　　第十四話　「陰謀」

議会軍本部の決定により、メイスはＭＩＡと認定された。
この決定事項に釈然としない兵も数多い。
特に、セイルはメイスが連れ去られる瞬間を目撃していたため、何も出来なかった自分に不甲斐無さを感じていた。

太平洋、シグマ帝国の艦隊を撃滅する作戦、作戦名"マリン・ブルー"ビギンズ率いる、太平洋艦隊とブレイジング隊、そして議会軍本部護衛特務隊マリン・ブルー隊の共同作戦を決行。
結果、シグマ帝国の敗北に終わり、太平洋付近のシグマ帝国の勢力圏は、ほぼ無に等しくなっていた。

現在、議会軍の宇宙に上がっている議会軍の艦隊はシグマ帝国の艦隊との徹底抗戦を続けていたが、議会軍の奮闘空しく、シグマ帝国に軍配が上がっていた。このままでは、シグマ帝国に宇宙の勢力圏を全て、奪われてしまう可能性が大きくなってくる。
そこで、ブレイジング隊も本部からの命令で宇宙への出港が決まり、宇宙用発進カタパルトがある、議会軍本部のハワイ諸島に向かっていた。

～議会軍本部・ハワイ諸島～
夏に旅行客でにぎわうハワイも今は、戦争中と言うのもあって、旅行客は減り続けていた。

ブレイジング隊より一足早く、太平洋艦隊、総司令のビギンズは議会軍の会議に出頭していた。
「では、ビギンズ中将。何か、意見があるようだが？」
暗い会議室を真ん中にあるライトだけが照らしていた。
ビギンズは立ち上がり、モニターを出す合図をする。
「これから、見ていただく映像は、作戦"マリン・ブルー"で得た映像です。」
モニターに映像が映し出される。
映っていたのは、Ｅガンダムの戦闘中の映像だった。
映し出された映像に動揺を隠せない将校も居れば、映像を食い入るように見る将校も居る。
「この機体、Ｅガンダムのようです。そして、この機体は戦闘終了後、ブレイジング隊の母艦、バラスートⅡに着艦して行きました。何か、お知りですかな？ヴェーツェラ将軍殿？」

ヴェーツェラ・バームレン　　将軍
地球議会軍の最高責任者。ブレイジング隊の結成を決めたのも彼であり、自らも戦艦の艦長として戦線におもむく。意外と行動力にかけた人間である。

ヴェーツェラは少しも黙り込んだ後、ビギンズの方を向き、
「ブレイジング隊のグローバー・ギア少将からの報告によれば、北極基地襲撃の際、敵輸送艦の中で発見したそうだ。我々は君にＥを任せた後、シグマ帝国に易々と奪取された。君にも責任があるのではないか？ビギンズ中将・・。」
この会議に参加しているのは、Ｅガンダムの事を知っている者だけが参加しているので、Ｅの事を隠す必要は無かった。
「それは、ご挨拶ですな。ヴェーツェラ将軍。そもそも、Ｅガンダムの事を、何故シグマ帝国が知っていたかの方が問題でしょう？もしかしたら・・・スパイが居るかもしれませんな・・？」
ビギンズはモニターを片付ける合図を出した後、自分の椅子に座る。

ビギンズはＥガンダムの事を知っていた。先ほどの会話にもあったように、どうやら、Ｅガンダムはロールアウトされた後、カナダでの機動テストのため、ビギンズ率いる太平洋艦隊に預けられたようだ。そして、カナダで機動テスト中、シグマ帝国により奪取された。
「ブレイジング隊は、私がＥガンダムの事は知らないと思っているようです。まぁ、私もその"知らない"と言う芝居はもう飽きましたし・・。早々と宇宙へ上げたほうが手っ取り早いのでは？」
ビギンズがヴェーツェラに訊く。
「そのつもりだ。ブレイジング隊には、もっと働いてもらわなくてはならん。だから、Ｅガンダムを預けているのだ。それと、スパイの件は調査を行うよう、言っておく。」
ヴェーツェラが立ち上がり、荷物を片付ける。
それと同時にビギンズが立ち上がる。
「スパイは危険です。これ以上、議会軍の情報を敵に流しては大変な事態になれますから。・・それと・・Ｅガンダムの事を"イプシロン"と呼ぶのは止めましょう。あれには真の意味があるのですから・・。」

次の日、ブレイジング隊はハワイ諸島に到着していた。
次々と宇宙への出発準備が進められている。
セイルはヴェーツェラに呼ばれていた。

「セイル・ギア参りました。」
セイルが敬礼をする。
「うむ、実は君も、薄々気付いていると思うが・・先ほど、軍事裁判の結果、スパイの処刑が決まった。」
ヴェーツェラは立ち上がり、外を見る。
「やはり、スパイが居ましたか・・。で、その人物は・・・？」
セイルが訊く。

～２時間後～
「艦長、発進準備整いました。それと、ヴェーツェラ将軍から通信が入りました。」
ロム言い、回線を開く。
「グローバー艦長、宇宙ではよろしく頼むぞ。・・それと、セイル大尉に、私が仕事を依頼してな・・。すこし、１０分ぐらい遅れるそうだ。待っていてやってくれ。」
グローバーは、その仕事は分っていた。スパイの射殺であった。ヴェーツェラ将軍は他のクルーに悟られぬよう"仕事"としてグローバーに伝えたのであった。

「ど・・どういうことだ！？セイル・ギア！？」
セイルは銃口を向ける。
「ビギンズ・ボトルカーナー。先ほど、軍事裁判の結果、お前をスパイ容疑で処刑が決まった。それで私は、ヴェーツェラ将軍の命令により、お前を射殺する。」
ビギンズは動揺を隠せない。
（くっ！・・ヴェーツェラめ・・謀りおって・・！！）
後ずさりするビギンズ。
そして、セイルは引き金を引き、ビギンズは心臓を打たれ、床に倒れた。
セイルは部屋を後にし、ドアの外で待機していたガードマンに合図を出し、死体を運ぶよう指示を出した。

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