第二十七話 「悲しすぎる代価」 抱き合っていたランドとアルミーは互いにもう一度、相手の顔をじっくり見る。 すると、ランドが口を開ける。 「アルミー・・・生きてた。」 それを聞いたアルミーも口を開き、 「私も・・・ランドにまた会えて・・・嬉しい。」 ランドは聞きたい事が山ほどあった。セツルメントからランド達が脱出した際、アルミーは何をしていたのか、どうしてシグマ帝国に居るのか、そして・・・何故洗脳を受けたのか。 だが、今は戦闘中。ましてや、グライス大佐達が死に物狂いでアーサーと戦っているこの時に、ゆっくり話しをしている暇も実は無かった。 「アルミーの乗ってたMS・・・あれじゃ、どうにもならないね。アルミーはバラスートUに帰艦するんだ。いいね?これから、グローバー艦長に連絡をするから・・・。」 ランドがコックピットのシートに座り、バラスートUに通信をしようとするが、アルミーはコックピットの中に入ってきた。 「私も・・・、ここに居させて。」 そう言うと、アルミーはシートの後ろにあるサブシートを起こし、座る。 「駄目だよ!バラスートUの方が安全なんだから!ここに居ちゃ・・・。」 ランドがシートから立ち上がり、言う。 「貴方の・・・そばに居たい・・・もう、離れ離れになるのは・・嫌だから、それが理由じゃいけない!?」 アルミーは頬を少し赤くしながら言う。 それを聞くとランドは少し照れ笑いし再びシートに座る。 「これで、僕は嫌でも、死ねなくなったな・・・。」 〜バラスートU〜 「セイル大尉のR3ガンダム、MS格納庫への収容完了しました。」 ロムが言う。 「敵艦からの応答は?」 グローバーがデュースに訊く。シグマ帝国には、エンパイアが爆破したために無条件の降伏を呼びかけていた。 「駄目だわ・・。以前、我ら降伏せず・・・としか返って来ません。」 グローバーにも決断の時が来ていた。 「仕方ない!メガ粒子砲のENチャージを始めろ!目標は敵艦隊、バラスートU付近のMS部隊は、艦のENチャージが終了する5分間の間、援護に回れ。」 グローバーの決断に反論するものは居なかった。それが、隊員全員が、考えていた結果だったからだ。 ほぼ、同時期、モロキとアーサーは互いのビームサーベルをぶつけ合って居た。 「くそっ!中々、シツコイぜ・・・!」 モロキが呟く。 「落ちろよ!落ちろよ!落ちろぉぉぉ!!」 アーサーは狂ったように叫び続ける。 これが窮地にに追い込まれた人間の末路なのだろうか。 「見つけた!アーサー・ゲイル!!」 ランドが言う。 「アルミー・・・、これから僕はアーサーを打つ。やれるかどうかは分からないけど・・・、頑張ってみせるよ!」 そうランドが言うと、アルミーは顔を縦に振る。 すると、ランドはバックパックの、ツインビームランチャーを構える。 「モロキ大尉!離れて!!」 ランドが叫ぶと、モロキは後退する。ランドはビームランチャーを撃てるだけ乱射した。 「くっ!」 アーサーは、そのビームランチャーのビーム弾を避けるので精一杯だ。 気づくと、両方のランチャーも玉切れを起こしていた。 すると、ランドはバックパックからランチャーを切り離し、ライフルも捨て、ビームサーベルを手に取った、既に左腕は破壊されているため、右手にしか持てなかった。 アーサーは前方から迫り来るEVOLUVEが怖く感じた。今までと違う、オーラと言う物なのだろうか。 「くそぉぉぉ!!」 アーサーが叫ぶと、ライフルを乱射する。 ランドはそのビームを回避するが、中々接近出来ない。 だが次の瞬間、グライスの01がサーベルでアーサーの右腕を破壊し、ライフルを封じた。 「くそぉぉぉ!?・・ジング・シグマぁぁぁ!!」 アーサーが叫ぶ。ランドは、確かに聞いた。アーサーがグライスに向かってジングと叫ぶのを。 「グライス大佐・・・・ジング・シグマ?まさか!!!」 「勘が良いな・・・まぁ、いずれ分かる事だ。」 グライスがランドに通信をする。 「憎かろう、この戦争・・・全ての原因のジング・シグマ・・・それは私だ・・・。今まで、騙していてすまなかったな・・・。」 ランドは、下を向き黙っている。 だが、グライスは淡々と喋り続ける。 「だが、これ以上、全大戦のしかも敗者の総帥が長居してはいけない。今すぐ私は、君の前から消えるよ。アーサーと共にな。」 ランドが顔を上げる。つまり、グライスは死ぬと言ったようなものだ。 「・・駄目ですよ!グライス大佐!・・・確かに、僕はジング・シグマは許せないと言いました。・・でも!僕はグライス大佐は、僕にとっては尊敬に値する人です!だから、死ぬなんて言わないで!きっと、大佐が居ないと駄目だって人は居ます!過去に囚われないで、未来に希望を賭けて見ましょうよ!!グライス大佐!!」 ランドからは涙が溢れ出ている。後ろでアルミーは黙ってまま、ランドに賭ける言葉も無い。 「最後まで、私をグライス大佐と呼んでくれて嬉しいよ。ランド君。モロキ大尉。」 グライスがモロキを呼ぶと、モロキの02がEの隣に移動する。 「セイル大尉や、グローバー艦長には、迷惑を掛けたと言っておいてくれ。それと、今から送る伝言内容を全隊員に言うんだ。」 「・・・了解しました。」 モロキは敬礼をすると、バラスートUに向かって行ってしまった。 「さて、アーサー、死んでもらうぞ!私と共に!!」 モロキが行った事を確認すると、01はアーサーの元へ向かう。 「ふざけるなぁ・・!!僕は、ここで死ぬわけには・・いかないんだよぉぉぉ!!!」 アーサーが叫ぶ。左腕にサーベルを持つと01に接近する。 「アーサー!!これで終わりだ。人類の進化は、少年がしてくれる。我らの時代は既に終わっているのだ。貴様は答えを急ぎすぎた!!」 ジングが叫ぶ。すると、01はギガントスに張り付いた。 「な・・何を!?」 アーサーが言う。 (さらばだ・・・・、ランド君、セイル、グローバー!!) 〜バラスートU〜 セイルは機体が使用不可になってしまったため、バラスートUの砲手をしていた。 (はっ!!ジング!!・・・今まで、ありがとう。) セイルは敬礼をする。 そして、バラスートUに帰艦してメイスも、 (何?この感じは・・・、グライス大佐!?やっぱり・・責任を感じて・・・。) メイスも敬礼をする。すると、同時に帰艦してきた02のコックピットからモロキが出てきた。目からは涙を浮かべ、同じく敬礼をしていた。 その後、ランドの目の前で01はギガントスを巻き込んで自爆した。 |
|
BACK 目次 NEXT |