第七話 「進化のために・・・」 〜セイルの部屋〜 「ほんとはね・・・紹介してるとき先輩がいたのに気づいてき泣きたかったんですよ・・・でも泣いたら・・・なんか・・・」 「・・・・」 メイスは泣きながら喋り続けている。以前セイルは黙ったままだ。フライパンで焼いていた料理も黒こげになり緊急防止システムが火を止めた。警告音が鳴るがセイルは気にもとめていなかった。 「・・・先輩・・・・」 「!!何?」 メイスが涙を拭きセイルの方を見る。 「先輩・・・・好きです・・・。」 セイルの顔が少しだけ赤くなると同時に心臓がバクバク言っている。セイルはあまりにも経験したことのない心臓の音に戸惑った。 「先輩は・・・私の事・・・好きですか?・・・」 メイスの瞳がセイルだけを捉える。 「俺だって、あの時上層部からの通信で配属されることを聞かされて・・・そこに配属されたらメイスに会えなくなるのが・・・辛くなるって思って・・・。」 メイスはその言葉に驚く。メイスは両手を膝の上に置く。 「・・・俺もスクールの時から、お前のことは好きだった・・・。」 メイスは笑顔になった。そしてまた涙がが瞳からこぼれていた。 ♪♪♪♪♪ そんな空気を消すかのようにアナウンスの音が鳴る。 「メイス・キルリ曹長とモロキ・グレン少尉は直ちにMSデッキに集合してください。」 「・・・あっ!!私だ・・・。」 「あとモロキもか・・・?」 メイスとセイルが同時に立ち上がる。 「多分、新型機のロールアウトね。ようやく私も専用機が・・・」 メイスは笑っていた。 セイルは何事も無かったかのように、坦々とメイスに話しかける。 「俺もMSデッキに行くんだ、Rの調整をさ。」 「じゃあ、一緒に行こ。セイル・・・」 そう言ってメイスはセイルの唇に背伸びしてキスをした。 〜MSデッキ〜 セイルとメイスが走ってくる。 「遅いぞぉ!!メイス曹長ぉ!!」 「す・・・すいません!!モロキ少尉。」 「んっ!!」 モロキがセイルの存在に気づく。 「なんで、お前が居るんだよ・・・。」 「俺はRの整備だよ!!」 「・・・ま、いいさ。見てくか?新型MS。」 セイルはモロキの思いもよらないセリフに驚きを隠せないでいた。 「・・・あぁ、ちょっと気になるしな。」 MS前にきた。最初に声を上げたのはメイスだった。 「へぇ〜、これが・・・。」 メイス専用機 ラン・ドゥーム 遠距離からの攻撃に優れ、前線に出るMSの援護を得意とし、敵の射程外からの攻撃が可能なMSである。 モロキ専用機 ラゾ・ケィム 近〜中距離を得意とするアタッカーMS。運動性が非常に高くパイロットの腕しだいでは、無傷で帰艦できるほどの保障付き。 「セイル!!Rの整備じゃぞ!!」 「!!今行くよ、おっちゃん!!」 シルニーがセイルを呼んでいる。そしてセイルは走っていった。 メイスはそのセイルを見ている。 「だから、チーフと呼べ!!」 シルニーはセイルに空手チョップを喰らわした。 「いって〜〜!!!!!」 MSデッキ内に、セイルの悲鳴が鳴り響きクルー全員が笑い出した。 一方、ニュウ・ロス方面・第一隊シグマ艦。 戦艦、ローリンが3隻いる。その中の指揮戦艦の中にジング・シグマが居た。 ジングは窓の風景を見ている。 (亡霊・・・あのような形で再び会うとはな・・・。今度こそ議会軍の、呪いから解放してやる!!) 「メイス曹長・モロキ少尉、これより射撃テストを始めます。」 ここは、ひろい荒野。そこにはメイスとモロキが搭乗している新型MS2機が武器を構えていた。 「了解!!」 2人が声を揃える。 「よし!!メイス曹長、敵はラ・ムジィックの射程外に居る設定だ。一発で仕留めるんだ。」 「了解!!」 マックスがメイスに命令を下す。 ガコン!! メイスが背中のバックパックに装着されているビームキャノン砲をスタンバイする。 ピピピピッ!! 敵のロックオンが始まった。 ピッ!! (打つ!!) ドォォォォン!! 激しい発射音と共に敵ドローンに向かってゆくビーム。 ドォン!! 「ドローン!!爆破確認!!」 「メイス曹長!!次だ!!」 敵ドローンが出現した。ロックオンが開始される。 「打つ!!」 メイスが発射ボタンを押そうとした時だ。ドローンが左右に動き出したのだ。 (危ない!!) メイスはギリギリ発射ボタンを押さずに済んだ。 「実戦では、敵が動かないとも限らんぞ!!メイス曹長!!」 マックスの信頼を含めた怒声がコックピットの通信で聞こえた。 〜MSデッキ〜 セイルとグローバーが口喧嘩をしていた。 「だから、ビットのテストをしたいんだよ!!」 「今は、メイス曹長がテストをしていて、敵ドローンが無いんだ!!それに、何故ビットのテストを!?」 「操れたんだよ!!ジングが前に襲撃に来た時、俺がビットを操ってジングにダメージを与えて・・・それで撤退したんだぜ!!ジング総帥はよ!!」 「・・・・・」 グローバーは黙ってしまった。 「ならば、1人で勝手にやっていろ!!私は知らんぞ!!」 「やりぃ!!おっちゃん!!パーツ換装だ!!」 その言葉に、シルニーがセイルの方を向く。 「チーフと・・・・まぁ、ええわ。」 そして、テスト場ではメイスとモロキの射撃テストが終わっていた。 「2人とも成績は良いようだな。これでテストは終わりだ。バラスートに帰艦するぞ。」 「ふぅ〜・・・やっと終わった。」 メイスが腕を伸ばす。 「しかし、射撃の腕はすばらしいものだな。メイス曹長。」 「はい。モロキ少尉。これでも、スクール時代と、以前居た部隊で後方射撃は得意だったんで。」 一方、セイルはビットの的となる”標的”を探していた。 「ここにも何も無いな・・・あんまりバラスートからは離れるな!!って、おっちゃんも言ってたし・・・。おっ!!」 セイルは何かを見つけた。 「ローリンの残骸か・・・丁度いいじゃん!!」 ・・・そしてセイルはビットを準備した。 (標的、ロック・・・集中しろ・・・ビットの動きをイメージするんだ・・・・!!行け!!) ビットは発射され、激しく動きながら残骸に迫って行く。 (うっ・・また変な感じが・・・) バシュ!!ビットから放たれたビームは残骸を直撃。そして小さな爆発が起きた。 「や・・・やった・・・!!やっぱり俺はビットを・・・」 ビー!!ビー!!ビー!! 「WARNING!!敵か!?こんな時に・・・!!」 敵もRの存在に気づき、ローリンから主砲が発射された。 「くそっ!!」 セイルはギリギリ避け、バラスートに信号を送った。 〜バラスート〜 「セイル少尉から敵襲信号です!!」 「なんだと!?ロム、位置は!?」 「ここから、北西303・64−2!!」 「少し遠いな・・・バラスート、全速全身!!急げ!!MSデッキ!!出撃できるものは出撃しろ!!」 〜MSデッキ〜 「何?!敵襲だって?セイルが1人で?あのバカ!!」 ドォォン!! メイスのラン・ドゥームが発進した。 「補給が済んでないのに!?」 アレンが駆け寄って来る。 「何!?ホントか?アレン!?だったら俺も出るぞ!!」 モロキは、パイロットヘルメットをかぶりMSの電源を入れた。 (無理すんなよ!!セイル・・・メイスちゃん!!) セイルはビットをスタンバイした。 「こうなったら、ブリッジを打ち抜くしか・・・!!行け!!」 ビッ!ビッ!ビッ! 「うあ〜〜!!」 セイルに、おそらくローリンの人間とされる悲鳴が聞こえた。 (う・・・・!!なんだよ・・・これは・・・!!) 気づくと、ローリンは炎上し地面に墜落。その衝撃で爆破してしまう。 その後ろに、ローリンが2隻居ることにセイルは気づいた。 「まだ・・・居るのかよ・・・。」 しかも、MSが一機出てきた。 「あれは・・・レゾン・・・!?」 「亡霊・・・楽にさせてやるからな・・・!!」 「前みたいに、ビットで・・・!!」 セイルはビットを発射した。 「二の舞は踏まん!!」 ジングはビームライフルでビットを破壊した。 「ビットが?!くそっ!!」 セイルはビームライフルを持っていなかったため、ビームサーベルを手にした。 「サーベルだけで、戦うつもりか・・・?亡霊のパイロット!!」 レゾンがライフルを乱射する。セイルは避けるも攻撃するチャンスが無い。そしてレゾンはサーベルを準備した。 「とぁっ!!」 「ちぃ!!」 ガキキキキキ!! 激しい閃光を散りばめながら、両者のサーベルがぶつかり合う。 「・・・亡霊のパイロット・・・聞こえているだろう?」 ジングから接触回線で通信が入ってきた。 「!!ジング・シグマ!?」 「ふっ。若いな・・・んっ?」 ジングの目には、セイルの姿がグローバーと重なった。 (グローバー・・・?何だ?) 「人は、進化する意味があるのか!?なぁ?その理念はなんなんだ!?」 ジングは、まだ名も知らない亡霊のパイロットからのいきなり疑問に少し仰天していた。 「ふふふ・・・。人は、呪縛に縛れているのだよ!!議会軍と言う存在にな!!」 「なんだと?どういうことだ!?」 セイルが聞き返す。 「まだ君は若い・・・我々の事情を知るには早すぎたか・・。」 「何!?」 セイルはRのバルカンを使った。ジングはそれを使うのを分っていたかのようにバルカンの射程外に後退する。RはR・バスターの発射トリガーを握った。 「落ちろぉぉ!!」 バシュュュ!! 「ちぃ!!」 レゾンの左腕を焼き払った。 「この程度で!!・・・・・終わりだ!!亡霊!!」 レゾンは、ライフルと固定式ミサイルを乱射しRの右腕、左足を次々と破壊して行く。 「ちくしょう!!R動け!!」 Rはその場に倒れこんでしまった。 レゾンは、腰に装備されているビームランチャーを準備した。 狙いはコックピットである。 「パイロット・・・亡霊は眠らなけれぱ、ならないのだよ・・・永久にな!!」 ブブブ・・・ ランチャーのENが貯まってくる。 (これで終わりか・・・。せっかく、メイスと・・・。) ドォン!! 大きな、音がした。Rの爆発音ではない。セイルが右の方向を見る。ラン・ドゥームだ。メイスが来たのだ。 「メイス・・・!!」 レゾンは左肩を打たれ、バランスを崩した。しかしRへの銃口は向けられたままだった。 「うわぁ!!」 セイルが光に包まれた。レゾンがランチャーを発射したのだ。 「セイル!!」 メイスが悲鳴を上げる。そこにバラスートが到着。 「バラスートが来たか・・・ここは撤退か・・・。」 レゾンは撤退し、敵もバラスートのレーダー外に消えた。そして、Rからは煙が上がっていた。 |
|
BACK 目次 NEXT |