第八話 「if...」 超大型MAの出現に驚いたのはセイル達だけではなかった。議会軍の兵士や、この戦いをリアルタイムで全宇宙で放送しているRTSのスタッフ等、様々な分野の人達が大型のMAに目を疑っていた。 そのMAから放たれる強大なオーラは仲間である議会軍兵士から見ても、とても信頼できる物ではなかった。何か底知れぬ裏がある…そんな事が全ての人たちの脳裏を横切っていた。 それはセイル達も同じであった。只でさえ戦況が不利なフェダールにとって大型MAの出現は想定の範囲外であった。 「そんな代物!何時の間に作っていた!?フォーラン!!」 セイルがMAに向かってビームライフルを連射する。 「効きませんよ!そんな物は!!」 大型のMAムーヴに直撃したビームはIフィールドγによって弾かれてしまった。 「Iフィールド!?ランド!モロキ!!」 セイルがランドとモロキに呼びかける。ランドはツインビームランチャーを、モロキは両肩ガトリングガンを発射する。 「貴方たち2人も死んでもらいます!今の時代には不要だ!」 ムーヴは体中に設けてある拡散ビーム砲を発射した。 それを回避していくランドとモロキ。 「─ッ!フォーラン艦長!!」 「やはり貴方をディスターブ隊に招かなければ良かった…。そうすれば、貴方は死なずにすんだのに…貴方ほどの技量だ……。実に惜しい方だ。…しかし過ぎた事に、もしも…は存在しない!」 ランドはムーヴに標準を合わせる。 「過去に囚われている者が何を!!」 ランドが叫んで、両腰のメガビームキャノンを発射する。 しかし、それもムーヴに直撃はするものの弾かれてしまう。 「人類進化論は私も好きな本ですよ!是非、また新作を出して欲しいものですが…無理のようですね。貴方も死ぬのですから!フェダールに入らなければ…!再び戦場に出て来なければ…!」 セイルのレボリューションがメガビームキャノンを展開する。 「─そうやって!お前たちは過去に縋る!!…ifの世界を見続ける!そのifを無理矢理にでも遂行する!過ぎたことに執着心を持つ!そして、お前たちは未来を見る目を失った!その結果がこの戦いだ!!」 セイルがメガビームキャノンとライルを交互に連射しながらフォーランに語った。 「過去に縋っているのはそちらでしょ!?チャリンズの事件を何時までも引きずって…!」 「全ての原因はお前たちだ!!あの事件がなければ…!」 「ほら!そうやって貴方もifに執着している!」 フォーランは拡散ビーム砲とお腹部分の真ん中に位置する巨大な銃口から繰り出されるメガビームキャノンを同時に発射した。 それらを何とか回避していくセイル達。 しかし、その戦いをレイルは只見ているしかなかった。 一応味方の識別コードを出してはいる。しかし、モロキ達が窮地に追い込まれている…でもあのMAに攻撃する訳にはいかない。レイルはどうすることもできない自分に苛立っていた。 (どうすれば…!くッ…!!) レイルは自分の唇を噛む。 「─ッ!システム!?」 『ENが規定の残量に達した。帰艦しよう…ランド。』 操縦権をシステムに委ね、ランドは目を瞑る。 (セイルさん!ENが規定の量に達しました。すみませんが帰艦します!!) (─!分かった。急げ!そう時間も無いぞ!下手をしたら全滅する!!) ランドは目を開ける。 首を縦に降り、エボリューションを90度回転させスラスターを機動した。 「逃がしはしない!」 フォーランは操縦席の右にあるカバーを開けてそこにあるボタンを押した。 ムーヴの体中の至る所から『赤外線』が放射されている。 その赤外線がエボリューションを捕らえた。 「まさか─!?これは!?」 ランドが声を上げた。 直ぐフォーランはその隣のボタンを押した。両肩のハッチが開き、中には大量のミサイルが積み込まれていた。その内のミサイル1発が発射された。 「赤外線ミサイル!?」 ランドの予想は的中した。 かつてのランドの乗機であり、今の機体エボリューション設計の元となった機体、EVOLVEガンダムが15年前のシグマ帝国との最終決戦の際にフルアーマー化され、その装甲内に試験運用として搭載されたのが『赤外線ミサイル』だ。 放射された赤外線に触れたら最後、90%の高確立で標的に当たるミサイル郡が襲ってくるのだ。 その兵器の恐ろしさはランドが一番良く知っていた。 「こんなものがまだ!?」 ランドは頭部のバルカンを乱射する。しかしミサイルは弾と弾の間を擦り抜けながらエボリューションに迫って行く。 ランドは15年も前の兵器が未だに存在している事に失望していた。 「くっ!このぉぉぉぉ!!!」 エボリューションはライフルを乱射して、何とか間一髪でミサイルを打ち抜くことができた。 「ランド!!ここはもう良い!!早く撤退しろ!!」 「了解!」 ランドはムーヴの攻撃を回避しながら、何とかその宙域からの脱出に成功する。 「ランド・セブは取り逃がしましたが…貴方方だけでも十分ですね…!」 すると、ムーヴは両腕の鉄製で出来た大型の剣からビーム状の刃を形成した。その大きさは腕だけでも戦艦に近い大きさをしている。 ムーヴは右腕をゆっくり上げ、セイルのレボリューション目掛けて振り下ろした。 セイルはスラスターを吹かし、全速力で避けるために左側へと移動する。 セイルは回避するも、その巨大な剣とビーム刃が1つとなった『ヴァイス・パニッシュ』はそのまま近くに居たフェダールの戦艦ウノと議会軍の艦2隻の計3隻をも巻き添えにしたが、セイルにはかすりもしなかった。 「フォーラン!貴様味方も!?」 「今面こちら側の戦力が多少無くなっても貴方方の負けは確実なのですよ!なら!1,2隻程度、問題では無い!!」 「くッ…!」 尚もムーヴは左右の腕を大きく振り回している。それをセイルとモロキは回避するしかなかった。ヴァイス・パニッシュと赤外線、拡散ビーム砲、メガビームキャノン、ムーヴの一斉砲撃が繰り出される。しかし、その結果、議会軍側にも甚大な被害が出ていた。セイル等が回避したビーム弾は周りの議会軍の艦に被弾し、ヴァイス・パニッシュは振り下ろす度に議会軍側の艦を1、2隻沈めていた。 セイル達はその状況を冷静に確認しつつ、ビームシールドでムーヴからの砲撃を弾きながらライフルを途切れ途切れに撃っていた。当然I・フィールドがそれを弾く。レイルもビームシールドを発生させた。ムーヴからの無茶苦茶な砲撃に当たるかもしれないからだ。 レイルはあのMAの存在意義に疑問を感じていた。 (幾らなんでも、これでは議会軍も壊滅してしまう!!もう…後戻りはできない!) レイルはレバーを倒し、腰に設置していたビームランチャーを取り出し、ムーヴに向けて連射した。 「ほぅ…。レイル少尉…貴方も死にたいようで─!」 「艦長!いえ…フォーラン・アーズ!!シャドウを苦しめた償いを払ってもらいます!!」 するとムーヴは拡散メガ粒子砲をレイル目掛けて発射した。それをモロキのスパイルがレイル機の目の前に現れビームシールドでビーム弾を弾く。 「レイル少尉!ここの宙域は危険だ!!俺たちに任せろ!」 「しかし─!」 「下がれ!!君はライグランズまで戻るんだ!レイル少尉!!」 「くっ…了解しました!」 レイルのフォートムは体を反転させ、ライグランズに向かって行った。 (彼女を死なせる訳にはいかない─!) モロキはガトリングガンを乱射した後、セイルの隣に移動する。 「モロキ、俺に案がある。」 セイルが接触回線で会話を始めた。 「何だ?それは?」 「俺たちが議会軍艦隊に突っ込めば、奴もそれを追ってくる。そしてあの巨体だ。議会軍の戦力を巻き添えにする事ができるかもしれない。」 「確かに。今のフォーランならやりかねないな。たが、そしたら俺たちが議会軍艦隊の集中砲火を浴びる!」 「フォーランの攻撃で死ぬよりはマシだ!行くぞ!!」 「OK!行くぜぇ!!」 レボリューションとスパイルはスラスターを吹かし、議会軍艦隊が密集している宙域に向かっていく。 「成る程…こちら側をも道連れにしようと…私がそんな策に溺れる程、冷静差を欠いてはいませんよ!!」 するとムーヴの背中にある大型のハッチから扉が開き、発進用カタパルトの様な物が出てきた。 「セイル!なんだあれは!?」 モロキの声にセイルが振り向く。 次の瞬間、セイルとモロキを目を疑った。 「モ…MS!?」 ムーヴの背面に設置されている大型のMS発進システムパック【ルーラ】から発進したMS10数機がセイル達目掛けてスラスターを吹かして迫ってくる。 「行け!!GR−RUIN!!」 フォーランが叫ぶ。すると同時にGR−RUIN(ルーイン)達はライフルを構えた。 「GR!?まさか……」 セイルが絶句する。 「セイル!?来るぞ!」 モロキが叫ぶ。その時にセイルは眉間にシワを寄せていた。 「R・プロジェクト……!!」 |
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