第十話 「確信の発令」


「何をしている!ランド!敵は後ろにも居るぞ!!」
E(イプシロン)ガンダムのコックピット内にセイルの怒声が響く。
ランドは慌てて返事をし、後ろを向く。
ヴーイッグズが接近し、そのブースターの速度を利用したタックルを仕掛けてきた。
Eガンダムはタックルの直撃を受けてしまう。
ランドに激しい衝撃が襲う。その衝撃によって、ランドが叫ぶ。
ヴーイッグズは少し後退し、コックピットに向けてビームライフルを構える。
ライフルの銃口に段々と光が広がってゆく。
ランドはスロットルを握り締め、ジャンプをした。
ヴーイッグズが発射したビームはEガンダムの足の先端を少し焼いたぐらいで済んだ。
ランドはビームステンライフルを構えた。ビームステンライフルとは、従来のビームライフルの性能をアップさせたライフル。オーストリア軍が採用しているブルパップ式のアサルトライフルのステアーAUGガンを元に開発されている。ビームの銃口の下にガトリングガンを装備することで、火力がアップする。更に、ラージングバッテリーを使用しているため、バレルヒートをしないかぎり、弾切れはしない。尚、R3ガンダムが使用しているステンライフルはEガンダムの使うビームステアーライフルの試作型である。
「ロックオン!当たれー!!」
ランドが叫ぶ。
発射されたビームはヴーイッグズを直撃した。爆発と同時にEガンダムが地上に着地する。
ランドがEガンダムのコックピットのメインディスプレイを見る。
セイルが画面に映し出される。
「これにて、模擬戦を終了する。ご苦労だったな、ランド。この後は、ゆっくり休め・・・・と、言いたいところだが、そのEガンダムは、機体調整のバランスが微妙でな。今の模擬戦の結果を見ても、バランサーの出力の不安定とブースターの可動時間が0,2秒という誤差が出来ている。続いて機体調整に入ってもらう。」
ランドは小声で「はい」と言う。

バラスートUは小惑星被害地のアメリカを抜け、補給基地サッズへと向かっていた。尚、未だにアメリカは完全復旧はされていない。これも、アーサー・ゲイルがシグマ帝国の建国理由の1つであった。
サッズへと向かうのには理由があった。ただ、単に補給を受けるためではあるが、Eガンダムの件をガローン中将、ミニンに話すことが最優先の理由だったからだ。

〜バラスートU ブリッジ〜
「ロム、サッズまでは、あとどれ位掛かるか、分るか?」
グローバーがロムに問いかける。
ロムがコンピューターのキーボードを打ち、解析する。
「サッズまでは、およその時間、あと18時間です。」
「18時間か・・・・。その間、シグマと戦闘にならなければいいのだが・・・。」
グローバーが悩むのも無理は無い。事実上、ブレイジング隊は議会軍本部、シグマ帝国にもEガンダムを所持しているのを知られていないからだ。もし、知られてしまったら議会軍本部からは何かと愚問されてしまうし、シグマに知られたらかなりの勢力を率いて攻撃される可能性がある。戦争が緊迫した状態で、そんな事をされるのだけは御免だった。

〜MSデッキ〜
ランドは機体を調整していた。
「最終チェック・・機動バランサー・・・確認。機体全体の機動動作・・・確認。・・・はぁ〜・・やっと終わった。セイル大尉も厳しいよな〜。あっ!パイロットスーツを脱ぐの忘れてたよ・・・。はやく脱がないと・・・」
ランドが機体から降りようとした時だ。
突然、Eガンダムの電源が入った。コックピットハッチが完全に閉まり、ランドはシートに座る。
「何だ・・・!?何が起きてる!?」
ランドが慌てて機体をチェックする。だが、異常は見当たらない。どこを見ても、"正常"と出るだけだった。
ただ、1つだけメインコンピューターだけ、"戦闘モード"と表示されていた。
Eガンダムが勝ってに歩き出し、カタパルトに足を接続した。もちろん、ランドは操縦していない。
「おい!なんだ!!」
「Eが動いているぞ!!」
「ランドが動かしてるのか!?」
「第一戦闘配備なんて、発令してないぞ!!」
作業員の声がEのコックピット内に響く。

一方、ブリッジでは警報が鳴っていた。
「艦長!!Eガンダムから、ハッチ開放の要請が・・・!!」
ロムがグローバーり方に向く。
「ロム!その要請は、ランドからか!?」
ロムが送信者の名前を調べる。結果を見たロムが少し黙り込む。
「ロム!どうした!?」
ロムがグローバーから煽られる様に返事をする。
「それが・・・ランド・セブでは無く・・・イプシロンシステムから・・・だと。」
グローバーはロムが予想していたものとは、違う反応を見せた。
「そうか・・!・・・総員、第一戦闘配備!!」
"艦長、一体何を!?"と言わんばかりの顔で、ブリッジ内のクルーがグローバーの方を向く。
グローバーには、第一戦闘配備を発令する確信があった。
(ついに、機能を発揮したか・・・イプシロンシステム!!)
グローバーは、ニヤリと苦笑いをしていた。
BACK     目次     NEXT