第二十二話 「記憶」 僕の名前は、ランド・セブ。 その当時、僕は、戦争なんてものは知らなかったし、経験した事も無い。むしろ知ってるほうが可笑しいと思ってた。だって、僕が小さい頃、お母さんが言ってたんだ。 「ランド。絶対、戦争はしちゃ駄目よ・・・。」 そう言った後、お母さんは急に泣き出した。その時は、「うん。」って返事しか出来なかったけど・・・。今思えば、あの時、どうして泣いているのかを聞けば良かった。 そんな時・・・。 「おい!ランド!!テレビ見てるか!?テレビ!?」 突然、ジョーニアスから電話がかかってきた。 僕は「どうしたの?そんなに慌てた声で。」 と、言うと、 「とりあえず、ASSを見てみろ!!」 言われるままに、僕はASSチャンネルに回した。両親も居たので、ちょっとテレビを隠す感じで見た。 見てみると、40代の男性がお立ち台みたいな所で、何やら演説をしていた。 「・・・今後の世界は人類の進化が必要です。しかし、我々シグマ家は幾度となく、地球議会軍に、このプランを伝えましたが、受け入れてもらえなかった。なら、武力でお教えするしか手は、ありません。ここで、私は「人類進化計画」を発表すると同時に、地球議会軍に対しての宣戦布告を言い渡します!!そして、この戦争が我々の勝利に収まれば、必ず、人類は新たなレベルに!分かり合える存在になる事が出来るのです!!」 僕は、唖然とした。受話器の向こうでは、ジョーニアスの震えた声が聞こえてきた。 「おい・・・。そんな、戦争なんて・・・そんな!!」 続いて、両親も。 「戦争が始まるのか・・・。くそっ!」 父さんが、新聞紙を床に叩き付ける。 「貴方、ここも、アクアセツルメントも被害を受けるの!?」 母さんが涙目で駆け寄って来た。 「可能性は有りうる・・・。とにかく、何時でも、逃げられる準備はしておくんだ。」 僕には、何が何だか、未だに理解出来ないでいた。 いや、正しく言えば、その時は、現実を・・・、真実を受け入れたく無かったんだと思う。 そして・・・。 一年と少しに渡り、戦争が終わった。 僕たち家族が住んでいるアクアセツルメントは、シグマからの制圧はされたが、怪我人は誰一人も居なく、攻撃もされなかった。 当然、戦争が終わると、戦後の復旧作業が始まる。僕が通っているジュニアハイスクールからも先生達が復旧の為、出て行ってしまい、授業も中々、捗らなかった。 2年後、復旧作業が一段落したらしいので、先生達が帰ってきた。その頃には、僕たちもハイスクールへの受験をを控えた年だったので、先生達が帰ってきてくれたのには、非常に嬉しかった。 それから、数ヶ月。 僕は勉強の休憩にと思い、テレビを付けた。その時は、両親も外出していた。僕1人だった。 見ていた番組がCMに入ったので、僕はチャンネルを回した。 ニュース番組だ。 「たまには、ニュースでも見るか。」 そんな感じで、僕はニュースを見始めた。 「あっ!・・・今、入ってきた情報です。」 アナウンサーが紙を受け取る。 「午後3時現在、シグマセツルメントは、2年前の戦争を仕掛けた、シグマ家代表のジング・シグマの義弟のアーサー・ゲイルに主導権が渡り、名前は、エンパイアセツルメントに改名され・・・!!そんな・・・。」 アナウンサーが黙り込む。だが、直ぐに喋り始める。顔からは、焦りが出ていた。 「・・地球議会軍に対し、'我々は、グレート・シグマ残党軍である。今後は、シグマ帝国を名乗る。地球議会軍に対し、再び攻撃をすると同時に、人類進化計画を再び提案する・・!まずは、手始めに、アクアセツルメントを制圧する。'・・・アクアセツルメントに住んでいる皆さん!大変だわ!!ちょっと、プロデューサー!!・・・」 アナウンサーはパニック状態に陥っていた。 僕は、心の中で呟いた。 「戦争・・・?アクアが・・・制圧される?」 すると、突然、警報音が鳴り響いた。 僕は、急いで外に出た。 それに驚き、近くの住民も家から出てくる。 ドォーン!!! 激しい爆発が起きた。南の方だ。 セツルメントに穴が開いたのだ。そこからは、MSが入ってきた。議会軍製では無かった。僕は、先ほどのアナウンサーの言葉を思い出した。 「アクアセツルメントを制圧する・・・。」 気づくと、MS部隊は町中を攻撃していた。アクアセツルメントのMS部隊も出撃し、交戦していた。 僕は、急に両親の事が心配になった。 「確か・・・、デパートに行って来るって言ってた!!」 僕は、走っていた。逃げ回る住民に逆らいながらも、そのデパートに向かって。普段は、母だけが行くのだが、今回は父も、たまにはと言う事で、付いていったのだ。 「あと、少しだ・・。」 僕がそう、思った瞬間、デパートの方が爆発した。 僕は、急いで走った。どうしても、悪いほうにしか考えられなった。 結果は一目瞭然だった。 瓦礫の下敷になっている、両親を僕は見つけることが出来た。 涙が溢れ出てくる。頭の中は、父さんと母さんが死んだ事でいっぱいだった。 「父さん・・・母さん・・・、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 気が付くと、僕は緊急用シェルターに居た。 「気が付いた?」 聞き覚えのある声だった。僕は右を見る。 アルミーだった。彼女とは、幼馴染で、小さい頃は良く遊んでいた。 「アルミー・・・。」 僕がそう呟くと、彼女は。 「貴方が泣いているのを発見した、叔父さんがランドを抱きかかえてここまで、連れて来たのよ。」 となりでは、その叔父さんがこっちを見ている。僕は、礼を言った。 「ランド・・・。私も・・・母さんが・・・、死んじゃったよ・・・。」 それを聞いた途端、我に戻った。 「ア・・アルミーの母さんも・・・!!」 「うん・・・。私、1人で逃げてきたんだけど・・・。」 アルミーの目からは涙が浮かんでいた。 アルミーの家は、両親が離婚してしまった為、父さんが居ないのだ。 そして、シグマの攻撃が終了し、アクアセツルメントはシグマ帝国に制圧された・・・・。 偶然とは、悲しいもので、ジョーニアスも、ヨンルもローレンスもマリマも、両親をその攻撃で失ってしまった。 その後、僕たちは比較的無事だった、アルミーの家に住むことにした。所持金を出し合い、なんとか生活出来る程度で、受験など考えられる余裕など無かった。 そして、その後、ブレイジング隊が制圧を奪還に来て・・・・。 「あっ!!・・・はぁ・・・寝ちゃったのか。ここは、仮眠室だ。FA−Eの補給には、かなりの時間がかかるから、休んでも良いぞ。って言われたから、仮眠室には来て見たけど・・・。今、思うと、どうして僕、戦ってるんだろ?あ、僕だけじゃなくて、ジョーニアスも、ヨンルもローレンスも、そしてマリマも。みんな、戦ってるんだ。・・・・アルミー・・君は、今何処に居るんだい?父さんと母さんの所かな?・・・」 僕は、涙が出てきたので、腕で拭き取ると、MSデッキに向かって、仮眠室を出て行った。 |
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