第九話 「真実の槍」 R・プロジェクト 議会軍の最重要機密であり、特殊な計画。その名をR・プロジェクトと呼ぶ。 宇宙世紀0235…ある特務隊のMS『ガンダム』を使って、上層部は議会政府及び、軍に反発する者達を武装鎮圧しようとしていた。しかし、その部隊は上層部からの命令を無視し続け、MSを渡す所か、各データ類の提出をもしなかった。その為、軍上層部はガンダムに警告を含めたウィルスを直接OSに流し込んだ。その後、ガンダムはある人物と共に行方不明となる。 そして宇宙世紀0258…そのガンダムの発掘により、軍上層部は再びR・プロジェクトを再始動させる。 このプロジェクトの内容は、ガンダムをRと名付け、Rの量産、政府と軍の国家権力の回復、一部の軍内部の権力争い、そして反乱組織の壊滅を目論んだ上層部の欲望が生んだものだった。 シグマ帝国との争いが終えてからプロジェクトは凍結。政府は軍の復旧に力を注いでいた。 そして軍の復旧が終盤を迎える頃になると、上層部は秘密裏に再びプロジェクトを始動させていのだ…。 ムーヴの『ルーラパック』と呼ばれるMS発進システム機能を搭載した大型のケースから発進したMS『GR−RUIN』。 GRの名の付くMSにセイルは呟いた。 「プロジェクトがまだ生きていた…!?」 「GRって……おい!セイル、これは!?」 セイルが呟くと同時にモロキの悲鳴にも似た声がセイルに聞こえた。 「R・プロジェクトがまだ生きていた……!?くッ…!破壊するぞ、モロキ!!」 セイルはスラスターを吹かし、GR−RUINとの交戦を開始する。それに続いてモロキも戦闘に参加する。 一方、レイルのフォートムは主砲のENチャージ中のライグランズに帰艦していた。 「─えぇ…こちらでも確認しました。大型のMA…搭乗者は分かりますか?」 カナンはキャプテンシートに座りながら、メインモニターに映し出されているレイルと大型MAの件についての情報を聞いていた。 「はい…。パイロットはフォーラン艦長です…。」 「…!やはり……そのMAが居る現在のポイントは?」 「はい。今からそのデータを転送します。」 レイルのフォートムのカメラアイが撮った映像がライグランズのサブモニターに映し出される。その次に現在のムーヴが居ると思われるポイントが黄色く点滅する。 それを見たカナンは自分の目で確かめる必要があると思い、観測班に指示を出した。 「観測班!これから送るポイントの映像をモニターに出して下さい!ここからの距離ならギリギリ映像に収めることができるハズです!」 「はっ!」 観測班の返事が聞こえた。するとライグランズのオペレーターがカナンの方を向いた。 「艦長!主砲のENチャージ完了しました!射線軸からの味方機の退避完了!」 「─!待ってください!主砲のチャージはそのままで待機!まだ撃っては駄目です!」 「─!!何故です!?このまま待機していれば、主砲の砲身が持ちません!!下手をすれば、この艦も…!それにローライ司令が黙ってはいません…!」 「分かっています!砲身が持たなくなるまで、あとどれくらいか…分かる?」 「今、計算します。………あと長くて15分です!それ以上はもちません!」 「分かりました。私達は、真実を確認せねばなりません。あのMAが本当に正しいのかを…!ローライ司令からの通信も受け付けないで!」 するとレイルが口を開いた。 「…良いのですか?」 「はい。例え同じ議会軍でも…あのMAは危険な匂いがします。ましてフォーラン艦長が乗っているとなれば尚更。それを黙って見過ごす程、私は甘くは有りません。レイル少尉は修理と補給を済ませた後は、自分の意思で出撃してください。私は貴方が真実を受け入れた事により、今後、一切命令をするつもりはありません。」 「ありがとう……カナン……」 その頃、セイルとモロキはGRシリーズの完成体RUINとの激闘を繰り広げていた。 全10数機のRUINがセイルとモロキを取り囲む。内1機がビームライフルを乱射した。 それを回避して反撃をするセイル。 「射撃も的確だ…!だが人の意思は感じられない……AIか!?」 セイルは腰にマウントしてあったダブルビームサーベルを右手に持つ。そして次々と迫り来るRUIN達を破壊していく。 「攻撃1つ1つに意思が無い……モロキ!」 「くッ…!何だ!?」 「こいつら全てAIで動いてる!」 「何─!?」 「おそらくは……フォーランのMAか…もしくは奴等が出てきた後ろのパックに、マザーコンピューターがあるハズだ!それを破壊すれば─!!」 そう。セイルの読みは当たっていた。GR−RUINは人工知能AIで稼動していた。それ等のAIを統一、指揮しているマザーコンピューターがムーヴか発進システムパック「ルーラ」のどちらかに仕掛けられているのだ。 それさえ破壊してしまえば、RUIN達は機能を停止する。RUIN達の数はフェダールの敗戦を決定付けるに相当しい数が出撃していた。1つ1つ破壊していては埒が明かない。時間だけが過ぎて行き、フェダールの状況が悪化するだけだ。 「モロキ!フォーランを見失った!奴は今どこにいるか分かるか!?」 「あぁ!ポイントは……D89!?マズイぞ!奴はテレスに向かってる!」 「何!?テレスを破壊されては…!!くッ─!モロキ!ここを離脱する!!急いでフォーランの元に向かうぞ!」 セイルとモロキはスラスターを全開にしてRUIN達の攻撃を避けながらその宙域を後にする。 ─テレス ブリッジ 「艦長!!こちらのポイントに接近してくる機体……これは…!ランドさんより報告があったMAです!!」 オペレーターの発言にレーダーに目を向けるアルミー。 「マズイわね……。本艦は今この位置を動くことはできない…!」 「アルミー!」 「─ランド!?」 サブモニターのランドの顔が映る。どうやらMSデッキから繋いでいるようだ。 「自分が出る!その間に、テレスは準備を進めて!」 「駄目よ!あなたの出撃は許可できない!」 「しかし…このままでは─!」 フォーランの目に止まったのは1つの戦艦だった。 「あれは…?白い船……」 フォーランは周りの艦隊を駆逐しながらテレスに標準を合わせていた。ムーヴのメガビーム砲ならロングレンジの距離でも十分に届く。 (何故だ?何故、あの白い船は身動き1つもとらんのだ?……あの船は、かつてのバラスートと同じ存在のハズ!) フォーランは冷静に考えているとコックピットが揺れた。 慌てて周りを見渡す。すると敵MSの部隊の攻撃を受けていたのだ。 (敵部隊の接近に気づかなかった…?くッ─!システムが動き始めたと言うのか!?) フォーランは今まで気づかなかったが、額には大量の汗が湧き出ていた。 この動きをテレスは感知していた。 「艦長!ジャクレーヌの部隊が本艦の護衛に回ってくれています!」 「ジャクレーヌには感謝ね。作業は今、どのくらいなの!?」 「既に96%は完了しています。あとは道が開けば…!」 「ルフェスに伝えて。『準備は整った、あとは道が開くのを待つのみ…』と。」 そのアルミーからの伝言を読み終えたルフェスは、フェダールの全部隊に、ある一定のポイントの敵部隊を一掃するよう命じた。 ポイントC80からA12までの敵のみを破壊するように、と。 その行動に取り掛かるフェダールの部隊。 フェダール艦隊の一斉集中砲火により、指定されたポイントの議会軍艦隊が次々と一掃されていく。 フォーランがその光景を見たのは、ジャクレーヌの部隊を全滅させてからの事だった。 「何のつもりだ…?ルフェス・リグ?──何っ!?」 またしてもムーヴのコックピットが揺れた。後を見るフォーラン。攻撃して来たのは、セイルとモロキであった。 「来ましたね……と言う事はRUINを全滅させたか……」 フォーランは、セイル達が来た…つまりセイル達の足止め役として放出したRUIN達を全機撃破したと捉えていた。 「……違うな。一番効果的な選択をしたな…セイル・ギア!」 セイル達を追いかけるようにして現れたのは。RUIN達だった。その映像をモニターで確認したフォーランは前言を自らの中で撤回した。 「モロキ!まずは、パックから破壊する!」 セイルは右手に所持していたダブルビームサーベルを構えて、ムーヴの背後に渡る。 その隙にモロキは両肩ガトリングガンをムーヴに向けて発射する。 「無駄な事を!パックには近づけさせん!!」 フォーランは赤外線をランダムに放射した。 赤外線はセイルの前に立ちふさがり、セイルの進路を塞ぐ。 すると、RUINの部隊がセイルに対し攻撃を始めた。 内の一体がバックパックの巨大な砲身を展開した。それは、かつてのGR−03にも搭載されていた『G・キャノン』を発展させた武器、『G・キャノンT−R』であった。砲身の数こそは同じものの、威力はG・キャノンを圧倒的に凌駕する代物だ。まず直撃すれば無事では済まされない。 「─!!」 セイルはその砲身の存在に気づいた。咄嗟に攻撃を止め、回避行動に移った。それと同時に敵がG・キャノンT−Rを発射する。 紙一重の差で回避することができたセイルは直ぐにライフルでその敵を撃ちぬいた。 一方、モロキにもRUIN達の攻撃が行き届いていた。 2体のRUINが両肩、両脇、両足、両腕の4箇所、計8個のガトリング砲……G・ガトリングV−Rを一斉発射した。 皮肉にも形状こそは違えど、そのガトリング砲にはモロキが搭乗しいたGR−02の『G・ガトリング』のデータが反映されている。 モロキは声をあげビームシールドを展開しながら回避する。至る箇所に被弾の形跡が残りながらも、メガビームキャノンを発射し、2体のRUINを沈める。 続いて近づいてきた敵機を、ビームチャクラムで撃破した。 セイルがレーダーに目を通す。そこには、戦艦ドスが1隻とMS数機が救援に駆けつけてくれていた。 「セイル・ギア!我が隊が援護する!」 「ドスの3番艦!?お前は……ズエン・フォン!?それに…ロマードとアルジネスか!?」 赤と青のエクスセイバーがRUIN達を撃墜していく。 赤のロマード機がライフルを巧みに使い、RUINを破壊していく。と同時に青のアルジネス機はビームサーベルを両手に持ち、RUIN達を真っ二つに切り裂いて行く。 ズエンが指揮するドスの一斉砲撃により、RUIN達は後退して行く。 ロマード達が奮闘している間に、セイルに通信が入る。テレスのアルミーからだ。 「セイルさん。これよりテレスは行動を開始します。」 「分かった。……その前にビーム・G・ソードを射出しろ。」 「─!分かりました。では、これから指定するポイントへ…」 セイルはガイドビーコンに表示されたポイントに向かうため、スラスターを吹かす。 セイルのレボリューションがテレスの正面に来た。それと同時にテレスのカタパルトから何かが射出された。 セイルはそれを受け取ろうと、バーニアで調整しながら体制を整えた。 レボリューションの手に吸い込まれるように、セイルはその何かを見事、受け取る事ができた。 「外装スラスター、パージ!出力確認!EN量、確認!」 「では!セイルさん!」 モニターにランドが映る。 「頼むぞ…。ランド、アルミー。」 ランドは首を縦に振る。それと同時に、テレスのエンジン部分に大量に装着された、メガドライブエンジンが始動する。 その時、セイルに接近するRUINが居た。そのRUINは、かつてのGR−01が使用していた『G・ソード』のデータを元に開発された、『G・ソードS−R』を構えていた。 セイルはそれを確認すると、眉を細め、先程受け取った剣を構える。そしてビーム状の刃を形成した。その大きさは軽々とレボリューションの全長を超えている。 RUINのカメラアイが光る。レボリューションの『ビーム・G・ソード』を確認したのだ。 人工知能に恐怖は無い。RUINは臆することなく向かっていく。 「ハァァァァ…!!」 セイルは叫び、ビーム・G・ソードを振りかざす。 RUINはG・ソードS−Rで対抗しようとするも、ビーム刃がS−Rの刃を溶かし斬った。 セイルはそのままの勢いでRUINを切断した。 そしてセイルの目線はテレスの方を向く。 「テレス、発進します!!」 アルミー艦長の命令が下った。 メガドライブエンジンが一斉に噴射する。瞬く間に消えたテレス。 そこにはメガドライブエンジンを大量に噴射した為、ミノフスキー粒子が散りばめられ、その移動した痕跡が光となって現れた。 その光の痕跡が向かう先は……地球だった。 続いて、予め大気圏突入準備を進めていたテレスは一気に地球へと降下した。 周りから見れば、これは一瞬の出来事で何か起きたのかは分かっていない。分かっているのはフェダールの陣営のみだ。 その頃、地球のハワイ諸島……議会軍本部では、上層部の特別召集会議が行なわれていた。 ハワイと言えば、観光名所で有名な場所であったが、議会軍の本部が設けられている事が公に発表されてからは客数が激減。そして過去の幾多の戦いにより、今では廃墟と化していた。 「…今現在の戦況の報告を。」 「はい…。当然、こちら側が有利。フェダールの全滅は時間の問題かと。」 「そうか。この戦いが終われば…もう議会軍に反発する組織は居なくなるだろう…。」 「そうでなくては困る…。これ以上、フェダールを好き勝手にさらされては。」 「でなければ、セツルメントの奴等が何をしでかすか…」 「では事前にそれを防ぐために、セツルメント統合軍を我等の指揮下に入れるべきだな…」 「それの対応策は、諜報部のデータを参考にしよう。…向こうの弱点をつけば…あるいは。」 薄暗い部屋の中で、高官達が会議をしている。 次の瞬間、薄暗い部屋にサイレンの音が響く。と同時に部屋がサイレンの機能で、真っ赤に染まる。 一気にざわめきだした高官達は、動揺を隠せない。 「何事だ!?」 「状況報告!遅いぞ!!」 「何…!?白い船─?」 「上空?─良く聞こえない!!」 「妨害電波が張られているだと!?」 「敵だと言うのか?防衛線を突破した?MSは─!?」 「緊急シェルターを!!」 高官達を他所にハワイ諸島上空に突如として現れたテレスはメガドライブエンジンを切り離していた 目を開いたアルミーは空気を吸い、叫ぶ。 「作戦を開始します!」 |
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