第九話 「怒りの拳・パワードナックル」


太平洋艦隊と別れてから、一日が経った。
「少尉。・・・どうですか〜?新型はぁ〜?」
寝起きのアレンがアクビをしながら機体のOSチェックをしているセイルに問いかけた。セイルが顔を出す。
「おいおい!!しっかりしろよ!!」
「すいませ〜ん・・・ふあぁぁ・・・。」
アレンが目をこすりながら、シルニーの元に行った。セイルは再度、シートに座る。
(は!・・・結局・・・R2に乗ることになっちまったかぁ〜・・・。まっ!傷は治ったから良しとするか!!)
セイルは、作業を終えR2から降りた。するとモロキが駆け寄ってきた。
「セイル!これがR2のデータだってさ!艦長から貰ってきたぜ。」
セイルは受取った。随分、厚い。
「・・・サ・・サンキュー。」

〜セイルの部屋〜
「・・・R2は換装すると・・・ほぅ。」
プシュュュ!
突然、ドアが開いた。ノックも無しにだ。慌てて、セイルがドアを見る。
「接近戦用のパワードパーツ。遠距離戦用のスナイパーパーツですわ。」
「・・・あんた、誰だ?」
「申し遅れました。今日よりブレイジング隊に配属、及びR2の整備主任を任されました、ハーニア・ヤン二等准尉です。」
「あっ・・・あぁ、よろしく。」
この後、セイルはハーニアの長々とした説明を聞くはめになる。

説明を聞いてから、2時間が経った。セイルは精神的にボロボロだった。
「ふぃ〜・・・やっと終わった。」
ビー!ビー!ビー!
突然、警報が鳴った。セイルは、ブリッジに走る。

〜ブリッジ〜
「艦長!MSが判明しました!!」
ロムが叫ぶ。
「機種は!?」
「水中用MS、マクーンです!!数は・・・8!」
「少ないな・・・なんだ?」
グローバーは考えこんだ。
プシュュュ!!
「セイル!?なんだ?」

「艦長!!ビギンズ少将から、通信です!!」
回線を開いた。そこにはビギンズだけが映っていた。おそらく自分の部屋からの通信だろう。
「グローバー艦長。そちらの戦闘はこちらでも感知した。セイル少尉にはR2で出撃させろ!!実戦データを早く見たいのでな。んっ!?セイル少尉!居たのか?だったら早くR2で出ないか!!・・・それでは健闘を祈るぞ。」
グローバーは怒りを感じた。
「セイルを何だと思っている・・・。感知したなら援軍でも送ってくればいいものを・・・!!」
「親父・・・俺出るよ!!R2で・・・。」
「・・・セイル・・・。」

〜MSデッキ〜
「パワードパーツを換装してくれ!!何!?武器欄はチェックしたかって!?ちゃんと見たよ!!」
セイルは、スコープのボタンを押した。そしてR2の電源を入れてゆく。
画面にはこう出る。”R PROJECT”
「Rの時もそうだったけど・・・Rプロジェクトって何だ?」
次々と、換装が終わってゆく。
「出来ました!!」
ハーニアの声がコックピットのスピーカーかに聞こえた。
「R2ガンダム出ます!!!!」
セイルは、勢い良く出た。出撃したのはセイルだけだった。他のMSは水中に適していないからだ。まずセイルは敵の索敵を始めた。

「・・・何処だ・・・敵は・・・!!」
セイルは、R2のブースターを起動させ、海上に出た。R2ガンダムは2つのタイプに換装できるシステムを搭載している。その内の1つ、接近戦用のパワードパーツを換装した機体をR2パワードと呼ぶ。特徴的なのは、右手に装備されている、通称”ビックハンド”その名の通り、通常の腕の倍の大きさ。左手には、"オプションハンド"を装備している。大型のビームナイフを装着し、ビームシールドも装着されている。なお、このシールドは相手に投げて、切り刻む事も可能なのだ。そして、胸部のメガバルカン、首の横にセットされているサンダービットが有り、完全にニュータイプ用のMSである。
「!!光?・・・ビームか!?」
セイルの読みは当たっていた。ビームがR2に迫ってきたのだ。
「レーダーに敵機確認!!これより接近する!!」
セイルはフルスピードでマクーンのMS部隊に突っ込んで行った。マクーン隊は、飛速魚雷を連発した。セイルは、水中ながらもなんとか避けてゆく。
「もらった!!」
R2はビックハンドでマクーン1機を殴り壊した。

〜バラスート ブリッジ〜
「モロキ少尉!!ラゾ・ケィムにはミノフスキートルクを装備させてある。空から、セイルを援護するんだ。」
「了解!ラゾ・ケィム出る!!」
ミノフスキートルクとは、従来のミノフスキークラフトの性能を向上させたパーツで、安定性は抜群である。

セイルがモロキの発進に気付く。
「モロキ!頼むぜ・・・!!」
既に、セイルはマクーンを5機破壊した。残りは3機である。しかし、さすがは水中用のMS。運動性が並では無い。
「5機も落とせたのは・・・まぐれだな・・・!!」
セイルはサンダービットを発射した。
(!!速い・・・。だったら、敵の動きを予測すればいいんだろ!!・・行け!!ビット!!)
ビットは激しく動きながら、敵に突撃して行く。サンダービットは、ビームを発射せず敵にビットを当てると行った、少し古臭い発想のビットである。名前のとうり電撃を発生させるのだ。
「落ちる!!」
セイルが叫んだ。それと同時にマクーン2機はビットによって大破した。残り1機だ。しかし、何処を見てもマクーンが見当たらない。その時だ。MSの爆発音が聞こえると同時に、爆発による大きな波が発生していた。
「こちら、モロキ。マクーンを撃破。セイル帰艦しようぜ。」
どうやら、最後の1機はモロキが撃破したらしい。

〜ブリッジ〜
「セイル少尉から通信です。」
ロムが回線を開く。
「こちら、R2。敵機は全て排除しました。これより帰艦します。・・・!!」
「どうした?セイル?」
グローバーが問う。
「レーダーに反応がある・・・なんだ・・・大きいのか!?」
セイルは意味深な発言を残し、通信を切ってしまった。
「ロム!!反応はあるのか!?」
「待ってください・・・。」
ロムが解析する。
「出ました!!・・・たしかに、反応はあります!!」

「・・・MA?で・・・でかい!!」
セイルは仰天している。それもそのはず、その大きさは戦艦クラスの大きさだからだ。そのMAは発砲してきた。かなりの火力を持っている。
「くそ!ふところに入れない!!モロキ!!打ちまくれ!!」
「言われなくとも・・!!」
モロキはビームマシンガンを乱射した。敵には当たるのだが、まるで効いていない。
「セイル少尉!!パワードナックルを使って!!」
突然、ハーニアの声が入ってきた。
「そうか・・・!分ったぜ!!」
R2は両肩にある。ミノフスキー粒子チャージ装置から2枚の板のようなものを出した。そして、ブースターで海上に出る。
「弾が打ち切れるまで、打ちつくす!!」
モロキがビームマシンガンを打ちまくる。
そのころ、セイルはENをチャージしている。
「・・・50・・・60・・・・70・・・・」
どんどん。ゲージが貯まってゆく。貯まると同時に、R2が赤に染まっていく。R2はパワードナックルを出すときには、大量の熱も吸収するため機体が熱くなっているのだ。パーツの所々には熱を逃がすエア・フォースが付いている。
「くそ!!なんて、装甲だ!!・・・直撃か!?」
モロキは奮闘するも、ビームが直撃し、ビームシールドで何とか防いだ状態で、海中に叩き落とされてしまう。MAメサウは、ビーム発射口をラゾ・ケィムに向けた。
「モロキ!!モロキを殺させるかぁ〜!!」
ENが充電された。R2はフルスピードでMAに迫った。
(人の遺志は感じない・・・。人口知能か!?)
セイルは何となくそんな感じがした。接近できるかぎり接近した。
「食らえ!!パワード!!・・・ナックル!!!」
R2は、MAを殴った。しかし、普通のパンチではない。大きな、穴が開いている。そして、大きい爆発を起こし、セイルとモロキは吹っ飛ばされた。あの装甲を一撃で大破させるとはかなりの破壊力を持つのだろう。
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