第二十話 「進化」


〜バラスートU 通信室〜
「そうか・・・。Eとは、イプシロンでは無かった。」
セイルが何者かと通信をしている。
「えぇ、おそらくヴェーツェラ将軍が怪しいわ。裏でも、シグマの将官達と会っていた痕跡もある。この事は、グローバー君とグライス大佐にしか、教えては駄目よ。でも、場合によってはランド君にも教えた方が良いかもしれないけど・・・。」
セイルと通信をしていたのは、ミニンだった。彼女を含めた補給部隊はマリン・ブルー隊と共に地球に残っている。
「分った。ヴェーツェラ将軍の事は、俺に任せてくれ。ありがとう、お袋。」
「頑張りなさいよ。セイル。メイスさんの事、守ってあげられるのは、貴方だけなんだからね。」
セイルは少し笑い、通信を終わらせた。

〜バラスートU ブリィーフィングルーム〜

セイルはグローバーとグライスを呼び出し、先ほどの内容を伝えた。
「何?!では・・Eは本来なら・・・。」
グローバーが絶句する。
「そう。Eガンダムの'E'とは、EVOLVE・・・、進化と言う意味から分るように、本来ならば、シグマ帝国が使うはずだった機体だ。」
セイルが冷静の真実を述べる。
グライスを身を乗り出す。
「それが本当ならば、E・・・いや、EVOLVEはシグマに奪取されたのではなく、議会軍はシグマに堂々と渡したと言う事になるな・・・!」
グライスの手に自然と議会軍のしていた事から怒りを感じ、手に力が入る。
セイルが口を開く。
「お袋が教えてくれた情報によると、EVOLVEの開発とシグマへの密輸を誘導したのは、ビギンズだけでは、無いみたいだ。」
「!!・・ヴェーツェラ将軍か!?」
先ほどまで黙っていたグローバーが驚いたように言う。
セイルは無言で顔を縦に振る。
「だが、何故、本部は我々にEVOLVEが保管されていた北極基地を攻撃させたんだ?」
グライスがセイルに訊く。
「おそらく、ヴェーツェラはEVOLVEを発見される事を予測し、奪取されたと思わせるつもりだったんだろう・・・。しかも、テストパイロットをした俺が居るのだから、Eの事はバレる。」
グローバーが立つ。
「とにかく、決戦が近い。セイル、ヴェーツェラ将軍の事は頼むぞ。」
「分っているさ。それより、この事はランドにどうする?」
セイルがブリィーフィングルームを出ようとしていたグローバーに訊く。
「いや、ランドには話すな。余計な迷いは生みたくないからな。」

〜5時間後〜
「前方で、戦闘を確認。始まりました・・。」
ロムが言う。
そう、議会軍とシグマ帝国との最終決戦が始まったのだ。
グローバーは息を呑む。
「では、我々も戦闘空域に突入しだい、バラスートUで射撃後、MS部隊を発進させる。MSデッキは早急に、出撃準備を!!ロム、5分後にメガ粒子砲のENチャージを開始しろ。」

ランドはロッカーでパイロットスーツに腕をとうしていた。
しかし、額からは汗がにじみ出ていた。
「く・・くそぉ・・・。何だか、変な感じがするな・・・。でも・・懐かしい感じがする。でも、恐怖も感じる・・。」
ランドはヘルメットを手に持つとロッカールームを後にし、MSデッキへ向かった。

〜MSデッキ〜
セイルはコックピットに入るため、ヘルメットを被ろうとしていた。
そこにメイスが近寄ってきた。
「メイス。どうした?」
セイルが訊く。
メイスは既に出撃準備が終わっているみたいだ。
「セイル。私、嫌な感じがするの・・・。なんだか、皆、居なくなっちゃう気がして・・・、セイルは私の前から居なくならないよね!?セイルが居なくなったら、私・・・。」
セイルは泣きそうなメイスの頭に手をのせる。
「俺は一生、お前から離れない。お前こそ、俺の前から消えるなよ。」
セイルはメイスの唇に、そっと口を合わせると、コックピットに向かった。
少し、セイルの後姿を見た後、メイスも涙を拭き、修理が終わった03に向かった。
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