第九話 「足りないもの」


輸送艦のブリッジから煙が上がっていた。
ランドの乗るMSが地上に着地する。
セイルのR3が近づいてくる。
セイルは接触回線を使用した。
「ランドだな?そのMSに乗って居るのは・・・。」
ランドも回線を開く。
「はい。輸送艦の中で発見しました。あの、ラズ・ステルじゃあ、使い物にならないと判断したので・・・。」
少し、セイルが黙り込む。
それを不思議に思うランド。
「・・・お前、そのMSに乗っていて何か不愉快な感じや、苦しくなったりしないか?」
セイルの発言にランドは少し戸惑いながらも口を開く。
「はい・・。全然、そんな感じはありませんが・・・。」
またも、セイルは黙り込んでしまう。
しかし、ランドは"何も感じない"とセイルに言いながらも少し、なんとも表現のしにくい感じがしていた。
「!・・ランド、帰艦するぞ。敵の司令室が落ちたみたいだからな。」
バラスートUによる砲撃で司令室が破壊されたのだ。
「セイル大尉!この機体はどうすれば・・・?」
帰艦しようとしていたセイルにランドが問いかける。
「とりあえず、そのまま帰艦しろ。その機体の事は艦に戻ってから検討する。」
ランドが頷く。
セイルとランドは帰艦するためにバラスートUに向かって行った。
(ランドが、あのシステムにマッチしている・・・。やはり、ランドは・・・!!)
セイルはランドの方を少し見てから、また正面を向く。

〜MS格納庫〜
Eガンダムと呼ばれる機体の周りには、セイルとグローバー、グライス、ランドが居た。
「親父・・・。このMSは・・・。」
セイルがグローバーの方を向き、小声で声を掛ける。
「あぁ、Eガンダム・・・イプシロンと呼ばれるガンダムタイプのMSだ。だが・・・」
グローバーも小声で返す。
セイルが頷く。
「分っている。あのシステムにランドがマッチしている。ここはランドに預けてみたいのだが・・・。」
その会話に、グローバーが入る。
「だが、Eを我が隊が使うとなれば、ビギンズが黙ってはいないぞ!?」
セイルがグライスの方を向く。
「Eがシグマ帝国に奪取された事件を知って居るのは軍の中でも数は少ない。更に、Eの開発はRプロジェクトと同様の極秘機密だ。一般の将校も知らない人物が大半も居る。ビギンズも知らない事だ。奴が反論する事はできない。だが、将軍クラスとなると・・・厄介だがな。」
セイルの発言にグローバー、グライスは黙り込んでしまう。
ランドが近寄ってくる。
「あの・・・僕はこれから、どうしたら・・?」
ランドがセイル達に問いかける。
セイルがランドに近寄る。
「これから、この機体に乗るのは、ランドに決定した。」
「ぼ・・僕がですか!?」
ランドが驚いて、一歩下がる。
「そうだ。反論は無いな!?」
ランドは少しためらいながらも頷いた。
ランドはセイルのプレッシャーに反論が出来なかった。
そして、セイルはEの方を見る。
(俺に答えてくれなかった、イプシロンシステム・・・やはり、システムはランドを選んだ・・・。俺に足りないものは何なんだ・・・。これは、システムが予知していた事なのだろうか・・・?)
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