第七話 「混迷の戦場」


─小惑星MB−FR 最高司令室
セイル達がシャドウとの決着をつけたのと同時刻、MB−FRの最高司令室にルフェスの姿があった。
キーボードを打ちながら、オペレーターが現在の戦況を報告していた。
「ルフェス司令、現在、議会軍の戦艦数およそ112隻。こちらの戦艦数は65隻です。」
「─分かった。」
「やっぱり、物量の差が歴然としてるわね。いくら最初の攻撃が成功しても、こちらの全滅は確実よ?」
キュアが別室からの通信でルフェスに言う。
ルフェスはキュアの映っているモニターに目を通す。
「それは、最初から分かっていたことだ。だから、『例の作戦』はかならず成功させねばならない。」
「そうね…。ハッキングの準備は完了したわ。」
「そうか。分かった、直ぐに行く。」
ルフェスは体の向きを変えて、司令室を後にした。


(ブリーフィングルーム…我等の存在を世に問う…)


─ブリーフィングルーム
ドアが開き、中へと入るルフェス。すると既にキュアが大型コンピューターの前に座っていた。
ルフェスはブリーフィングにて立ったお立ち台のような所に再び立った。
「─キュア。放送枠は全チャンネルで頼む。」
「分かった。良いのね…?」
「あぁ。もしこの演説が成功すれば、今の戦況を少なからず覆せるはずだ。」
「そうね…。ハッキング完了!準備は出来たわ!良いわよ!」
するとルフェスは一歩前へ出る。


─地球議会軍艦隊
「ん?か…艦長!回線が強制的に…!!」
「何だ!?どうした!?モニターが?」
議会軍艦の艦長はモニターを目を通すと、見る見る映像が変わっていくのが分かった。
「─!!ルフェス・リグ!?」
モニターに映ったのはルフェスの姿だった。その姿を確認した議会軍艦の艦長が声を上げる。
「どういう事だ!?オペレーター!モニターを切り替えることは─!?」
「無理です!回線がハッキングされたあげく、これは全チャンネルで放送されています!」
「何のつもりだ!?」
今からルフェスのやろうとしている事は、全ての人が見ることになる。


「─地球議会軍、並びにこの放送を聞いている全ての人に告げる!我々はフェダール。そして私はフェダールの統治者、ルフェス・リグ。だが、私の本当の名はリグではない…。私の本当の名は、かつてのシグマ…その忘れ形見…ルフェス・シグマだ!」


「る…ルフェス・シグマ!?」
「シグマの忘れ形見だって?」
「まだシグマが生きていた!?」
「シグマって、あの!?」
「シグマって全滅したんじゃないのかよ!?」

議会軍兵士達は混乱していた。
それはモロキも同じだった。
「シグマだと!?セイル!本当か!?」
「…本当だ。彼の本当の名は、ルフェス・シグマ。シグマ家の最後の生き残りだ。」
ルフェスの正体を知っていたものは、セイルとランド、アルミー、キュアの4人だけだった。
(ルフェス…お前が本名を明かすまでの決意…。果たして、この結果が吉とでるか、凶とでるか……)
セイルは未だ尚、気を失ってサブシートに座っているブレイヴの姿を見続けていた。

「─我々は、議会軍の言う、セツルメント爆破を行なった悪質なテロリストなどではない!!それは皆さんの大きな勘違いだ!そもそも、我等が行なったと言う証拠すらない!確かに、反地球議会政府運動をしてはいるが、チャリンズセツルメント崩壊とは何も関係はない!それに事件当時、フェダールも存在すらしていないのだ!!」


─ライグランズ
この放送に、当然ライグランズのメンバーも聞いていた。
唖然とするクルーをよそにカナンだけは冷や汗をかいていた。
(…兄さん!)


「私達はセツルメント統合軍の内通によって、崩壊したチャリンズセツルメントの崩壊の原因を知ることができた!その原因…核爆弾5個分の爆発元はセツルメント内に極秘に設けられた、議会軍の新兵器開発工場…いや、核兵器実験施設だったのだ!そして施設が実験の失敗でセツルメントを崩壊まで至らせたのだ!しかし、議会軍と政府は、その原因を追究されるのが恐ろしくなり、架空のテロリストを棚に上げることで、崩壊の原因から逃れることが出来た!しかし、議会軍と政府の失敗は、それからの年月で何一つ、テロ行動が無く議会政府と軍が困惑していた時期があった!そこで、私は事故の原因が判明してから、密かに設立していたフェダールの存在を明かすことにしたのだ!」

─エンデバル 最高司令室
惑星エンデバルの最高司令室に居るドルバックは怒りを抑えきれないでいた。
「─くっ…!!ルフェス……シグマだと!?」


「そもそも、何故、このような事件が起きたか!遡る事…15年前、議会軍の壊滅により、政府は他勢力からの政治的・武力的な進行に恐れていた。しかし、一番の進行確立の高かった、シグマ残党軍が無に等しく、セツルメント側は過去の教訓を活かし、同盟を組み、今のセツルメント統合軍が生まれ、議会政府への復興作業の強力、政治的・武力的の資金面での援助を行なったのです。それは皆さんも承知の事と思う!だが、全ての原因はここにあった!この援助によって、軍は再編され、議会軍とその政府は過去の戦争の連勝から増長していった。そして、新兵器開発の為の工場を悟られぬよう、観光セツルメントに設けた!だが、実験の結果は何十万人の人の命が消えた…。」


エンデバルの司令室にある大型のモニターにイースター将軍が映し出された。
「ドルバック!!これは一体…!何故、奴等が真実を知っている!?」
「分かっている!!少々、そのお顔を見せないでくれるか!?」
「何だと!?─」
するとドルバックは通信を切って、フォーランに繋いだ。
「フォーラン!!」
「分かっております。無事、ムーヴは発進しました。これで…終わらせますよ。何もかも…ね。」
「…そうだ!何もかも消してしまえ…そのムーヴで!!」

「ここまでの真実を聞いて、信じられぬもの…はったりだと思うもの…居るであろうが、これは紛れも無い真実だ。では、何故、フェダールがここまでの人員を集めることができたであろうか!?それは、我々が真実を説いているからだ!討つべきは、我等ではなく、自らの罪を認めようとしない、議会軍と政府である!!議会軍の兵士たち!!自分自身の心に聞け!本当の敵を!!自分が討つべき者を!!真実は我等にあり!…我等はFINAL・WINNER・Revolutions。フェダール!!」


「これがルフェスの言ってた演説か…」
モロキが口を開いた。
その後回線は通常に戻り、ルフェスの演説は幕を閉じた。その成果は少なからず、議会軍側の心境を揺さぶらせる事には成功した。
「議会軍も1つじゃない…。でも決定打に欠ける…!もう一押しなのに!」
ランドが口を開くと、ランドの脳裏に言葉が過ぎった。
「─!!どうしたの?システム!!」
突然、ランドが声を上げた。
「何!?来るって?……何が?」
「どうした?ランド!」
モロキが訊く。
「分かりません!システムが、何か来るって言ってるんです!」
「─何か……だと?」
セイルが呟いた。


「─フフフ…!分かりますよ…貴方方の居る場所が!!」
フォーランは不敵な笑みを浮かべながら、超大型のMA『ムーヴ』を動かしている。
ランドのエボリューションのレーダーが未確認のMAが接近している事を捕らえた。
「─何!?これは!?」
その後、セイル等全員のレーダーがフォーランを捕らえた。
「何なの!?あれは!?友軍機?」
レイルが声を上げる。
皆が目にしたものは、超巨大のMAの姿だった。
前方に光が見えた。MAからのレーザー砲だ。その強大なレーザー砲を咄嗟に回避するセイル達。
「ちッ…!このプレッシャー……フォーラン!?」
セイルが声を上げた。
「死んでもらいますよ!貴方達には!!これ以上、こちら側を誘惑されても困りますからね!!」
BACK     目次     NEXT