第三話 「シグマの亡霊」


「艦長、前方の小型シャトルから着艦許可の要請が来ていますが・・。」
ロムが艦長の方を向く。
「あれは、脱出用の小型シャトルだな・・。ならば、一般市民が乗っているのか・・・。」
「しかし!敵かもしれませんよ!」
舵を取っていたリョウタが反論した。
「分っている!とにかく、着艦を許可しろ。警戒は厳にしてな。」

「おい!ランド。議会軍の戦艦から着艦許可が下りたぞ!」
ジョーニアスが嬉しそうに言った。
「よかった。ヨンル、頼むよ。」
ランドが操縦をしているヨンルの肩を、ぽんと叩いた。
「まかしとけって!!」

一方、グライス達は敵の基地を征圧し、帰艦しようとしていた。
「隊長、あのセツルメント内の町の復旧作業は別の部隊がしてくれるんですよね?」
モロキがグライスに問いかけた。
「あぁ、そうだ。んっ!?艦橋に脱出用シャトルだと!?」

〜ブリッジ〜

「ランド・セブ。15歳。アクアセツルメント出身です。」
ランド達はグローバー達からの質問に答えていた。
「これで、全員・・・。どうします?艦長?」
アレンがグローバーに困った顔をしながら問いかけた。
「今、我々は地球降下への航路を進んでいる。途中で他のセツルメントまで送り、降ろす事は可能だが、作戦時間に支障がでる・・・。」
プシュュュ!
「艦長、どうした?」
帰艦してきたグライス達がブリッジに入ってきた。
「はい、ジン・・・いえ、グライス大佐、この民間人を今後どうするかと・・・。下手に航路を変更すれば作戦時間にも支障が出てしまい、アーサー・ゲイルを見逃してしまう可能性が・・・。」
「・・・。君の名は?」
グライスはランドを指名した。
「あっ・・・はい、ランド・セブです。」
「艦長、この子達を連れて地球降下をした方が得策だと思うのだが・・・。」
グライスの発言に一同は仰天した。
「しかし、この子達は民間人ですよ!戦線を共に潜ると言うのも、彼らも辛いはずです!」
グライスの発言にグローバーが反論した。
「では、聞こう。君達はどうしたい?このまま、我々と行動を一時期、共に過ごすか。それとも、近くのセツルメントに降りるか。・・だが、後者を選んだ場合、以前と同じシグマ帝国の支配下の元に生活をすることになる・・・。」
グライスはランド達に問いかけた。
「・・・・僕は・・前者を選びます・・・。」
ランドが答えた。
「おい!ランド!何を言ってやがる!!ここは軍艦だぞ!死んじまうかもしれないんだぜ!!」
ランドの発言に、ジョーニアスが反論した。
「セツルメントの方が・・もっと危険だよ。アクアの頃の生活だって、シグマのせいで、両親を亡くした俺達が、なんとか遣り繰り出来た状態だった。俺達は、いつも、そうだった・・・。2年前の戦争が起ったおかげで、俺達は両親を失った・・・。」
「・・・!」
ランドの発言にグライスは反応した。
「それからさ・・・。ずっと、今日まで常に死と隣り合わせの生活を送ってきた。もぅ、嫌だ!あんな生活に戻るのが!」
一同は黙ってしまった。
「じゃ、私はランドに賛成。」
ローレンスとマリマが手を上げた。
「じゃ、仕方ないか・・・。僕達、全員、前者を選ぶって事で・・・。」
ジョーニアスがグライスに言う。
「分った・・。メイス少尉!この子達を頼んだぞ。艦長、この件は私が責任をとる。」
「いえ、地球降下の途中に脱出カプセルを回収し民間人を保護した、と言えば、ビギンズも反論することは出来ません。大佐の責任ではありませんよ。」

〜月 議会軍補給基地〜
MS用発進カタパルトに1機のMSが出撃体制に入っていた。
「では、発進、いつでもOKです!」
聞きなれた声が響いた。
「いままで、世話になったな、ハーニア。アレンへのメッセージは?」
「私の傑作のこのMS、大事にして!、と。」
「了解した。また会おう。」
信号のシグナルが赤に点灯する。
「では、幸運を!」
シグナルが青に変わる。
「セイル・ギア!出る!」

〜30分後〜
「これが・・・軍服。」
ヨンルが拍子抜けした声で呟いた。
「これからは、軍服を常に来ているように。何時、議会軍の将校が訪れるやも知れん。何か言われたら、新米兵と言うのじゃぞ。」
シルニーがランド達にメガホンを向けながら言う。
ビー!ビー!ビー!
突然、警告音が鳴った。
「んっ!戦闘が始まるぞ!坊や達は、安全な所に居るんじゃ!作業員に迷惑を掛けるなよ!」

〜ブリッジ〜
「前方に、これから降下するものと思われる敵艦隊を捕捉!」
ロムが叫んだ。
「第一戦闘配備!メガ粒子砲、ENチャージ開始!」

〜MSデッキ〜
「MS部隊!発進どうぞ!!」
作業員が叫んだ。
「メイス少尉、セイル大尉からの連絡は?」
グライスがメイスに問いかけた。
「はい、30分前に月を出発したとの連絡は入っています。」
「では、あと少しで合流か・・・・。」
グライスが呟く。
「グライス大佐!出てください!」
作業員が叫んだ。
「よし、GR−01、出る!!」

一方、シグマ帝国の艦隊は降下準備を進めていた。
「前方に、ブレイジング隊と思われる部隊を確認!!MSも発進したようです!!」
オペレーターが叫ぶ。
「何!?ブレイジング隊だと!?」
艦長が仰天する。
「艦はこのまま、降下準備を進めていろ。MS部隊は発進だ。私も出る。」
1人の男は指示を出し、エレベーターのドアを開けた。
「そ・・総帥!!」
「時間までには戻るさ。」
そして、ドアは閉じてしまった。
(ふふふ・・・。ジング義兄さん、このアーサー・ゲイル。貴方の思っているほど以上にシグマ帝国をまとめているよ・・・。ふふふ。)
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