第十二話 「超えるべき壁」


議会軍とグレート・シグマとの最終決戦は、ほぼ秒読み段階に入っていた。ブレイジング隊も、その決戦の参戦を命じられ議会軍の本命より一足早く宇宙に上がっていた。

「大気圏離脱による被害はありません。前方の艦隊との接触まで、あと5分。」
ロムが言う。バラスートは大気圏を離脱し、シグマの偵察艦隊か、もしくはブレイジング隊の行動を読み、シグマセツメルントから出てきた先行艦隊かは予測不可能だが、前方から接近する艦隊との戦闘準備を進めていた。
「メガ粒子砲のチャージは始めておけ。」
グローバーが指示を出す。そして、艦長シートの通信ボタンを押し、MSデッキに繋ぐ。
「マックス少佐。全機スタンバイOKだな?」
「OKです。」
マックスが即答した。R2はパワードパーツを換装していた。
「・・・なんだ?この・・・なんと言うか、プレッシャーって言うのかな?」
セイルが呟いた。その隣でスタンバイをしていたメイスもプレッシャーらしきものを感じていた。
「・・・・何なの?この感覚は?」
メイスは汗だくだった。

一方、そのシグマの艦隊も戦闘準備を終え、第一戦闘配備の構えでいた。
「ほぅ、あれがブレイジング隊の母艦、バラスートか・・・。」
1人の男が呟いた。見た限り、ジングよりは若く、身長も大きい。
「中佐!あと数分でブレイジング隊と接触します!」
1人の兵がその中佐に呼びかけた。
「ストラスの調子は?」
「万全です。長期戦も問題ないかと。」
「そうか。なら、すぐ行く。」
その兵は、中佐の問いに即答し、その場を後にした。
「総帥の言っていた、亡霊の意思を告ぐもの・・・。フフフ。このフラン・トワーズがお相手をしよう。」

〜バラスート ブリッジ〜
「メガ粒子砲の攻撃範囲到達まで、およそ、20秒。戦闘区域到達までは、50秒。」
ロムが正確な時間を出した。
「メガ粒子砲のチャージは!?」
「既に100%完了しています。」
「あっ!?」
突然、索敵反応をしていたデュース伍長が叫んだ。
「敵MSが発進してます!!およそ2分で、バラスートに接近!!ジャマーを使われました!!」
この発言で各員は凍りついた。
「くっ!!先手を打たれたか!!敵艦の位置は!?」
グローバーはロムに問いかけた。
「方位87、ポイント6801です。メガ粒子砲、ギリギリで届きます。」
「メガ粒子砲、発射後MS部隊は出撃!!砲撃主!方位87に合わせて!外すな!打て!!」
激しい衝撃音と共にメガ粒子砲は、発射された。その結果、敵MSは何機か撃墜したが、敵の進行は止まない。メガ粒子砲は敵艦に直撃したが、半破状態に留まった。そして、グローバーの指示どうりMS部隊は出撃を開始した。
敵の数はおよそ、30数機。ブレイジング隊は補給を行っていたため、その倍以上の戦力はある。
「バラスートは、敵艦を狙うだけでいい。対空防御班!敵を近づけるなよ!」
グローバーが指示を出す中、前線では攻防、激しい戦いが繰り広げられていた。
「1機撃破・・・。前方に2機か!?」
セイルが呟く。そして、セイルはサンダービットを発射した。敵はそのビットを撃墜しようとライフルを乱射するが、当たらない。そして、ビットはヴィルーグの胸部分を直撃し、1000万をも超える電流により爆破。
「あと1機!!」
そう言って、セイルは左手に装備されているオプションハンドに付けられている大型ビームナイフを準備した。しかしヴィルーグは肩部に装着された、円錐型のホーミングミサイルを発射してきた。
「ちぃ!!」
セイルが舌打ちをする。R2はメガバルカンでミサイルを打ち落とす。敵は噂のMSに恐怖を感じ動揺した。セイルはその隙を見逃さなかった。接近しビームナイフで切り裂いた。そして、敵は撃墜された。
「やったぜ!!・・・さっきのプレッシャー!!後ろか!!」
セイルは90度反転し、後退した。
「反応が早いな。亡霊のパイロットか。フフフ。」
その新型のパイロットは、フラン・トワーズだ。
「新型のMS!?カスタム機か!!ジングじゃない・・・誰だ?」
微かだが、セイルはジングとは違うプレッシャーを察した。
「このストラスの動きに付いて来れるか!?パイロット!!」
「!!レゾンより、動きが速い!?ちっ!!」
セイルはビームナイフを収容し、腰についているビームサーベルを用意した。ほぼ、同時にストラスもビームサーベル持ちながら接近していた。

「ライフルを持っていない!?接近用MSか!?」
セイルの読みは当たっていた。フランの乗るストラスは接近用のMS。ビームサーベルを多数所有し、長期戦も機体の調整にミスが無ければ問題無く戦える。レゾン以上の機動性を誇り、ブースターによるEN消費が大きな問題である。
ストラスがサーベルを持った右手を大きく振りかざした。
それに対し、R2も防御のためサーベルをストラスのサーベルにぶつけた。
「R2とパワーが同じ!?やるな!このMS!」
R2は、ブースターを使い後退した。そして、オプションハンドに装備されている、シールドのビームを発動させた。
「シールドチャクラム。当たれ!」
そのチャクラムはリード線によってオプションハンドから着脱され、ミニブースターの加速でマニュアルでも操作できる。通常のシールドのビームとは違う性質で出来ており、シールドとして活用するのはあまり効果的とは言えない。あくまで、チャクラムとしての活用を前提に開発されている。欠点はそれだけではない。シールドを外す事で防御面が低下するというもう1つのデメリットがある。
「何!?」
フランが仰天した。
ストラスが右手に持っていた、サーベルがチャクラムによって弾き飛ばされ右手が軽くショートした。
「このストラスに当ててきたとは・・・。」
ストラスはバックパックに装着されている、円形の筒を左手に装着した。どうやら大型のビームサーベルのようだ。
「あの大きさじゃあ、パワー負けしちまう・・・。」
そう言ってセイルはサーベルを収容し、再度オプションハンドの大型ビームナイフを構えた。
「行くぞ!R2!」
「何!?何故R2の名前を!?」

〜バラスート ブリッジ〜
「ベンデセツルメントに集合中の議会軍艦隊より定期メールです。」
ロムが艦長の方に向きを変えた。
「ベンデセツルメント?あぁ。最終決戦のために議会軍の艦隊が終結しているセツルメントからか。内容は何だ?」
グローバーがロムに問う。
「地上からの艦隊は集合完了。これより、3時間後。我々はシグマセツルメントに攻撃を仕掛ける。ブレイジング隊は、そちら側の戦闘終了後、直ちにシグマコロニーに航路を変更せよ。以上です。」
「・・もう攻撃をするのか・・・。地上への伝達無しにか・・・。」

一方、R2とストラスは激戦を強いられていた。
再度、R2はシールドチャクラムを準備した。
「今度は左腕を!!」
「その弱点はリード線にある!!そこを斬る!!」
ストラスはブースターで加速した。そして、チャクラムを避け、リード線をサーベルで切り裂いた。
「しまった!!くそっ!」
「ストラスは接近用MS。だが、武装はサーベルだけではない!!」
ストラスの胸部分が開いた。そこには多数のミサイルが搭載されていた。
「ミサイル!?」
R2はリード線を切られた反動で、動けない状態でいた。
「ミサイルバースト!」
フランは叫んだ。R2に標準を合わせミサイルを全弾発射した。
「くっ!!」
R2はそのミサイルによって爆発した。大きな爆発はバラスートも感知した。
「総帥には申し訳ないが、亡霊は落とした。次は、戦艦を・・・。!!・・バカな!?」
R2は無事だった。とっさに右手のビックハンドで防御したのだ。しかし、他の部分はほぼ大破し、使えない状態だった。
フランが何かに気付いた。
「R2が赤い!?まさか!?」
フランの思ったとうりだ。R2はミサイルを防御している間にENをチャージしていたのだ。
「だが!ENチャージには時間が掛かるはず!」
ストラスはR2に突撃した。左手に装備されていてた大型ビームベルを振りかざそうとした。
「・・悪いな・・・。ENは既にチャージ済みなんだよ!」
R2は大きくからだを半転させ、ストラスを殴りつけた。
その拳は核融合炉を直撃した。
「最後の最後に・・・自分は隙を見せたか・・。」
フランは体全てにパンチの重量が掛かり喋るのもやっとだ。そして、ストラスは核融合炉が破壊されたために爆発した。
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