第十話 「無数の光は大空へ」


バラスートは、アジア地区の中心にある、ヘルビナートに向かっていた。それが決定したのは、2日前の事だった。軍上層部の決定で、現在シグマが地上の拠点としているアジア地区を攻めるというのだ。ブレイジング隊の活躍で、シグマの地上勢力は、ほぼ無にしとしかったのだ。そして、各シグマの部隊は、最大拠点である、アジア地区のヘルビナートに集合している。

〜バラスート ブリーフィングルーム〜
グローバーが、今回の作戦について説明をしている。
「今回の作戦は・・・まず、議会軍の艦隊がヘルビナートから来る、シグマ艦隊を一掃する。その隙に、我々ブレイジング隊は、東から、ヘルビナートに突入する。なお、この東側は敵のキャンプ地でもあり、MSは付近に無いので簡単に突入することが可能なのだ。そして、バラスート突入後はマックス少佐率いるMS部隊が出撃し、敵MS部隊を撃破しながらコントロールセンターのある、中央基地を破壊する、以上だ。なにか質問のある者はいるか?」
グローバーの問いに手を上げた者がいた。セイルだった。
「今回の作戦が成功したら、どんなメリットがあるのですか?」
「それは、私が答えよう。」
マックスが椅子から立ち上がった。
「今回の作戦が成功すれば、生き残った地上のシグマ艦隊は宇宙への脱出が余儀なくされる。だが・・・もし、失敗すれば、宇宙からの援軍が地上に降下し戦火は、より拡大してしまうのだ。下手をすれば、議会軍が壊滅するかもしれない・・・。」
マックスの発言に、全員が息を呑んだ。
「要するに、今回の作戦の結果しだいで、光が見えるか、途切れるかが、決まると言ってもいい!!ブリーフィングは以上で終了する。作戦開始は、6時間後だ。」
グローバーが全員に気合を入れるかのように、叫んだ。
「あと、言い忘れたが、偵察隊によると、ヘルビナートには新型の大型MAと新型MSが建造中らしい・・・」

〜MSデッキ〜
セイルは、最後のグローバーの発言に疑問を抱いていた。
(新型のMSと・・・MA・・・か。)
セイルに、太平洋での戦いが蘇る。
(・・・太平洋の時は、あんなに強かったんだ・・・。今回も・・・きっと!!MAは・・・手ごわいぞ。)

〜6時間後〜
議会軍艦隊の攻撃が始まった。議会軍の予想どうり、シグマ艦隊が迎撃を開始した。
「バラスート、発進!!」
グローバーの合図と共に、バラスートは突入を開始した。

〜R2コックピット〜
R2は、拠点の急襲という為もあって、スナイパーパーツを換装していた。今回がスナイパーは初めての出撃である。セイルはスナイパーの解析書を見ている。
「・・・さすがだな・・・かなりの重武装だ・・・。」
セイルが息を呑むのもあたりまえだ。首の横にはマシンキャノン、胸部には、パワード同様のメガバルカン、両脚にはミサイルランチャー、両腕に装着されたスナイパービームキャノン、腰脇にはガトリングビット、バックパックの横にはスナイパーバスター、そして、R2専用ビームライフルと、メガビームライフルを持つことができる。パイロットの腕次第なら、戦艦なら、何十隻も落とすことが可能だと言われている。
「セイル!!」
「んぁ、メイス、どうした?」
メイスからの通信だった。回線はR2だけに接続されているので、周りには聞こえない。
「セイル・・・死なないでね。」
メイスは、それだけを言って、回線を切った。それと同時に、マックスからの出撃命令が下った。別に衝撃もなく、なんなく突入できたのだろう。マックスを先頭にMSが次々と出撃して行く。そして、R2も両足をカタパルトに接続すると体制を低くし、作業員の合図と共に、R2は出撃した。

(何機・・・落としたのか?・・・・あと・・・何機いるんだ?・・・残り弾数は?ENはまだもつか・・・?メイスやモロキは無事だろうか・・・?バラスート・・・落ちてないよな?・・・なんだ・・・暑いな、こんなに暑かったか・・・?コックピットにもクーラーが欲しいよな・・・。)
セイルは、かなりの汗をかきながらR2のトリガーを引いたままだ。
R2は両脇にある、ガトリングビットのトリガーの部分を持ち激しい音を出しながらガトリング砲を連射していた。
ガトリングビットは、ビットモードとガトリングモードの2種類が使える。敵も次々と、R2によって落とされて行く。R2は次にミサイルを発射した。前方はミサイルによって、撃破されてMS達の爆発音が発生した。

〜バラスート〜
そのころ、バラスートは護衛機を何機か配備して直進していた。
「R2により、地上のMS隊は、ほぼ壊滅しました。よって、ヘルビナートの護衛は手薄です。脱出準備をしている兵のところには、別部隊が迎撃に向かっています。」
ロムが現在の状況を艦長に知らせた。
「そうか、それで例の新型MSは?」
グローバーが一番気にしている事だった。
「調査隊によると、この先で出現の確率が多いと思われます。」
「ならば、既に侵入している部隊以外は、バラスートに付いて来い、と各員に伝えろ!!」

一方、セイルは1人で中心基地へ向かっていた。
「MSが出てこない・・・!?レーダーには反応も無い・・。」
セイルがその言葉を口に出した瞬間、レーダーに急に反応が出た。
「!!新型!?」
セイルの言うとうりだった。新型のMSでミノフスキートルクを搭載した、デュリスだ。セイルはR2の両腕に装備されているスナイパービームキャノンを乱射した。しかし、攻撃は回避された。
「空を飛んでる相手に!!!」
セイルは苛立ちを隠せなかった。なんとか、1機は流れ弾によって撃破したが、何機かはセイルに向かって攻撃をしている。
「ガトリングビットのビットモード・・・・試してみるか!!」
R2はビットを切り離した。ビットは勢い良く敵の方に飛んでゆく。そして、セイルの思うがままに動いた。そして敵は、ガトリングの直撃を食らい地上に叩き落された。

一方、バラスートは中央基地を破壊するために激戦を強いられていた。
「中央基地は特定できたか?」
グローバーの問いに的確な答えがロムの口から返ってきた。
「はい、ポイントX008−24の巨大アンテナのある所です。」
「そうか・・・。メガ粒子砲発射位置までの到達時間は?」
「およそ、4分!」
またも、ロムからの返答だった。グローバーが艦長シートの横にある艦内通信ボタンを押した。
「各員に伝達!!4分後にメガ粒子砲を発射する!各員は衝撃にそなえよ!!」

セイルは敵の排除に成功した。
「ふ〜う・・・!!バラスートは・・・!?んっ!!また反応が!?・・・MAか!!」
セイルの言うとうりだった。空中を飛んでいるMAの名はベレン。見た限りでは、かなりの火力と装甲を持っている。セイルは策を考えていた。
「普通に戦っても・・・勝てるかは分らない・・・。!!まずは避ける!!」
MAの攻撃が始まった。まるで戦艦の対空機銃をすぐ側で打たれているみたいに、シールドで防ぐしかできないでいた。
「どうすれば・・・倒せる!?あっ!そうか、ビットでエンジン部分を・・・!!」
そう言って、セイルのR2はビットを切り離し、MAの後ろに回りこませた。MAは小回りが利かなかったため、反応出来なかった。
(!!また・・・人の遺志が無いぞ。また人口知能・・・。)
セイルが眉を細める。
そして、激しい爆発音を出しながらMAのエンジン部分はビットによってダメージを受けた。そして、R2は敵の射程外に離れた。しかし、R2スナイパーにとっては届く距離だ。
「威力が小さくては駄目だ!!すべてを1つに集中攻撃を!!」
右手にビームライフル、左手にメガライフル、バックパックに装備したスナイパーバスター、両腕のビームキャノン、ミサイルランチャー、ガトリングビット、マシンキャノン、メガバルカン、すべての武器を発射準備の状態にし、ロックオンを始めた。
「メイスが言ってたっけ・・・。ロックオンの発射タイミングは直感で打つって・・・・それを試すか・・・!!」
セイルはトリガーを引いた。そして、次々と発射される弾。それはまるで、光だった。大空を浮遊しているMAに向かって、無数の光はMAを直撃した。
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