモロキが並びながら通路を流れている。
するとモロキが口を開いた。
「今度の戦い……死ぬだろうな。俺たち。」
「…そうだな。だが俺は死んででも議会軍を潰す。」
「…お前!息子は生きてるんだろ!?シャドウがお前の息子じゃないのか?」
モロキが止まる。
するとセイルも立ち止まる。
「…現段階では何も言いようが無い。次の戦いでそれを判断する。」
「確かに、そうだが。それともう1つ……。どうして……武力で解決する?武力でしか解決できなかった問題か?この戦いは!」
セイルがモロキの方向に向く。
「……話し合いで終わる問題だったら、とっくにそうしている。そして、この問題は武力でしか解決できない所まで来てしまっていたんだ。」
「いいか?良く聞け。今の議会軍の狙いは平たく言えば、宇宙全域の支配だ。」
モロキが目を見開く。
「なんだと?そんな大昔でやった事をまたやろうとしているのか!?」
セイルが頷く。
「15年前…議会軍艦隊の一時的な壊滅に上層部は、他勢力からの進攻を恐れた。しかし一番進攻してくる確立が高かった各セツルメントは同盟を組み、今のセツルメント統合軍が作られ、議会軍への協力を始めた。まずこれがいけなかった。議会軍の上層部はセツルメント側が敵対行動をしてこない事から、議会軍とセツルメント側との上下関係が自然に生まれ、いつの間にか、復旧して行くにつれ、議会軍の方がセツルメント側をうまく使うようになってしまっていた。それに過去の戦争に2回も勝っているのだから増長しても可笑しくは無い。そして念には念を入れ、議会軍の上層部は新兵器開発の為の施設を作った。他の勢力から悟られないために普段は観光客で賑わう観光セツルメントに設けてな。たが、最初の実験は失敗……そして何十万人の命が消えた。」
モロキは開いた口が塞がらなかった。それはモロキの怒りを買い、対議会軍への意思をより強くしてしまったからだ。
そしてセイルは浮いたままT字廊下の壁にぶつかった。
「俺は第7格納庫へ行く。モロキ、お前は第2格納庫へ行ってくれ。」
そう言ってセイルは右に曲がっていった。
「第2格納庫に?………なんだ?」
モロキは左へと曲がり第2格納庫を目指した。


─MB−FR 第7MS格納庫
セイルはレボリューションの前に立つ。横では大型のサーベルのようなものが開発されていた。
(今の俺を見たら……ジング、お前は俺をどう見る?)
セイルは床を蹴り、レボリューションのコックピットハッチを開け、シートに座る。そして目を瞑り一呼吸置いてゆっくりと目を開け、機体の電源を入れていく。
「──セイル・ギアだ。これより新武装のテストに入る。」
「了解。整備班は、直ちにレボリューションのトルースプランに沿った武装への換装を開始せよ。繰り返す…」

─MB−FR 第2MS格納庫
モロキは立ち止まり、第2格納庫に入る為のドアが開いた。
「おぃ!こいつは…!!」
モロキの視線の先には、スパイルが改造を施された形態になっていた。見ると、右腕にレボリューションとエボリューションが搭載しているビームチャクラムと、両腰部にメガビームキャノン、そしてバックパックには以前搭載されていた、ハイメガビームバスターとメガビームバズーカの部分にエボリューションも搭載しているツインビームランチャー、両足にミサイルランチャーが付けられていた。
モロキはスパイルの前に立ち、近くの整備班に声を掛けた。
「おい!これはどういう…?」
「ルフェスさんからの命令で、スパイルに改造を施したものです。全体的火力の増加をしています。あと操縦系統、識別等のOS器具をフェダール用にしています。俗に言うカスタム化って奴ですね。」
「乗って見て良いか?」
「はい。あとはモロキさん用にチューンすれば、完成です。」
するとモロキは床を蹴り、コックピットに入った。
シートに座るモロキ。機体の主電源を入れていく。
「……凄いもんだ。全体的の機体能力が向上している。」


─MB−FR 宙域
MB−FRの宙域では、セイルがレボリューションの新武装のテストが行なわれていた。
「セイルさん。新武装についての説明は先程のマニュアルどおりです。」
整備員のキャリー・ブレイズが写った映像がモニターに出ている。
「あぁ。分かってる。」
「それでは、まず……ダブルビームサーベルのテストです。前方の鹵獲した敵人工知能搭載MSを破壊して下さい。その後にビームGソードのテストを始めます。」
「了解!」
セイルはスラスターを吹かしターゲットに迫っていく。
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