第二十八話　「自然の流れに・・・」 ランドは目を開ける。 周りには、何も無い。ただ、自分だけが居てライトを浴びている気分でいた。 「ここは・・・。」 思わず、口を開き言うと、先の方で何かが光った感じがした。 ランドは、その光まで走る。 近づいて見ると、光の玉、とでも言うのだろうか。光の玉は発光しながら浮いていた。 「・・・君は・・・誰？」 玉に、誰？と訊いたランドは、どうして誰？なんて訊いたのかが自分でも分からなかった。只、そんな気がした。人のような気配がしたのだろうか。 「・・・私は、君を良く知るもの・・・。」 「！！・・・僕を・・知るもの！？」 確かに、光の玉は喋った。 その発言に戸惑いを隠せない。 「私の名は、イプシロン。・・・いや、本当の名は、ＥＶＯＬＵＶＥ。」 「じゃあ！、あのシステム・・・。でも、ＥＶＯＬＵＶＥってどう言う事なの！？」 ランドが叫ぶと、その声は響く。まるで、物静かな箱の中にいるかのように。 「私は、元々シグマ帝国が使うはずだった機体。だから、人類進化計画を唱えるシグマ帝国の'進化'の名をもつ者。」 ランドは、冷静にこの状況を把握しようとする。が、ここで疑問が浮かぶ。 「ここは・・・どこなの！？」 「ここは、私の・・・システムの中の世界。今、君は私のシンクロしている。だから、話せる。今、この場で君の、知らない事は私が答える。だから、迷わないで。」 光の玉がランドの目の前にまで迫る。 ＥＶＯＬＵＶＥと名乗るこの光る発光体。セイル大尉が言うにはイプシロン・・いや、ＥＶＯＬＵＶＥとは人口知能システムが導入されていると言っていた。それで、この場の状況はあまり飲み込めないものの、システムとシンクロしていると言う事だけはなんとなく分かった気がしていた。 するとランドは、口を開く。 「・・・じゃあ、人類進化計画って・・・本当の目的を知ってる？」 「君も聞いただろう？人類の進化・・・。アーサー・ゲイルが言うには、第１の条件、議会軍の壊滅。そして、第２の条件が、地球の、自然・歴史の破壊。すれば、人類は進化する・・・とは言われている。」 「言われている？」 システムの発言に疑問を感じるランド。 「確かに、人類の進化は必要だ。だけど、私は君がガンダムに乗ることで、現在の人の有り方と言う物を見てきたつもりだ。人類の進化には、地球の破壊をしなくとも、進化への方程式はある。」 「そ・・・それは、何！？」 ランドが言うと、辺りが光だし、ランドは手を目の前に差し出す。 「・・・これは。」 ランドが絶句する。 周りには、人間の生い立ちが早送りのように映し出される。 「これが、人類の生い立ち。そして、人類が進化して行く映像だ。」 そこには、人類の誕生から、旧世紀の歴史、そして、過去の戦争などの映像が写された。 「これが、人間の・・・進化して行く姿・・・。」 ランドが映像を見ながら呟く。 「事実、過去よりも人類同士の戦争の数は少なくはなってきている。」 「・・・それは、地球側が宇宙の独立を認めたから・・・？」 ランドが訊く。 「それも人類が進化したからこそ、だ。」 「でも！それは、今の議会軍・・・、連邦政府が弱体化したからじゃ・・・。」 ランドは、システムの方を向く。 「でも、今まで独立を認める事はいくらでも出来たはず。でも、それを決めたのもまた運命。人は、自然の流れに乗っていけば、何時かは、運命の日がやってくる。それが少しでも理解できなかったら・・・、宇宙の独立は難しいものだ。」 ランドは再び、映像を見る。 「グライス大佐は・・・・こう、言っていたね。」 システムが喋りだす。ランドは映像を見ながら耳を傾ける。 「答えを急ぎすぎた、と。グライス大佐は、分かっていたんだろうね。人類の進化は、自然の流れに沿っていけば何時しかは結果が出ると言う事をね。」 映像が消える。また、周りは真っ暗になる。 「人類の進化は、自然の流れに任せる。これが、真実・・！」 ランドがシステムの方を向き、言う。 「そもそも、何故人類の進化が必要なのか・・・。君は知りたいハズだよ。」 システムが言うと、ランドは首を縦に振る。 「人と自然は、共に両立していかなければ、ならない。例えるなら、シーソーのような物。片方が下に下がれば、下がった方が上へと上がる。そして、下に下がった方が上へと上がるため、上に居た方は、下へと下がらなければならない。それが繰り返し行われるが、双方が同じ位置を保つのは、難しい。分かるかな？」 システムがランドに訊く。 「つまり、人類進化計画は、自然と人、双方の立場の位置を同じにしようとしたのか！」 ランドが言った事は正解である。 「そう。片方が偏っていては、増長してしまうだけだから。・・だから、ジング・シグマとアーサー・ゲイルは自然と歴史、議会軍を破壊しようとした。そうすれば、双方の立場は再び同じ位置に保たれる。だけど、それは人の手によって保たれてはいけない。悲しみと絶望に満ち溢れ、再び双方の立場は崩れてしまう。でも、自然の流れに沿っていけば、人が行き続けるかぎり、保たれる。」 システムの光がより、強くなる。 すると、ランドは口を開く。 「君は・・・一体どうしてそこまで・・・！？」 「私は、議会軍の過去の資料と、人間のサンプルが融合した者。・・・でも、私の過去は覚えていない。」 その場に長い沈黙が訪れる。 ランドは、酷い事を言ってしまったの後悔する。 システムは尚、光続けている。 すると、その沈黙をかき消すかのように、ランドが口を開く。 「ごめん。でも、これだけは言えるよ。これで、僕は生きていける。希望を捨てずに生きていける。大切な仲間達と・・・、アルミーと。」 「それが聞けて良かった。でも、まだ戦いは、終わらない。まだ、根元が残っているから。その根元を倒すのも、君のする事。」 システムが軸に周りが光りだす。 ランドは眩しくて、目を開けていられず腕を目の前にかざす。

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