第二十六話 「REMEMBER・MEMORY」


「あいつが・・・あいつが、このイライラ感を!!殺す!!」
プロト1が眉間にしわをよせながら怒声を上げた。
その口調から、いくら洗脳を強化されているからといって、かなりの精神が不安定なのが分かる。
「は・・速い!?Eが、相手の動きに追いつけないなんて!!」
ランドがプロト1の乗る機体の機動性を見て絶句する。
「この、グリーヴァスなら、ガンダムなど敵では無い・・・。」
プロト1がライフルを連射する。
それに対し、ランドはEのビームシールドを発生させ、相手のビームをギリギリで回避する。
「くっ・・!一瞬でも、気を抜いたらやられる。なら!!」
ランドは、赤外線をランダムに放出し、ミサイルを発射させた。少しでも、敵機の動きを封じ、尚且つ反撃のチャンスを作ろうと思ったからである。
グリーヴァスは、ミサイルをライフルやバルカンなどで撃墜しようとするも、ミサイル自身が回避をするので、中々攻撃が当たらない。
「くそっ!ビットを使う!!」
プロト1が、グリーヴァスの肩に取り付けられていた、ビットを射出する。
「当たれ!!グリーフビット!!」
敵のビットには、多数のビーム発射口がある。激しく、動きながらビットから、ビームが発射される。その多数のビーム発射口から繰り出されたビームは、ミサイルを次々と破壊して行く。
ミサイルも、逃げ場の無い多数のビームにただ破壊されて行くだけだった。
「ちっ!!ライフルで!!」
ランドは舌打ちをする。そして、ライフルで敵のビットを破壊しようとする。
「やらせんさ!あのガンダムを落とせ!!ビット!」
プロト1が再び、ビットに指示を出す。
ランドも、ライフルでビットに攻撃をするが、中々当たらない。相手がかなりのニュータイプ能力があると見た。
ビットから、ビームが発射され、Eの左肩に直撃した。
「うぁ!!」
その衝撃で悲鳴を上げるランド。だが、FAの装甲盤フォーステンペストのおかげで、左肩に付いていた装甲盤が破壊されただけで済んだ。
しかし、まだビットの攻撃は続く。

一方、セイルは何とか、エンパイアセツルメント内部に侵入出来た。
セイルがドアを開ける。と同時に、機関銃を構える。
だが、敵の兵は1人も居ない。
「警備が手薄か・・・、ここが動力源。」
セイルは、キーボードをいじくると、ディスプレイに先ほどの議会軍艦隊を全滅させた大型のレーザー砲のデータが出てきた。
「やはり、セツルメントに動力を使い、発射していたか。道理で市内の電気が1つも付いていない訳だ。だが、セツルメントのENはまだ半分残っている、バラスートUを沈めるだけなら、十分な量だな。」
そう言うとセイルはR3に搭乗し、エンパイアセツルメントの動力源へと向かった。

「あれか!」
長いMS用の通路を通ると、動力源があった。
「これは、賭けだな。」
セイルが呟くと、R3のビットが射出され、動力源に向かってビットが移動して行く。
ビットがビームを発射し、動力源に攻撃して行く。
「ヒット&アウェイか。さて、ここからが勝負だな・・!」
セイルは向きを変え、再びMS用の通路に入る。脱出するためだ。
動力源が爆破する。そして、その爆風と炎が通路に入り、R3の後ろまで近づいて居た。
いくらMSと言えど、核爆発の数十倍の爆風と炎に包まれたら一溜まりも無い。
「R3・・・、ここで死ぬのは御免だがな・・・!」
セイルからは、汗が出ていた。
セイルの頭の中は、メイスの事で一杯だった。
(ここは、生きて、メイスと俺は・・・!!)
「生きてみせる!!!」
セイルが叫ぶと、それに応じた用にR3のブースターがパワーダウン寸前まで機動する。

激しい爆発がエンパイアセツルメントを大破させた。
その爆発の中から、R3が出てきた。
「ふぅ・・・、悪運が強いんだか何だか・・・。こちら、セイル・ギア聞こえるか?親父。」
セイルは、ブースターを含む全てのバーニアが使えなくなってしまったため、バラスートUへの、救援要請の為、通信を行った。

「エンパイアが大破した・・・?!大破だと!!貴様ら!数十隻の艦隊がありながら、エンパイアの大破を許したのか!!!」
エンパイア付近に居た艦隊からの通信でアーサーは激怒していた。
「これで、終わりだ!アーサー!今すぐ、投降しろ!!これ以上の戦いの意味は無い!」
グライスが言うと、アーサーは何を思ったか笑う。
「く・・く・・く・・ふふ、はっはっはっ!投降だって!?・・はぁぁっ!ふざけるなよ!我らに2度の敗北は、無いのだ!!」
アーサーがライフルを乱射し、グライスの01もダメージが増えて行く。
グライスも頭部から出血していた。ビームの直撃の反動で頭を何処かにぶつけたのだろう。
「グライス大佐!」
モロキがG・ガトリングを発射するが、急接近して来たアーサーのギガントスのサーベルにG・ガトリングが破壊されてしまう。
「ぐあぁっ!」
モロキが悲鳴を上げる。
「ならば、僕1人で!!ブレイジング隊を皆殺しにしてやるさ!!!」

「いい加減に、落ちろ!!ガンダム!!」
プロト1が怒りながらライフルとビットの同時攻撃を行う。
「そっちこそ、もう止めるんだ!本拠地のセツルメントは爆破した!」
ランドが通信回線を開くと、相手パイロット、プロト1と呼ばれる女性の顔が通信用のディスプレイに表示された。
「!そんな・・・もしかして!?」
ランドには、その顔に見覚えがあった。
「アルミー・・・アルミー・グン!?」
ランドがライフルを持っている右手を下ろす。
「何だ・・・うっ!!」
プロト1が頭を抱える。頭痛で苦しんでいるようだ。
「私は・・・私はお前など知らない!!!」
「そんな・・・馬鹿な!?」
だが、確かに、あの顔と声はアルミーだった。
アルミーの攻撃により、装甲盤のフォーステンペストが段々と破壊されて行く。
「く・・く、くそっ!!」
ランドは叫ぶと、フォーステンペストと大型のブースターを外した。
「覚えていないのか!?アルミー!!」
ランドは無理やり接近する。
「私の名前は、アルミーじゃない・・!!」
「いいや、君はアルミーだ!その忘れもしない顔と声、アルミー!!」
アルミーはバルカンで攻撃する。ランドは舌打ちをして後退する。
「もしかして、強化が強くなって記憶を・・・、アルミー思い出せ!僕は・・・僕は、ランド・セブだ!!」
アルミーの頭の中で、その言葉が駆け回る。激しい頭痛に見回され悲鳴を上げるアルミー。
「チャンスだ!!」
ランドは、サーベルを抜くとライフルと、頭部を破壊した。あえて、メイン・カメラを封じたのだ。
「アルミー、ハッチを開いて!、バラスートUに行こう!そうすれば、ジョーニアス達も居るから、記憶なんて思い出すよ!!」
「う・・うるさい!お前は・・・お前は殺さなきゃ、このイライラ感は・・・!」
アルミーがスロットルを握ると、Eを蹴飛ばした。
「アルミー!!」
ランドが叫ぶ。
「うるさい!黙れ!ここから、消えろぉぉ!!!」
アルミーは、バックパックにあったビームバズーカを発射する。
ランドは反応が遅れ、ビームシールドごと左腕を破壊される。
「ぐぅ!」
「終わりだ!!ガンダム!!」
グリーヴァスがビームバズーカをEガンダムに向ける。そして、コックピットの所をロックオンする。
「アル・・・ミー。」
「死ねぇぇ!!・・・うっ!!」
アルミーを再び頭痛が襲う。
「アルミー!自分に負けちゃ駄目だよ!君は、強い子だ!そして・・・今の俺にとって、一番大切だから!!」
ランドには、見えた、グリーヴァスから黒い色をした悪意の様なオーラが消えて行くのを。
アルミーがそっと、口を開く。
「ラ・・・ン・ド?」
どうやら、記憶を取り戻した様だ。
「アルミー・・・記憶が。」
ランドの目からは涙が溢れ出ていた。
「ランド!!」
アルミーはランドの名を叫ぶと、ハッチを開ける。
それに気づくとランドもハッチを開ける。
「良かった・・・良かったね。・・アルミー。」
ランドはそう言うと、向かってきたアルミーをそっと抱きしめた。
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