第四話 「FINAL WARS」


─ブリーフィングルーム
フェダールは来る議会軍艦隊との決戦に向け、全将兵を巨大なブリーフィングルームへと呼び寄せていた。

見た目はブリーフィングルームと言うよりも所々に照明が設けられており、演説をする為に設けられた部屋のように感じる。
続々と人々が入ってくる。その中に、セイルとモロキ、ランドやアルミーの姿も当然ある。そして、セツルメント統合軍でありながら、ルフェスに協力をしていた工場長のキュア・アベーン等、フェダール支持の技術者達もまた、居た。
遂にルフェス・リグがブリーフィングルームに姿を現すと、先程までのざわめきは消え、沈黙が起こった。
「では、これよりブリーフィングを始める。まず、皆に聞いてもらいたい。現状で議会軍はポイントA741に議会軍の全艦隊がこのMB−FRに攻め込もうと集結している。」
この発言で先程までの沈黙はざわめきに変わった。この事実を知っていたのはセイル等だけだったからだ。
(防衛ラインを引いた訳ではないか…?直接、あちら側から攻めてくるとは…。余程、この戦いの真実を悟られるのが怖いか…?)
そう思っていたセイルは再びモニターを見る。
「─そこで!まずは敵の意表を付く為に、メガドライブエンジンを使い、MB−FRをポイントD546まで移動させ、あちらの移動中に先手を打ち、1隻でも多く撃墜する。その後は、正面からの艦隊戦とMS戦で対応する。」
そこでモロキが質問をした。
「ルフェス。質問だ!それだけで終わらせる事はないな?」
つまりモロキが言いたいことは、以前司令室にてルフェスが言った言葉がある。

『今回の作戦では、敵から無数の蜂が出てくることだろう。だが、今度の戦いでは女王蜂を潰す。』

『議会軍本部を直接叩き、敵の指揮系統を完全に破壊する。』

『可能だ。その事については後のブリーフィングで明らかになる。』

そう、モロキはルフェスの秘策がずっと気になっていたのだ。
「無論だ。」
ルフェスは即答した。


ブリーフィングは終了し、各自持ち場で待機する事を言われて解散した。
廊下をセイル、ランド、モロキ、アルミーが流れている。
モロキが口を開いた。
「─ランド、アルミー。お前たち、出来るか?」
「やるしかありません。失敗したら、15年前の戦いも無駄になってしまいます。…争いは何も生まない。そう思ってました。でも、後世に伝えられる事はあるハズです、少なくとも…私はそうだった。」
ランドが言うのはジング・シグマの事だった。
「頼むぞ。ランド、アルミー。この勝敗、君たちに掛かっている。」
セイルがランドの肩に手を置く。
「はい。」
2人は返事をした。その声から迷いは無い。
するとセイルは通信室へと入っていく。それを見たモロキ等は直ぐにその場から去った。

セイルはボタンを押し、通信を行なった。その送り先は……


─レストラン ブレイジング
本日休業のレストランの後ろにグローバー宅がある。
家に通信が寄せられた、呼び出し音がなる。それに対応したのはメイスだった。

「通信が届いております。開きますか?」
と、言うアナウンスが流れたので、メイスは「はい」と答えた。相手側は、表記されなかった。メイスは不思議に思いながらも、モニターを見た。
その瞬間、メイスの瞳から涙が浮かんだ。
雑音が多いが、モニターに映っていたのはセイルの姿だった。そう、セイルは最終決戦の前にメイスと連絡をしておきたかったのだ。
「…久しぶり、メイス。」
先に口を開いたのはセイルだった。
「セイル…。どうして…?」
「もう直ぐ、議会軍との最終決戦が始まる。その前にお前と話したかったから。」
「……ありがとう。」


通信室を後にするセイル。そしてセイルは、レボリューションが待機してある第2MS格納庫へと入る。

─第2MS格納庫
近くの作業員がセイルに話しかけた。
「セイルさん。レボリューションのトルースモードの件ですが、既にテレスの方にパーツを移動させてあります。」

セイルの乗るレボリューションには、トルースモードと呼ばれるプランに沿った新武装がある。武装は2つあり、超巨大なビーム状の刃を繰り出すビーム・G・ソードと、ビームの刃を2つ繰り出す、ダブルビームサーベルがあり、格闘戦では無類の強さを誇る機体となる。
このプランを発案したのはセイル自身であり、何故、格闘用の武装を発案したのかは本人しか知らない事である。
しかし、レボリューションには新たに武装を取り付けられる部分は1つだけ、腰部分であり、マウントできる大きさと重量からしてダブルビームサーベルは取り付けられるが、ビーム・G・ソードが取り付けられない、という問題点が出てきた。だが、テレスからの射出、それをレボリューションが受け取ると言う形をとる事によって、問題は解決された。しかし、テレスの近くにいなければ、使うことはできないのである。

「そうか。分かった。」
そう返事をするとセイルは、コックピットに座り、機体の電源を入れていく。
回線をルフェスの居る、MB−FR司令室に繋いだ。
モニターにルフェスが現れる。
「どうした?セイル?」
「トルースプランの武器がテレスに運ばれた用だから、レボリューション自体をテレスに収容する。それで良いか?」
「あぁ、そうしてくれ。その方が、何かと都合が良いかもしれないからな。」


─第5格納庫
第5格納庫には、ロマードとアルジネスの姿があった。2人とも、ドスの第3番艦からの発進が言い渡されていた。
そこにキャリーとジェニファーが現れた。
「アルジネス!」
そう叫んだジェニファーがアルジネスに抱きつく。それを受け止めたアルジネス。
「私もドス3番艦のオペレーターに着任したの。」
「本当かい!?それは良かった!」
仲良く話しているアルジネスとジェニファーを装い、ロマードとキャリーはと言うと…
「私も、ドス3番艦のメカニックとして着任するから。ヨロシク。」
少しふてくされたような顔でロマードに言った。
「あぁ…そぅ…。」
呆気ない返事にキャリーはキレた。
「はぁ!?どうしてそんな返事しか出来ない訳!?アルジネス見たく、もっと気の利いた返事できないの!?」
「何ぃ!?じゃあ、ホントに!?すげー!やったじゃん!俺と同じじゃん!めちゃくちゃうれしい!、とでも言って欲しかったか?!」
いつもの口論が始まるのかと思っていたが、少し今回は違った。
「………うん。」
キャリーが何時にも無く素直だったからだ。その返事にロマードは動揺を隠し切れない。
「それって…」
「…まぁ、アンタのエクスセイバーの整備は私にしかできないだろうし、アンタの癖は私が良く知ってるからね…。死なれてもらっちゃマズイのよ…ロマードには。」
「…そうか…。んじゃあ、エクスセイバーの事はお前に任せる。俺は絶対、このドスを守る!約束だ、キャリー。」
「ちゃんと守ってよ。ロマード。」
そしてロマードとキャリーは口付けを交わした。その後方で、アルジネスとジェニファーが口付けをしている。


─第4格納庫
一方第4格納庫には、テレスにエボリューションを運んでいるランドと、同じくスパイルカスタムを運んでいるモロキが居た。
機体の収容を終了させ、コックピットから降りてくるモロキとランド。すると、レボリューションがMB−FR内にあるMS用の通路を通り、テレスに収容された。
するとセイルもコックピットから出てくる。
「いよいよ…ですね。」
ランドが言う。
「そうだな…真実を知った今、オレは議会軍を許すことはできないし、政府のやり方と達成しようと思ってることも気に食わない。」
モロキが言うがそれにセイルは反応した。
「例え、一時的とは言え、共に戦った戦友とも…か?」
「─!!」
モロキはディスターブ隊の仲間達の事を思い返していた。レイルの事、シャドウの事、フォーランの事、そして…カナンの事を。
「それは仕方ないだろ…。向こうだって裏切った俺を許しちゃくれないさ。」
「…俺も、息子の事もあるしな。今度こそ、俺自身が求めていた真実を、見極める必要がある…!」
「そうですね。私も、今やるべき事を精一杯やり遂げます。未来を信じた人々の為にも…。」


─そして、遂に作戦開始時刻になった。
MB−FRにはこの為に開発された惑星用大型メガドライブエンジンが装着され、各艦もメガドライブエンジンを装着し、発進体勢は整った。

メガドライブエンジンは従来のミノフスキードライブを戦艦用に大型化したもので、宇宙空間に存在するミノフスキー粒子を大量に吸収した後、高速移動が可能となる。その際、吸収したミノフスキー粒子を大量に放出する。その放射粒子が貴金属に付着すると溶けたり、破損したりと危険なので、一定距離を保たないといけないのだ。議会軍側は、これを『粒子に汚染される』と称している。
難易ワープの方法(高速移動)だが現在のポイントと向かう先のポイントを測り、それまでのルートの次元を歪め、その移動距離を短く短くして行くことで簡単な高速移動が可能となる。使用後は、再使用が可能ではあるが一定時間、冷却しなくてはいけない為、単発ものとして考えてよい。

ルフェスから各艦に通信が入る。
「では諸君!発進だ!!」

ルフェスの合図と共に、各艦のエンジンが始動し、ミノフスキー粒子がチャージされていく。


─地球宙域付近 ポイントA741
このポイントでは議会軍艦隊がMB−FRに向かおうと、発進体制に入っていた。

そして前方に一瞬にして現れた小惑星MB−FRとフェダール艦隊。この出現は相手の意表を付くことに成功し、先手はフェダールがとる事になった。
MB−FRの司令室から、各艦に命令が下る。
「各艦、一斉遠距離砲撃!!その後、MSは各機発進せよ!!」

─テレス MSデッキ
セイルがレボリューションのコックピットから、回線を繋ぎ、モニターにランドとモロキが映った。
「では、行くぞ。モロキ、ランド。」
「これで全てが終わりますね。私達の戦いも、過去の人たちの思いも…。」
「そうだな…。俺たちの戦いも最後にしたいもんだ…。」
すると、モロキへの発進合図が降りた。
「んじゃ!先に行くぜ!モロキ・グレン!スパイルカスタム!!出るぞ!!」
「続いて行きます!ランド・セブ!エボリューション行きます!!」
2体が同時に出撃すると、セイルも発進体制に移行する。
「セイル・ギアだ。レボリューション出る!!」
BACK     目次     NEXT