第二十五話 「復讐」


ランドはモロキの援護と言う形で、戦っていた。体力が限界に近づいていたからだ。
「大丈夫か?ランド?」
モロキが気遣うように訊く。
「大丈夫・・・・と言えば嘘になるでしょうけど、まだ行けます。」
ランドは汗だくだった。時折、スコープを上げ、手で汗を拭いていた。
モロキはそのランドを見ているだけで心が痛む感じがしていた。何故、15歳の、それも民間人の少年が戦争をしなければならないのか。そして、どうしてそこまでして戦うのか。
そのランドの姿を見ていれば、セイルが言う、次世代の人間・次の時代を引っ張ってゆく人材、と言うのが良く分かった気がした。
(ランドを帰艦させ、休憩させたい。出来れば、もう戦わせたくない。)
モロキの心の中は、それで一杯だった。モロキなりの優しさなのだろう。
だが、ここでランドの戦力を失うのは手痛い。今後の事を考えると、ランドには何も言えなかった。
「・・・・よし、ランド。次のポイントに向かうぞ。」
「はい・・。」

一方、セイルは敵艦を撃墜しながらも、エンパイアセツルメントに近づいてゆく。
「あと少しだ。何?前方から敵機・・・、データに無い!?新型か!?」
セイルはライフルを向ける。
敵機は高速で移動している。セイルは、そのパイロットからのプレッシャーとも感じられる恐怖を感じた。
ライフルの射程内に敵機が入ったので、ライフルを乱射する。
だが、その赤い機体は、軽々しビームを回避しR3に徐々に近づいて行く。
「速い!!・・赤い機体・・・、まさか、プロト1・・・!」
セイルが呟くと、その赤い機体はR3を高速で通り越して行ってしまった。
「何!?」
その行動に不思議に思うセイル。それと、何故、自分を通り越して行ったのかも気がかりだった。

その赤い機体のパイロット、それこそプロト1が乗る機体だった。
「私のイライラ感を作っているのは・・・奴では無い。」
プロト1はそう呟くと、フルスピードで何処かへと行ってしまった。

〜ポイント502〜
グライスがライフルを乱射する。
アーサーも軽々と回避し、ライフルで対抗する。
グライスは念のため、ビームシールドを展開する。
「ここは、G・ソードで斬る!!」
グライスはライフルを腰の部分にしまい、背中のバックパックに装備されたG・ソードを持つ。
「うぁぁぁぁ!!」
グライスはアーサーのギガントスから放たれるビームを回避しながら、接近しようとする。
「ちっ!」
それに対し、アーサーは舌打ちをし、ビームサーベルを手にする。
互いが剣を振りかざす。

01のG・ソードを持っていた右腕は斬られ、ギガントスはサーベルの頭部のアンテナを斬られた。事実上、アーサーの方が一枚上手だ。
「はははは!!!これで、G・ソードは使えなくなったな!!」

ほぼ同時期、モロキとランド、2人はグライスとアーサーが戦っている、ポイント502に来ていた。
「ランド!レーダーにグライス大佐の01を感知したぞ。」
先を進んでいたモロキが言う。
「僕も感知しました。どうやら、未確認とMSと戦闘してるみたいですね。んっ!!・・・この感じは・・・何だ?」

「レーダーに、02とE・・・?モロキ大尉とランド君か!?」
グライスがレーダーを見て言う。
「ふふふ・・ははは!来たなEVOLVE!!」
アーサーが怒鳴る感じでEVOLVEにライフルを向ける。
「このパイロット・・・、何だ!?」
ランドが呟く。それと同時に、モロキから通信が入る。
「おそらく、やつがアーサー・ゲイルだ。シグマ帝国の総帥な。以前、俺たちが戦った機体に似ているし、グライス大佐とも相当に戦っている・・・手強いぞ!」
モロキの口調には、ランドにアドバイスをすると同時に、弱気になる自分を振り払うように強気になろうとする心情が入っていた。
「何ですって!!あれが・・・、アーサー・ゲイル!!僕の・・・皆の両親を奪ったシグマ帝国の総帥・・・!!」
それを聞いたランドは、自然と手に力が入る。スロットルが弾き壊れんばかりに、ランドはスロットルを握り締めている。
「待て、ランド。ここは、グライス大佐と共にチームプレーで行くぞ・・!!」
モロキが、そう言った時には既にランドは、サーベルを抜きギガントスに接近していた。
「あの馬鹿・・・!!」
モロキが呟く。
「くそっ!!くそっぉぉ!!」
ランドが叫びながら、ギガントスにサーベルを振り回す。
今のランドには、アーサーに対する復讐心しか無かった。

「EVOLVEに乗るとは・・・よほどのニュータイプだな!!」
アーサーは、少し嬉しそうに言う。
ギガントスもサーベルで対抗し、Eのサーベルにぶつける。
アーサーも通信回線を開く。
「ふっ!EVOLVEに乗るとは!貴様こそ、人類が進化した姿なのだろうな!!」
「EVOLVE!?だと・・!!この機体の名前は・・イプシロンのハズ・・・。」
ランドが戸惑っている間に、グライスの01とモロキの02が2人の戦闘に割って入ってきた。
「ランド!お前じゃ、アーサー・ゲイルは倒せん!」
グライスがランドに言う。
「そうだ。ここは3人で攻める!そうすれば・・・!!」
続いてモロキも言う。だが、ランドは涙を溢していた。
「モロキ大尉も・・・グライス大佐も・・・アーサーに恨みはありますか!?僕は・・僕は、こいつのせいで両親を奪われたんだ!!その気持ちが・・・!!」
「ふざけんなぁ!!!!」
モロキが怒声を上げる。
それに驚くようにランドが顔を上げる。
「お前だけが、戦争の被害者だってか!?お前以外は、アーサーに恨みは無いだと!?・・・俺たちは、戦争をしている!!戦争をしている者、全員が被害者なんだよ!この戦いで、多くの仲間が死んだ。俺だって、アーサーには恨みは、当然ある!セイルも、メイスちゃんもグローバー艦長も隊員全員がそうだ!戦争を起こした、アーサー・ゲイルにな。だから、皆はアーサーを許せはしないし、倒そうともする。だが、お前1人で戦ってる訳じゃないだろ?・・・もう少し、周りを見るんだな。お前なら出来るだろ。」
モロキは、そう言うと、アーサーの元に向かった。
ランドは、下を向いたまま泣き崩れていた。
「う・・・う・・僕は・・・僕はどうすれば良いんだ・・・。」

「アーサー!今すぐ、人類進化計画を捨てろ!今の時代に不要だと、何度言えば分かる!」
グライスがライフルを連射しながら叫ぶ。
「何を言う!人類進化計画こそ、今の時代に必要なのだ!このまま、人が行き続ければ、必ず世界は破滅する!だから、議会軍を排除し、真の目的の、地球の歴史、自然、全てを破壊する!!そうすれば、地球は生き返る事が出来るのだ!そして、人類も進化する!そうすれば、人同士の争いを無くし、人間は一致団結し完全なる平和な世界が生まれるのだ!」
その言動に、モロキは唖然とした。人類進化計画は、真の目的があったのだ。それはグライスからも聞いてはいない。

そのアーサーの言葉は、ランドにも聞こえていたるまだ通信回線が開いていたからだ。
「そんな・・・、地球の・・・歴史、自然を破壊だって・・・。世界の完全なる平和だって・・・。」
ランドには、とうてい想像も出来ない世界だ。
ランドは涙を拭き取ると、スロットルを握り締める。だが、レーダーに反応があった。後方からだ。未確認のMSで、しかも速い。
「この感じ・・・!最初にあった恐怖感!!あいつが!!」
ランドは後方を見る。アーサーを倒すことを一時辞め、後ろの敵を倒す事を選んだ。
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