第十三話 「過ちの代償」


ブレイジング隊はサッズに入港した。
ガローン中将の部屋には、ガローン、ミニン、グローバー、セイル、グライスが居た。
グローバーがEガンダムの性能や、機体解説の載ったファイルをガローンとミニンに差し出した。
ガローンとミニンが嶮しい目で内容を読む。
勿論、ガローンもミニンもEガンダムの事などは一切、知らされてはいない。
ガローンがファイルを机に置く。
「本部は、このMSの開発を何故、黙っていたのかが気がかりだな・・。グローバー君も、この開発会議に出頭していたのだろう?」
ガローンが呟き、グローバーの方を向く。
グローバーは頷き、セイルが口を開く。
「Eガンダムには、イプシロンシステム。つまり、人口知能が付いています。的確な判断力と、そのパイロットのレベル判断、そして人間特有の感情まで持ち合わせている。実際、俺もテストパイロットとして、Eに載ってみたのですが・・・急に胸が苦しくなり、吐き気や頭痛が起こりました。つまり、イプシロンシステムは乗る人間を選ぶ機能まで付いているのです。ですが、その選ばれる基準は定かではありません・・。只、システムは、ランドを選んだ・・・。」
ガローンがファイルを手に取る。
「この少年・・・ランド・セブ君か・・・。」
ガローンが呟く。
開発会議に出頭していたのは、ブレイジング隊ではグローバーだけだ。何故、セイルとグライスが知っているかと言うと、グライスはグローバーから聞いていたからだった。セイルは開発会議には参加していないものの、Eのテストパイロットを任命されていたのだ。
「グライス大佐、君はどう思うね?」
ガローンがグライスに訊く。
「私は、あのEというイニシャルが気になります。」
グライスの発言に皆がグライスに眼をやる。
「たしかに、イプシロンという意味合いなら、ギリシャ語ですから、なんとか通じます。ですが、MSに付けられるイニシャルには、何らかの意味があるはず。・・そう、RガンダムのRETURNの様に・・・。」
それを聞いたミニンが口を開く。
「それじゃあ、頭文字がEの単語を調べてみるわね。もしかしたら、凄い意味を持っているのかもしれないしね・・。」
ミニンが立ち上がる。それと同時に全員が立ち上がる。
「では、Eガンダムの件は、もう少し、時が来るまでは我々以外の人間には、内密にしておいた方が良いでしょう。こんな現状で、余計な混乱は招きたくない。」
グローバーが言う。そして、全員が頷く。

〜30分後〜
ブレイジング隊はサッズを後にした。
艦内に戻ってきたセイルにメイスが駆け寄る。
「セイル!」
セイルを呼ぶメイス。メイスは両手を後ろに回して居る。どうやら、何かを持っているらしい。しかし、セイルは気付いていない。
「なんだ?」
セイルはメイスの方を向く。
「今日、何の日か、知ってる?」
「さぁな?何の日だ?俺はこれから、親父とグライス大佐との話があるんだ。用件はそれだけか?」
メイスは「えっ!?」と小声で呟き、耳を疑った。
「・・・あっ!うん。何でもない・・・。」
メイスは持っていた何かを右手で持ち、笑顔で手を振った。
そして、セイルは歩いていってしまった。
(・・セイル・・自分の・・誕生日まで・・・忘れてしまったの?・・)
メイスはセイルの部屋に向かった。せめて、その何かを部屋に置いとこうと思ったからである。

〜ブリーフィングルーム〜
「現在、ブレイジング隊の戦力は低すぎる。いくら、サッズで補給を受けたとはいえ、MSを操る兵が居なくては、シグマ帝国遊撃特務部隊の意味が無い。このままでは、隊の存続も危ない。」
セイルが坦々と話を進める。
グライスが眼鏡を光らせる。
「アーサーのやり方は、私とは違うやり方だ。1つずつの勢力を攻め続けるのではなく、1つの勢力を短時間で潰す、速効性だ。少しでも気を抜いたら、アーサーはそこに眼を付けて来る。今は、少しでも勢力を増やすしか手は無いぞ。」
グローバーが両手を組み、その上に顔を乗せる。
「仕方あるまい。我々の存在もシグマにとっては脅威だ。なら、相手も戦力を失う前にブレイジング隊を殲滅させたいのだろう。最近、襲撃が多いのは、そのせいだ。」

〜30分後・ブリッジ〜
「艦長!索敵範囲に敵影確認!!」
デュースが叫ぶ。グローバーは冷静に指示を出す。

MS部隊が出撃する中、セイルは自分の部屋に入った。予備の酸素ボンベを取り出すためである。セイルが酸素ボンベを持ち、部屋を出ようとしたその時だ。
「!!・・これは・・?」
セイルが手にしたのは手のひらサイズの箱だった。
「これは!!・・まさか・・!?」
セイルは思い出した。今日は自分の誕生日だったのだ。それに、メイスのあの言動。すべての辻褄が合う。
「俺は・・・俺は・・なんて・・馬鹿だ!」
セイルは壁を殴りつけ、走り出した。

「フェイ軍曹!ここは私に任せて!あなたは、ポイントSOD205の防衛を!」
「すいません、メイス少尉!」
メイスはスナイパーガトリングガンを乱射し、次々とMSを破壊してゆく。
「敵の数が多すぎる!?ならば、G・キャノンを使うしか!!」
メイスは乱射を止め、G・キャノンをスタンバイし、ロックオンを開始する。
「発射!!」
メイスが引き金を引く。発射と同時に、激しい衝撃がメイスを襲う。悲鳴を上げそうにもなったが、必死に堪えた。
だが、周りの敵MSは大破していた。
「はぁ・・はぁ・・・次!」
メイスが後ろを向く。
「きゃあ!」
突然の事だった。敵MSがGR−03の右腕をサーベルで切り裂いたのだ。その次の瞬間、ヴーイッグズがGR−03を囲んだ。
「何?敵は、私を打たないの・・?くぅっ!?」
GR−03を敵が捕獲した。前方には敵艦が居た。
「どうして・・・!?何故、捕獲を・・!!」

一足、遅れてセイルのR3が地上に着地する。
「くそっ!!俺は・・俺は・・!!」
メイスが連れ去られる映像は見えていた。見てしまったからこそ、辛い。今のセイルにはどうする事も出来ない。
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