第八話 「新型 R2」


ブレイジング隊は、Rの消火・回収作業を進めていた。
「いいか?ゆっくりやれよ。」
作業員の1人が熱カッターを持ったもう1人の作業員に言う。熱カッターとは、対機械用のカッターで熱を発動させ装甲を焼く大型のカッターである。

〜ブリフィングルーム〜
メイスとモロキがパイロットスーツを着たまま、メイスは両手を合わせ、祈るようにしている。モロキはそんなメイスを見ながらも、頭の中は相棒のセイルの事でいっぱいだ。当然、モロキはメイスにかけられる言葉など無い。
以前、ブリフィングルームは沈黙が続いている。

〜MSデッキ〜
あと少しで、コックピットハッチが熔け終わるところだ。作業員がタンカを持ってきた。
「せ〜の・・・」
掛け声と共に、対熱ダンベルでハッチをこじ開けた。
「!!少尉!!」
作業員が叫んだ。セイルの頭から大量の出血が出ていた。あそらくどこかに頭部を強打したのだろう、と作業員は断定した。
「・・・!!は・・早く!タンカ!!!治療室へ!!お前は、艦長に知らせてこい!!」

そして、1時間が過ぎた。Rを見ているシルニーとアレンの姿があった。
「酷いもんですねぇ・・・ここまでやられちゃあ、修理も時間が掛かりますよ。」
「修理など、無理じゃよ。こいつは20年以上も前のMSじゃ。以前に回収した時は、オイル交換だけで住んだがRの専用パーツはこの世にはもう無いんじゃよ。」
「そ・・・そんな!?」
そう言って、シルニーはデッキを出て行ってしまった。

〜治療室〜
セイルはベットに横になっている。グローバーとマックスが先生から、セイルの現状を聞いている。
「今は、意識不明です。安心は出来ません。ただ、運ばれてくるのがあと少し、遅かったら・・・・」
先生が黙ってしまう。つまり、遅かったらそのまま、死んでしまった、と言うことだ。
「分りました。有難うございました。」
グローバーがお辞儀をする。そして、グローバーとマックスは治療室を後にした。

2日後、バラスートはニュウ・ロスを出港し太平洋艦隊と合流しようとしていた。
〜ブリッジ〜
「艦長、太平洋艦隊と合流してどうするんです?補給ですか?」
マックスがグローバーに問いかける。
「新型機のロールアウト・・・・だ。」
「新型?パイロットは?」
「・・・・・」
マックスの質問にグローバーは黙ってしまった。
「艦長、自分は新型など聞いていませんよ?何時から、開発が進んでいたんですか?」
さらにマックスが問いかける。
「軍の極秘指令だ。すまんが、君にも言えない。」
黙っていたグローバーが口を開いた。
「軍の極秘なら、仕方ないですな。」
そう言って、マックスはブリッジを出て行った。

〜セイルの部屋〜
治療室からセイルの部屋に移動したが以前、セイルは意識を回復していない。ベットの横にはメイスが椅子に座っている。
「・・・セイル・・・。」
メイスはじっ、とセイルの方を見ている。
プシュュュ
モロキが入ってきた。
「おっ。メイスちゃん。」
「あっ、モロキ少尉・・・。」
モロキは、セイルの様子を見に来たと言うのだ。
「んっ・・・んん・・。」
「!!セイル!!聞こえるか!?セイル?」
セイルが目を開ける。セイルはモロキとメイスがいることを確認した。
「あ・・あぁ。」
セイルは朦朧とする意識の中、小さい声で答えた。
「俺は、先生と艦長を呼んでくる!!」
モロキは走って行ってしまった。
「メイス・・・。心配かけた・・・な。」
「良かった・・・良かったよ・・・」
セイルはメイスが泣いている事に気づいた。
「お前は・・・すぐ泣くよな。昔から・・・そうだった。」
メイスは、泣くのを止めた。セイルにこれでどう?、と言わんばかりの態度だった。
「先生呼んできたぞ!!セイル!!」
モロキがドアを開け、先生がセイルに駆け寄った。
続いて、グローバーが部屋に入る。

太平洋艦隊と合流まで、あと推定6時間の距離で、真夜中の出来事だった。

ロムが艦長席の方に向いた。
「艦長、太平洋艦隊が見えました。」
「んっ!あぁ、そうか。」
グローバーは見ていた書類を折りたたんだ。
「デュース伍長、総司令のビギンズ少将に連絡をとれ。」
「了解。」
デュース・スーリン伍長は、通信を担当し索敵反応も瞬時に出す。
「リュウタ曹長、バラスートは大型水戦艦パーロンに着陸する。そこまで運ぶんだ。」
「りょ・・・了解!!」
リュウタ・アイカワ軍曹。舵をまかされている彼は日本男児で根性はブレイジング隊一番と言われている。

〜セイルの部屋〜
セイルは坦々と、料理をしている。頭の包帯はまだ付けたままだ。
「あっ!!こら!!起きてじゃ駄目でしょ!!」
メイスが水を持ってきた。
「お腹すいたんだけど・・・」
そう言うと、メイスに無理やりベットに戻されるセイル。
「料理ぐらい私が作ってあげるから、寝てなさい!!」
そう言って。メイスはセイルの料理の途中から作り始めた。
セイルは軽く舌打ちをした後、メイスが持ってきた水を一気飲みした。

〜10分後〜
メイスの料理が完成した。しかし、ほぼ作っていたのはセイルだったが・・・。
セイルが一口、口にした。
(うっ・・・!!なんだこりぁ?どうやったらこんな味になるんだよ・・・)
セイルは心でそう思った。しかし、表情にまずいと出てしまう。
「やっぱり・・・美味しくない?」
セイルは、うんうんと頷いた。そして、セイルはプルプルと震えながら沈黙が続いた。
(やっぱり、あの時醤油入れすぎたかな・・・・。)
メイスは坦々と思うのであった。

〜大型水戦艦パーロン 艦橋〜
「初めまして。グローバー・ギア大佐であります。」
グローバーは敬礼をした。
「こちらこそ、ブレイジング隊をまとめる君には一目みたいと思っていたんだよ。」

「よっと。」
セイルがバラスートを降りてきた。どうやらメイスの料理は吐き出したらしく意外とすっきりした顔だった。
「待ってよ!セイル。」
メイスが後から付いてくる。セイルにはもう先輩付けして呼ばないようだ。それほど中が進展したのだろう。
「はぁ・・・・」
急にため息をつくセイル。
「どうしたの?・・・セイル?」
「いや・・・なんか心が和むって言うか・・・癒されるって言うか・・・・。」
メイスが海を見る。
「・・・この塩水の香りって、なんとな〜く心が落ち着くのよねぇ・・・・。」
「セイル!」
急にグローバーの声が割り込んで来た。
「何?」
「・・・付いて来い。」
グローバーは何も言わずに歩いていってしまった。

〜MS格納庫〜
「はぁ〜〜・・・これは・・・新型MSだ・・・しかもガンダムタイプ。」
セイルは少し遅れて来た。
「君がセイル少尉か?」
「あっ!は・・初めまして!ビギンズ少将殿!セイル・ギア、階級は少尉であります!!」
セイルはいそいで敬礼をし、軍服をきっちりと直した。
「セイル!これは新型のMSの・・・・」
グローバーが書類を見ながら、セイルに話しかける。
(見りゃ、分るっての!)
セイルは心中にそう思っていた。
「R2(アールツー)ガンダムだ。」
セイルの顔が急にまじめになる。
「R2ガンダム?もしかして・・・Rの後継機?」
グローバーは書類をたたんだ。
「そうだ。」
「・・・それにしても・・・Rの後継機にしては貧弱っぽく無いですか?」
セイルの言うとうりだった。Rに比べ、全ての面においてスマートに仕上がっていて、武器も少なそうに見えた。しかし、所々に何かと合体するような箇所が数個あるだけだった。
「あっ!パイロットは・・・誰なんですか?」
セイルはある意味、病み上がりの状態だったのでパイロットには選ばれてない、と思っていた。更に、マックス少佐からも当分の出撃禁止令が出ていたので、尚更だ。
「パイロットは・・・・」
ビギンズが口を開いた。グローバーは戸惑いを隠せない顔をしている。
「君だよ。セイル・ギア少尉。」
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